(「思わぬ窮地と気楽な援護射撃」からの続き)
使えない通訳の王さんには丁重に引き取ってもらい、空港の搭乗手続の窓口の先頭で30分くらい待ったでしょうか。やっと、手続開始の様です。
パスポートと航空券を窓口が開くと同時に差し出しました。すると、私の両サイドから数人の敵の手が割り込み、私の手の上で航空券が舞っています。
係員は私を無視し、その一つを掴み作業を開始。「おいおい、横入り優先かよ中国は・・・」(そうなんです、横入りは文化なんですね、弱肉強食)。
更に、後ろから何人もが私の頭越しに手を差し出し、私は背後と左右の3方向から押され、カウンターに押し付けられた形になり、身動き出来ません。
「てめーら、いい加減にしろ~、俺が一番だろ~、押すな馬鹿やろ~」
と、ついついハシタナイ言葉を吐いてしまいましたが、一向に止む気配はありません。
私の声は彼らの怒号にかき消されてしまうのです。正に肉弾戦です。それも、私一人に対して無数の中国人が相手です。敵いっこありませんが、戦線離脱さえ許されない状況です。
思わず「助けてくれ~」と叫んでしまいました。
すると急に圧力が弱まり、敵兵が戦線離脱して行きます。私の目に映ったのは公安(警察)の制服を着た若い兄ちゃんが、一人一人私から剥ぎ取る様に敵兵を追い遣る姿です。
そして、窓口職員に機関銃の様に口撃し、私のパスポートと航空券を係員に渡してくれたのです。公安の兄ちゃんが私に何か言っているのですがさっぱり解りません。
すると、使えない通訳の王さん登場。「この人なんて言ってるの」「嫌な思いさせてすみません、もう大丈夫ですよって言ってます」。
私は公安兄ちゃんに「謝謝!!謝謝!!」と言うと笑いながら去って行くのでした。
「カッコいいぜ兄ちゃん」(心の声)。実は王さんは私と別れた後、心配で遠くから様子を見ていたのです。事が起り公安官を見つけて、助けてくれたのだそうです。
「王さん初めて役に立ってくれましたね、何度も使えないと言って申し訳ないね」と心の中で御詫びし、永遠のお別れと相成りました。
「だけど本当に使えなかったんだから」(心の声)。
何とか空港内に入ったものの、搭乗口が解りません。何の表示もないのです。アナウンスされてもチンプンカンプン。これは困ったぞと思いながらウロウロ。
空港職員を見つけ、搭乗券を見せ、「哪里!!哪里!!(どこ!!どこ!!)」と聞くと、「那里(あっち)」と言うので、行ってみても解りません。別の空港職員に聞くと、また「那里(あっち)」と言う。
「いったいどこなのよ」と、ブツブツ言いながら、恥を忍んで、搭乗客と思しきオジサンに「对不起(すみません)、這個哪里!!(これ何処!!)」と聞くと周りを見渡し、立ち上がると手招きします。
ついて行くと、別の搭乗客に話しかけ、私の搭乗券を見せろと言っている様子なので見せると、「這里!!這里!!(ここ!!ここ!!)」。丁重にお礼(「謝謝」としか言えませんが)を言うとニコニコしながら立ち去って行きました。
オジサンは搭乗客の風貌や服装などで、何処に行こうとしているのかを見当つけて、私を目的の場所に連れて行ってくれたのです。中国では基本は自分で探せって事ですね。
結局、空港職員は当てにならない事が解りました(武漢に限ってと言っておきましょう)。
民間人の助けを借りながら、フライトは1時間余遅延したものの無事広州(白雲空港)へ到着(16時)。別の商社のSさんともすんなり合流出来ました。
しかし、暑い、半袖で良いじゃん、12月だぞ。
Sさんとはほぼ同郷で、歳は一つ上と言う事で気楽な間柄、更に中国語はベラムーチョ、取りあえず肩の荷が下りた若き日の私です。
出迎えてもらったお礼にタクシー代を払い、ホテル到着です。
中国大酒店(China Hotel)は豪華で、洗練されたホテルです。「今日の夜もまったりと過ごせそうだな・・・」。しかしこの後、とんでもない事になるのですが・・・。
(つづく)
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