先日行われたNPB新人選択会議=ドラフト会議で中日ドラゴンズが競合の末、見事に交渉権をものにした1位指名の大阪桐蔭高校の根尾昂が、12球団すべての指名選手のトップを切って仮契約を行なった。ドラゴンズの与田剛監督が「良い顔をしている。走攻守三拍子揃っている彼はスーパーマンのように見える」と高い評価を下し、指名の前に手を洗って消毒を行い、願掛までしたという念の入れように、野球の神さんも指揮官の努力に報いたのは間違いない。

 契約金が1億円で年俸が1500万円という上限いっぱいでの仮契約は球団の期待を表しているが、根尾は「そこにお金がないので、実感がない」と口にする一方で、「自覚と責任を持って取り組みたい」とプロ選手としての抱負も語った。内野手としてだけでなく、投手としての能力も高い事からメディアやファンはMLBロサンゼルス·エンゼルス·オブ·アナハイムの大谷翔平のような「二刀流」を期待していたが、根尾は球団に「遊撃手1本でやらせてほしい」とお願いしたという。彼は「遊撃はすべてのプレーに関する守備位置。チームの顔であり、固まるべきところ。花形と思う。投手に未練はない」とまで語る。自らのセールスポイントは肩というだけに、投手としての根尾も見たかったファンも多かったであろうが、やはり二刀流にすると中途半端な結果に終わる事を自らが危惧したのであろう。守備のベストナインであるゴールデングラブ賞については「憧れはある」と口にはしたものの、「獲れなくとも、チームが勝てば良い」とも話す。

 会見で1年目の目標について聞かれた根尾は「土台作り。まだアマチュアの身であるし、大学野球や社会人野球と比べれば、高いレベルでやって来た訳ではない。ここからどのように成長するかが重要と思っている」と語ったものの、一軍の開幕戦での先発メンバーへの意欲については「ある」ときっぱり答えた。ドラゴンズの本拠地であるナゴヤドームについては「点が入らないイメージ。ドラゴンズが抑えている事もあるし、球場が広くて接戦が多いという印象もある。最大の思い出は対読売ジャイアンツ戦で堂上剛裕さんがサヨナラ3点本塁打を放ったのをバックネット裏で見た事」と話し、目指す選手像については「投手をしていて、長打力のある選手が怖かった。走者がいなくても失点する可能性があり、何をしてくるかわからない小技をする選手も嫌なので、そんな選手になりたい。ドラゴンズがセントラル·リーグを制するために、何をしていくかも考えていきたい」とも語る。

 ドラゴンズの米村明スカウト部長は12球団でいの一番の仮契約は与田監督の意向であった事を明かす。「『1分でも早く契約してほしい』と頼まれた。我々は根尾を野手として評価しており、二刀流となるとドラフト戦略が変わってくる。野手なので、その後に投手を続けて指名した。彼には我々の想像を超えた伸びしろがあって、正直高校1年生の時は『身体能力はある』と思った程度。ただ、その後は投手も外野もやり、3年間の伸びしろは驚異的。とくに守備はバウンドにぶつかっていたのが、吸収するようになった。根尾は『遊撃を極めたい』と口にしている。『うちには京田陽太がいる』と伝えたが、争う姿勢が感じられた、根尾はこちらが何も言われなくてもやる子なので、1年目から突き抜け、国内津々浦々にファンのいる選手になってほしい」と期待を寄せるコメントも口にした。

 米村スカウト部長は「タイプとしては、埼玉西武ライオンズの松井稼頭央二軍監督か?」とは話したものの、「ただ、誰にも当てはまらないような選手にもなれる。根尾は根尾で良いのではないか?」とも語った。期待の新人がどのように育っていくのか?楽しみにしたいと思う。