50歳を過ぎて昔の友人と会う機会が増えてきました。30台や40台にはなかった時間的余裕が出来たからでしょうが、「今、会っとかないと…。」という思いもあるのかもしれません。
音楽をやっていた仲間が楽器を持ち寄って集まり、セッションをやることも多くなりました。日曜画家の飲み会がてらの集まりにも時々顔を出しています。
(『冬の朝』第69回関西水彩画展入賞)
そんな時、あらためて思い知る法則があります。
その法則とは
「“あんまり頑張っていないヤツ”の方が、長続きして、結果、上手くなっている。」
という、学校では教えてくれない(教えたらまずいよなぁ)現実世界における法則です。
己に厳しく、道を究める“頑張る”タイプは若い時は伸びるけれども、ある年齢に達するとあっさりと足を洗ってしまったり全く腕が錆びついてしまったり という例が多いように感じます。
完璧な防音施工をした音楽室を作り音楽に集中できる環境を整えて頑張ろうとした音楽好き、油絵制作専用のアトリエを作って頑張ろうとした日曜画家、その高価な専用室が倉庫と化した例を(建築士という立場から)少なからず見てきました。
一方、どうせ齢をとったらモノグサになるのだから、飲みながら、TVを見ながら、ぐうだらと楽器を弾けるような、あるいは絵を描けるような、“ゆる~い部屋”を作ってくれと頼んできた友人は、いまだに驚くほど達者だったりする。そんなものです。
かく言う私自身の部屋は…、寝室・書斎・アトリエ・オーディオルーム・音楽室・応接室・居酒屋 すべてをゆる~く兼ねた、言わば究極の“ぐうたら部屋”です。ここで、一杯飲みながら気が向いたら楽器を手にとっています。楽器は愛用の椅子あるいは畳ベッドからひょいと手を伸ばせば届くくらいの距離に置いてあるから気楽にさわることができる、“気合を入れて趣味に向き合う”という厳しさなんぞ、微塵もありません。
MY ぐうだら部屋
でも、おかげで空気のように音楽を感じながら、弾ける。で、いまだに というか、今に至って、あちこちのミュージシャンからお声がかかる“弾いたら怖い建築士”であり続けています。好きでやっているだけで自慢するようなことではありませんが。
滋賀ブルーグラスフェスティバル2011年 右が筆者
頑張ることは日本人の美徳でしょう、しかし、疲れます。疲れることは長続きしません。長続きしないと、その道の本当の楽しさは味わえないように思えます。この齢になって、あらためて。
己の置かれた状況とこれからの暮らし方をよく考えて、やりたいことを無理せずこなせるゆる~い環境作りを実践する、自分の精神力を過大評価しない それが熟年の賢明な生き方なのでしょう。高価な楽器を買ったり、すごいオーディオ機器をそろえるより、ぐうだらと楽しめる環境作りにお金と労力をかける方が、長く楽しみを味わい続けるという目的に向けた賢明な投資だ ということです。
そんなご相談があれば、ぜひご一報を。ぐうだら生活指南の一級建築士からの提言でした。