徳島商、13回サヨナラV
2011年7月28日0時35分
サヨナラ勝ちし、優勝を喜ぶ徳島商の選手たち=徳島県鳴門市のオロナミンC球場
延長13回、3時間22分に及んだ最後の一戦。27日、徳島商が4年ぶり23回目の夏の甲子園出場を決めた。生光学園は初優勝に、あと一歩及ばなかった。
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(徳島商3-2生光学園 延長13回)
生光学園―徳島商 3回表生光学園2死二塁、来島の右前安打で二塁走者長谷川が本塁へ突っ込むがタッチアウト。捕手竹内=オロナミンC
延長13回の大熱戦。徳島商のエースの力投が、チームに勝利を呼び込んだ。13回、先頭の増富が両チーム初の長打となる二塁打で出塁し、4番佐藤の犠打で1死三塁。相手の満塁策に対し、岸が押し出しの四球を選んでサヨナラの1点をもぎ取った。183球完投の龍田祐は最後まで制球が良かった。生光学園は2投手の継投や好守で接戦に持ち込み、安打数で上回った。9回には敵失で追いついたが、その後が続かなかった。
■粘りの投球、支えた絆 徳島商・龍田祐貴捕手、竹内翼捕手

マウンドで言葉を交わす龍田祐貴投手(左)と竹内翼捕手=オロナミンC
一瞬の静寂が漂う球場。ベンチ前で試合開始を待っていた徳島商の捕手の竹内翼(3年)は隣のエースの龍田祐貴(3年)に話しかけた。「甲子園に行くまで、お前の捕手やけん。絶対甲子園に行こうな」「俺はお前の投手でいるけんな」だが、このバッテリーが初めて経験する死闘が待っていた。
竹内は中学時代、投手。高校は内野手になり、さらに昨年11月、肩の強さを買われ、捕手に転向。今でも「投手に戻りたい」。でも龍田のキレのある直球を受けるとその気持ちは抑えられた。この試合、その球がコーナーギリギリを突いた。ボールと判定されても、しばらくミットを動かしたくなくなるほど「見事なコースばかりだった」。だが、1点リードの9回、悪夢が襲った。先頭打者に死球を与え、失策と犠打で1死二、三塁。さらにミスは連鎖。打ち取ったと思った内野ゴロが、龍田の弟、三塁手の大地(1年)のグラブからこぼれて同点。すかさず、竹内がマウンドの龍田に声をかけた。「お前の弟やけん。安心させたれ」。龍田はうなずいて、弟の大地に近づき「絶対打ち取るから、気にするな」。このあと打者2人を打ち取った。
延長に入ると、これまで、9回より長く投げたことがないという龍田がベンチで「ぜいぜい」と肩で息をするようになった。それを見た竹内は、握力を使うスライダーやツーシーム主体の投球から、直球を多めに使うような投球の組み立てに変えた。龍田は竹内の思いを感じ、「自分1人で投げきろう」と決めた。マウンドに向かう足はなかなか前に進まなかったが、気持ちだけは「前に、前に」。すると、序盤よりも直球のキレが増している気がした。ただ、どうやって投げたかは、はっきりした記憶はないという。そんな粘り強く投げる龍田を見て、周りは燃えた。13回裏の先頭打者、主将の増富太鳳(3年)は監督の森影浩章(48)の「バットを短めに持って、シャープに振ってこい」との指示通りに、右中間に安打を放ち二塁打。続く4番の佐藤健人(3年)が高校に入ってからは記憶にないというバントを決め、1死三塁。生光学園は満塁策を選んだが、7番の岸隆一郎(2年)がサヨナラの四球を選んだ。打者52人に対し183球。試合時間は3時間を超えた。竹内は龍田に言った。「まだ通過点。もう少しお前の捕手でいられるけん。引き締めていこう」(文中敬称略、山下周平)


