2011年6月号10首選(白石)
二回目の用地交渉水仙と子犬のゲンが迎えてくれる 後藤正樹 36
諍ひしあと苛つきて眠られず餅入りもなか不意に食ひたし 廣 鶴雄 39
かうやく
「しまつたと思つてゐたら勝つてゐた」高見盛の背中の膏薬 久岡貴子 48
マンホールの蓋に彫られし吊橋に朝の淡雪触れては消ゆる 清田順子 68
見学の視覚なき子は飛行機の離陸発着耳で後追う 北島邦夫 84
曲がれるを指もて軽く反らせおり折れずあればA品となるべし 金丸繁利 106
存続の署名用紙の回されて最も太きペンで記せり 溝川清久 120
相槌を打ちつつ浜辺去る時に貰ひし貝を後ろ手に捨つ 市 美穂 128
両手挙げ思はぬ軽さで夫が跳ぶ蛇食ひ鷲の威嚇を真似て 広瀬明子 134
セカンド
エンタイトルツーベースはつまらなし二塁ベースで天仰ぐイチロー 田中律子 154