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[0005]震災という一言で原発事故の責任の所在が曖昧にならないか

【今日の一枚】
『フランス18世紀, 荒唐無稽のバロックとロココ~コミック協奏曲とコミック・カンタータの世界』
(クルボワ:カンタータ「ドン・キホーテ」,グランヴァル:カンタータ「エフェソスの未亡人」,他)
〔ドミニク・ヴィス(Ct),カファ・ツィマーマン〕
[CD]Alpha●ALPHA1


TRAZOM@さるさる横丁 

 6時45分に起床。相変わらず頭が痛いが、熱は下がった(といっても37度6分)ようだ。昨日の薬が効いたか。再び寝床へ。昼前に仕事場からメールが。そして友人からも電話がかかる。いずれも返事をしたが、こちらの体調不良で気まずい思いをさせてしまったかもしれないと反省する。意識は万全ではないが、昨日書き漏らしたことを思い出した。冒頭メッセージの募金で<東北沖大地震>と記している点である。阪神大震災の時もそうだったが、震災といえば地震という自然災害がもたらした被害というイメージになる。ボクは原発で今起こっている危うい事象を「震災」という言葉のなかに包括してほしくないのである。


 阪神大震災の時ボクはずっと音楽を聴く気になれず、半年経って朝比奈さんのヴェルレクをファスティバル・ホールに聴きに行ったのが震災後初めてだった。だから芸能の自粛や中止もわからないではない(ほっといてくれと言いたくなる)が、ここに来て自粛見直しのムードが出てきている。やっぱりコンサートやって義援金がいくら集まってという、その意味ではSMAPをはじめとするアイドルたちの存在は大きい。クラシック界でいうと昔ならバーンスタインやロストロポーヴィチやカザルスがこの役を買って出たろうに、今はそんな大物は見あたらない。


 震災の5日前、西宮・芸術文化センターでドミニク・ヴィスのコンサートがあった。フランスは18世紀、荒唐無稽、抱腹絶倒もいいところのコミック・オペラの数々。オペラといっても歌手はヴィス一人で舞台上で声を何役にも振り分けて(そのつど衣装を裏返したり脱いだりと大忙し!)演じていく。1曲目で子供の三輪車に乗ってドン・キホーテの格好をして現れた瞬間から場内は拍手喝采。言葉は全く通じないが、これが庶民の娯楽だったのがよくわかる。演劇とはそもそもは歌をうたいながら演じて発展していったのだろうか。 


 TVで記者会見する連中は誰もが自分の役を演じきっておらず、さりとて伝える言葉ももっていない。その場にいる記者も質問をすればいいのに、ゆとり教育で育った世代だからか、黙ったままで聞いている。本当は情報を一本化して、例えば枝野さんあたりが「東電の見解」「政府の方針」といった具合にヴィスよろしく何役もこなせないものか。これでは舞台のあちこちでわあわあ喋ってて全然音楽になってないのである。音楽として体(てい)をなしてないならまだしも、本当に怖いのは原子炉の制御棒が今どんな状態にあるか、誰も口にしなくなったことではないか。聞こえてこない音にこそ、音楽の真髄が宿っていると言ったのは誰だったか。(そんなん、誰も言うとらんけど・・・笑)

[0004]孫社長100億円寄付、で「白戸家」お父さんCMの復活はいつ?

【今日の一枚】
『ラオスのモーラム』(ラム・スィーパンドン,ガム・グム)
〔ワンナー・ゲオピロム,他〕
[CD]キング・レコード●KICW85150~1(現地録音) ※2枚組                                                                                                                                                        
TRAZOM@さるさる横丁
 6時45分に起床。でも熱は終日下がらず、意識がもうろうとした中でこれを書いている。もはやTVを見る気にもなれずにいる。政府の差し金にちがいない。購買意欲を掻きたてるコマーシャルは自粛せよというのだろう。その一方でくだらない番組は深夜まで貴重な電力を使ってたれ流している。おかげで秀逸なコマーシャルが見れなくなって残念至極! ホワイト学割お父さんが画面に復活するのはいつになるのだろうか。(樋口可南子も見れなくなってしまって・・・)


