「いただきます」「ごちそうさまでした」――小学生の頃、給食の時間に皆で声をそろえたことが懐かしい。しかし独りの食事だと、何となく食べ始め、食事中もテレビや携帯電話を見ながら……ということが、つい多くなる

 食の総合コンサルタントの小倉朋子さんは、この“ながら食事”に警鐘を鳴らす。「なんとなく食べていると、お腹はいっぱいになっているのに、なぜか気持ちは『まだ食べたい』のです。お腹が満足しても心が『つまらない』のですね」

 満足な食事をするコツとして、小倉さんは「食べ始め」「食べ終わり」のあいさつを勧める。自分でオン・オフのリズムをつくれば、心も食事に向き合うことができ、満足感も生まれやすいという(『私が最近弱っているのは毎日「なんとなく」食べているからかもしれない』文響社)

 目の前の出来事にしっかり向き合えば、精神的な満足感・充実感が増す――なおざりにしがちだが大切なことだろう。慌ただしく過ぎる生活の中で、どう意識的にリズムをつくれるか、である

 朝晩の祈りは“生命のリズム”を自ら整える作業ともいえる。朝の祈りで「誓い」を立て、価値ある一日を送り、夜は「感謝」の祈りをささげる。自発能動の生命が、歓喜の人生につながることを忘れまい。 

【8/3 聖教新聞・名字の言】
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 紙に印刷するだけのお金の発行元は時としてとんでもないことを思いつく。1922年、ギリシャでは国の命令で7種類のドラクマ紙幣すべてを半分に切断することになった

 その左半分は額面の半分の紙幣として使用できたが、右半分は国による強制的な借款の債券とされた。つまりは流通する紙幣の金額の2分の1が国に召し上げられたのである。いやはや恐るべき力技だ(植村峻(うえむら・たかし)著「お札の文化史」)

 こちらはその紙切れすらもなしにネット上で取引される現代の仮想通貨である。紙幣切断は極端な話にせよ、今までのように中央銀行や政府の政策で価値が左右されない通貨という期待もある。その仮想通貨の切断ならぬ分裂である

 仮想通貨の代表格であるビットコインが二つに分かれて、旧来のビットコインに加え、新通貨のビットコインキャッシュ(BCC)が誕生したという。取引急増への対応策をめぐる対立から中国の一部グループが新規格を作ったのだ

 仮想通貨を管理する仕組みは、コンピューターでの膨大な計算量をこなすマイナー(採鉱者)という事業者に支えられている。近年、その多くは電力料金や機器の費用の安い中国の企業となった。分裂はそんな事情も浮き彫りにした

 心配された混乱はなく、ビットコインの主流の座も当面揺るぎそうにない。だが管理者のいないのが売りの仮想通貨が、それによる対立や混乱のリスクを露呈したこの騒動だった。形変われど、人の欲や誤算と縁の切れぬお金の世界である。 

【8/3 毎日新聞・余録】
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