テレビ朝日の「平成仮面ライダーシリーズ」の中でも異色作の呼び声が高いのが、13年前に放送された「仮面ライダー響鬼」である。主人公のヒビキ=響鬼=日高仁志は30代で、演じる細川茂樹も30代というこれまでで最高齢のおっさんライダーに加え、変身する仮面ライダーは師匠について修行し、鬼としての免許を皆伝して魔化網と呼ばれる妖怪と戦うなど、これまでの仮面ライダーシリーズにはない要素が多かった。その「響鬼」でヒビキを慕う高校生の安達明日夢を演じた栩原楽人がこのほど、役者生活に終止符を打つ事を明らかにしたという。

 「響鬼」以外にも、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」やミュージカル「『刀剣乱舞』~幕末天狼傳」で沖田総司を演じるなど役者として成長を重ねてきた栩原であるが、彼はかねてから父親から「自らが経営する企業の跡を継いでほしい」と懇願されていたという話を聞く。現在齢28である彼にとっては、「役者か?それとも経営者か?」という二者択一に迷ったであろうが、結果的に後者を選んで親を安心させた。栩原は今回の決断について「関係者の皆様方には、長い間多くのご支持とご配慮を賜り、御礼を申し上げると共に、ファンの皆様方には、私の芸能生活を応援して支えて下さったからこそ、今日まで役者の仕事ができた事をありがたく心から御礼申し上げたい。その力を糧に、今後は新たな業界で1歩ずつ進んでいきたい」とお礼のコメントを出す。

 それにしても「響鬼」の主要キャストは、シリーズが終わってから10数年の間に歩んできた。細川は家庭電化製品や野性動物の知識を生かした仕事で幅を広げてきたが、最近は所属事務所とのゴタゴタが続いてイメージを落としてしまったのは残念であるし、ザンキ=斬鬼=財津原蔵王丸を演じた松田賢二も辺見えみりと夫婦関係に終止符を打って芸能メディアの格好のネタになってしまう。また天美あきらを演じた秋山奈々は秋山依里と名を変えて2人の子持ちながらコスプレ活動に精を出し、敵の童子を演じた村田充はここでも以前紹介したように神田沙也加のダンナとして名が知れるようになり、滝沢みどりを演じた梅宮万紗子に至っては、役者の一方で母方の伯父で衆議院議員の江渡聡徳氏の秘書を務めていると聞く。

 一方で立花日菜佳を演じた神戸みゆき氏は、齢24という若さで没してから今年で10年になる。ミュージカル「レ·ミゼラブル」でエボニーヌを演じる事が決まっていながら、病で降板して身体が癒えぬままで鬼籍に入ったが、ミュージカルを制作する東宝側から「体調が良くなったら、また来てほしい」というメッセージをもらっていたというから、みゆき氏への期待は相当大きかったと言えよう。演技もキャラクターも個性的であった彼女が、その才能を大きく開花させる前に若き生命を散らしてしまった事は、実に残念としか言いようがない。今頃は来世からかつての仲間たちの人生模様を見守っている事であろう。

 他にも立花勢地郎を演じた下条アトムやトドロキ=轟鬼=戸田山登巳蔵を演じた川口真吾ら印象的な役者が目立った「響鬼」であるが、演じた役者の数だけそれぞれの人生があった。ドラマは敵の魔化網側が壊滅しないなど続編を匂わす形で終わったが、あの時のキャストではもう続編の制作は不可能となり、そこから先はファンそれぞれの想像で進めるしかない。残念であるが。