 どうやら「自粛」はCMだけではないらしい。地域の花見祭りも中止になったし、先月大阪音大博物館で開催されたラオスの民族音楽「ドクパーペッパントン」と舌を噛みそうな人たちのコンサートもある筋から「歌舞音曲は慎め」とのお達しがあったという。ラオスといっても近くてうーんと遠い国。来るだけで1日かかるという。そんな苦労してやって来た人たちを追い返すわけにはいかない。藤田館長は冒頭、哀悼の意とそういったお上からの通達があったが、仏教徒による鎮魂がメインだからと説き伏せたことを説明してくれた。


 とはいえ、中身は全く関係なく、ウチの村のじいさんがどうしたこうしたとか、妖艶な美女が男性を手振りや○○○で口説く(何と客席から選ばれた2人のイケメンが登場)歌とか、延々鳴り続けるケーンの響きに乗って、お祭り騒ぎのような(まさしく禁止されている歌舞音曲そのもの。この時期、よーこんなん許可されたよね)2時間弱のコンサートだった。解説の西岡名誉館長の絶妙な話しっぷりもよかった。西岡さんによると、ケーンとは日本の笙に似た楽器で(ジャケット写真がそうです)、「吸う・吹く」ができるのだという。そして、これを見て西洋人が真似て作ったのがハーモニカなのだそうだ。


 被災した人たちに思いを馳せての「自粛」はわからないでもない。だが自粛、自粛、自粛と言い続けて見てください。そのうち「萎縮」と口にしてませんか? それとボクも阪神大震災で被災したから言うのだけど、他人に震災→自粛なんて単純に決めつけてほしくないという気持ちがある。もちろん人それぞれ考えが違うが、今回の自粛はなぁーんも考えんと、ただ自粛をやればいいというバカどもがやっているんだと、横丁からは見えるのだけど・・・


[追記]
 昨日紹介した「ゆめ風基金」の案内を冒頭に紹介しています。ボクの独断で掲載させてもらいました。ボクが自己判断で今できることはこれくらいしかありませんが、よろしければご協力ください。

[0003]まっとうな言葉をTVでまき散らす「AC」はどこか胡散臭いぞ

【今日の一枚】
『ファンタジー~オペラ座の夜』(カルメン・ファンタジー,他) 
〔パユ(fl),ネゼ=セガン=ロッテルダムpo〕
[CD]EMI●4578142(輸)
TRAZOM@さるさる横丁
 9時起床。頭が痛いので体温計片手にTVをつけると『題名のない音楽会』(6ch)でエマニュエル・パユのフルートが聞こえてきた。超絶技巧ながら、やはり巧いとしかいえない。タンギング、スラー、微妙なヴィブラート…どれをとってもしなやかで艶があってオーケストラをぐいぐい引っ張っている。そう言えば、昨日の小澤のブラームスに不満だったのは、各楽器がのっぺらぼうにしか聞こえなかった点だ。せっかくズーン(fl)やバボラーク(hr)といった世界の錚々たる名手を従えているのに、その個性が全く活かさせてなくて残念だった。


 実を言うと、フルートはどれもみんな同じに聞こえて困るのだが……例えばボクが聴いたことのあるゴールウェイもランパルもシュルツも、みな等しく巧くて聞き惚れてしまって、ここの書き手としてはトホホの失格モンの横丁の住人なのです。オペラの編曲ものは昔からいろいろあって、オーボエの宮本文昭のCDもいいが、久しぶりに新盤を手に入れたので、タイミング良く紹介させてもらった次第。


 『題名のない……』が終わって例の震災CMが流れる。当初の♪え~し~と流れる甲高い声が不評で消され、ボランティアは生涯現役・赤星や仁科亜希子より、今は日本がんばろうとか節電・節約を呼びかけるキャンペーンに変わってきている。でも、どれもまっとうなこと言ってるのに、こちらに伝わってこない。その原因がTVそのものに宿っているからに他ならない。節電言うんやったら、真っ先にスタジオの電気を落としたらどうや! あるいはJRの間引き運転のように各局持ち回りで放映休止の時間帯を設けたらどうか。それでどれだけ節電できるか数字を出してほしい。日本人は感情に流されやすいが、国民に具体的なデータを提示し理解・協力を求めてもいいではないか。昔はTVなんて終日放映されてなかったんだから。この非常事態、時間を少し戻してもいいような気がする。


 とこんなことホザいているから体温計は38度4分まで上がってしまった。3月までお世話になった人たちにお礼とケータイをiPhone4に変えたお知らせのメールを打つのも今日は断念しなくてはならない。そうそう、郵便で牧口一二さん代表理事の「ゆめ風基金」から大地震の募金とバザーの案内が舞い込んだ。牧口さんとは少し前までNHK教育(12ch)の『きらっといきる』でMCをやってた車椅子のおじさんである。ボクとのつき合いは後日触れるとして、やはりこうした大災害で置き去りにされているのが障害者なのだという事実。決してマスコミでは報道されないが、少しでも手助けしていきたい。うーん、無職になったのに忙しい忙しい。

[0002]<東>電が<日本>にもたらした〝人災〟だから「東日本大震災」なのね!!

