私は三枝匡というコンサルタントの書籍が好きです。

ドラマ仕立てで描くストーリーは読者を飽きさせないし、

また理論を並べてある格式高い書物よりよっぽど頭に入ってきます。



やはり、理論は事例に絡めて学ぶ事が大事なのだと、

三枝さんの著書を読む度に思います。



先日読んだ『経営パワーの危機』に面白い事がいくつか書いてあったので、

何回かに分けて紹介しようと思います。



<p.67 優秀な人材の職人化>


日本で経営的人材の飢饉が発生するに至ったのは何故か。(中略)

エスカレーター式の昇進が有能な人材の突出を妨げ、(中略)

入社年次で全員を十把ひとからげの団子にして働かせるので十分だった(中略)



既に語りつくされているが、年功序列の人事制度の問題点を指摘している。

そしてさらにここからが面白い。




「このシステムのおかげで、

新入社員のほぼ全員が、もしかすると自分は社長になれるかも知れないと錯覚した。

しばらくすると、社長は無理にしても、間違いなく役員になれるだろうと錯覚した。

しばらくすると役員になるのはダメかもしれないが、しかし部長にはなれそうだと錯覚した。」


「つまり能力のある者も劣った者も、最後まで諦めずに働き続づける事の出来るシステムだった。(中略)

水増しされた肩書きを与えられて、社会的プライドも保たれた。」


「かくして東大名誉教授尾高邦雄先生の言葉を借りれば、

「このシステムのおかげで、どれだけ多くの低能力者が働きがいをかんじたか分からない」という組織が維持されたのである。」




思わず、う~んとうなってしまった人もいるのでは無いだろうか。

そしてここからが著者独自の視点と言える。




「低能力者は能力の劣る人では無くて、優秀な人。

団子に練り固められているうちに、機能的仕事では優秀な人が、一人で勝負する自身が無くなってしまった。」






つまり、組織を「統治」するための人事制度が、

優秀な人材を職人化てしまっているということである。





この事態に早期に気付いた人は転職してしまう。


企業にとっても、日本経済にとっても大きな損失が、この年功序列制度の裏ににあるのかもしれない。



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