神戸爆速レディース | フィギュアスケート妄想・新宝島

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♪このまま君を連れて行くよ~
連れて行かれるのは髙橋大輔さん?村元哉中さん?

なんか暴走族みたいなタイトルになってしまった。

時間ずいぶんたったけど、フレンズオンアイスの千秋楽公演の話。




チケットを購入したのはむろん高橋大輔さんの演技を観るためだけど、三宅星南選手の演技が観られるというのも楽しみの一つだった。


星南くんは今季フリーを滑り、ジャンプをほとんど成功させ(私から一番近くで跳んだジャンプは残念ながらステップアウトだったけど)、どこかの局のサッカーワールドカップのテーマだけあってスケールの大きな曲をカッコよく滑り切り「今年はイケる?」と思う。

バナータオルを二つ持っていったので、隣の方に事前に持ってもらえるかお願いしたら快く了承してくださり、二人でスタンディングオベーションをしたりと、いい気分だった。




が、そのいい気分は、次の選手が滑りだして数十秒で消えた。

「なんてスピード。」

三原舞依選手。テレビで観ていたときは女らしい可憐な演技だと思ってた。しかし初めて直に観た彼女は、スピードがあって滑り自体は力強かった。

「星南くんとスピードあまり変わらないじゃん。」

そう感じて、頭の一部が目の前の演技内容と関係ない方へ暴走し出す。


星南くんのスピードがないなんてことはなかったよな……島田高志郎選手の演技と比べて劣ってるとは思わなかったし……(島田選手と三宅選手の間は何人か滑っているので客観的な比較はできないんだけど)……舞依さんは女子のトップクラスだよな、グランプリファイナル獲ってるんだから……女子のトップクラス選手は、男子のこれくらいクラスの選手とスピード張れるってこと?……この舞依さんより坂本花織選手の方がスピードあるよね多分。でもNHK杯で坂本選手の演技を観た時、スピードすごいと思ったけど他の女子選手から飛び抜けてるとまでは思わなかったぞ……つまり、舞依さんクラスは何人もいる?……とにかく、神戸女子が爆速なのは確かだよなあ……。


などと頭の隅が暴走している目の前で、舞依さんは4回以上の(数えてない)連続ジャンプを華麗に決め、タフさを見せつけた。さすが真央さんリスペクトのスケーターである。

ということで、初めて生で観たというのに、舞依さんの演技のたおやかさの方に意識がぜんぜんいかなかったという。ちと勿体なかったな。

まあでも、コラボプログラムの「Cats」の白猫の方で、可愛さを存分に堪能できたからいいか。





で、男子と張っちゃう女子の演技をまざまざと観て、後から思った。

「フィギュアスケートではコーチとかジャッジとか、男性に対する女性指導者がいるの、分かるなあ。」と。


一般的な競技では女性は男性に対し、アスリートとしては総合力で劣る(と見られている)のが普通である。

例えばアメフトで、男子顔負けの足の速い女性がランニングバック(ボールを持ってディフェンスをかいくぐる足の速さが求められるポジション)をしたとしても、ディフェンス側のタックルに対して倒されやすければ男性ランニングバックより総合力は劣ることになる。

そういう、男子と比べて総合力が劣る選手たちが集まってやっているのが女子競技なので「事実上別の競技みたいなもの」と思われていたりする。そして、事実上の別競技の人間に指導させる意味はないので、女性は対女性の指導のみというパターンが結構多いのが普通である。


しかしフィギュアの場合は。

男子シングルと女子シングルは別種目だ。

だが、アイスショーだのエキシビジョンだので、こうやって別種目の人間が連続して演技をする。勝ち負けはつかないが、会場を誰がどれだけ盛り上げたかを、スケーターはそれぞれ自覚する。その興奮の大きさに男子も女子もない。同性だろうが異性だろうが、一人で演技しようが二人で演技しようが、観客を取り込んだ者勝ちだ。種目に違いはあっても勝り劣りはないということを、理解しながらスケーター達は成長する(もっともシングルとカップル競技は、これまでの日本の環境では勝り劣りはあったかもしれないけれど)。

観客を取り込むという、この競技のコアの部分を理解しているという点で、女性は男性に劣ってなどいないのだ。

だから女性のジャッジもコーチも振付師も、男性アスリートや同業の男性達から然るべき敬意を払われているわけか、と思ったのである。


多回転ジャンプも、スパイラルも、美点の一つという点では変わらない(競技では評価が全然違うけど)。

とにかく手持ちの美点をどんどん磨いていけば先へ進める、それがフィギュアスケートの世界なんだな、と思ったのである。