【今日の一枚】
ブラームス:交響曲第1番
〔小澤征爾=サイトウ・キネン・o〕
[CD]ユニバーサル ミュージック●UCCD-9802 
TRAZOM@さるさる横丁
 6時30分起床。だが熱は下がらず37度7分のまま。部屋を暖かくして薬を飲んで熟睡することにした。東北の地では暖房もままならず、風邪を引いても薬さえ手にできない人がいると思うと辛いが、体の節々がこう痛いと我慢もしてられない。気分の悪さは、昨日のYahooニュースで、今回の大地震を「東日本大震災」と呼称することにしたという記事を見たからでもある。

 誰の入れ知恵か「あかん総理」もとい菅総理率いる「あかん亭」もとい官邸が決めたのだという。関西にいると静岡より向こうが全部「東日本」の感覚だが、いずれ東京にも被害が及ぶ布石だろうか。ならいっそ、環太平洋大震災にすればどうか。汚染海水がアメリカ海岸にも押し寄せるだろうから。その意味では本来は震災ではなく、原発による人災とすべきだ。

 復興を元気づける活動がさまざまに報じられているが、今回の地震で掻き消された感があるニュースに小澤征爾の復活があった。昨年食道がんを患い、12月にニューヨークで1年ぶりに指揮をした。緊急発売とやらの触れ込みでライブ盤が出たので早速聴いてみた。最初の一音を聴いてびっくり。音が団子状になって聞こえてくるではないか。各楽器の分離が悪く、ラジカセで聴いてるような感じ。第3楽章のアレグレットもふわっとした感触が全くない。最終楽章で、あの有名な旋律が出てくるところから祈りのような音楽になってやっと様(さま)になるが、もごもごした音は最後まで変わることはなかった。

 ジャケット写真にあるような死に神のような形相で指揮する映像で聴いたら印象が違ったかもしれない。だが純粋に音だけで聴いたら今書いたような感想になる。病を克服した巨匠に失礼だとか、もっと謙虚に受けとめろという小澤ファンの声が聞こえてきそうだが、(ボクとて小澤さんが復活したのは喜ばしいと思ってます)感傷的にならず、純粋に演奏のみを聴く姿勢も、時には必要ではないかと思ったりする。

[0001]今日から「無職」になりました。

【今日の一枚】
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
〔ピリス(p),グシュウルバウアー=リスボン・グルベンキアンo〕
[CD]Warner Classics●2564696869(輸) 

TRAZOM@さるさる横丁

 7時起床。だがコーヒーを1杯飲んだだけで布団に入る。体の節々が痛くてたまらない。昨日、仕事場で最後の後片づけをして、挨拶回りに。相当疲れが溜まっていたのだろう、体温を測ると38度2分。昼間ぐっすり寝て、やおら起き出して聴いたのがモーツァルトだった。体調の悪い時でも、不思議とモーツァルトだけはすーっと耳に入ってくる。


 ピリスのピアノは純粋無垢というか、子供のような混じりっけのない音だ。第2楽章も何もしてないのに、さえざえとした感触で染み入ってくる。グラミー賞を受賞した内田光子は「何かをやろうとして」いてそれがかえって邪魔になってるし、アシュケナージなどもロマンティックに聴かせようとしている。今は手軽に安価(紹介したのは5枚組で3,000円を切る箱もの)で購入できるが、その昔エラートの輸入LPを手にした時の感覚……森の絵をあしらった素敵なジャケット、あれは今でも忘れられないでいる。逆に言うと、CDの時代になって、あの感覚を手に入れられなくなったのは淋しい限りということになる。


 昨日まで働いていた職場を退職し、無職となった。職は「無」となって収入も途絶えたが、ボクのまわりにはいろんなものが「有」として残っている。音楽が然り。昨日までの仕事仲間にも、こうやってブログを通じてつながっていける。「無」だから全てを喪うのでもなければ、それと同様に「有」だからといって、何かがあって財産になっているとは決して言えないのではないだろうか。 


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