カウンターで一杯飲みつつ、料理を拵える店の大将とおしゃべり。
大将は、寿司屋の倅で二代目らしい。
地元に愛される人気店、これだけ期待されていると仕事もなかなか休めなくて大変だろうなぁ、
ぼんやり想いながら、長い竹串で用心深くバイ貝の中身をほぢくり出す。
シュルルン、と煮汁を飛ばしながら、先っぽの内臓までその身が気持ちよく弾けた。
その弾力を歯で噛み締めながら、ビールを流し込んでホッと一息。
煮汁!!
もし山盛りの白米があったなら、この煮汁をかけてかきこみたいくらいだ。旨すぎる
目玉のゼラチン質もトロリ。
入店したとき、大将はガス台3台をフル稼働させて、厚焼き玉子を作っていた。
玉子を一気に3つも焼くって、相当玉子がうまいんだろうか。
ということで、玉子の握りをオーダー。
想像していたような整った玉子ではなく、カタチもいびつな「とら焼き」だった。
が、甘さも塩気も効いて塩梅よし。
この店の大将の味付けは、煮魚といい、厚焼き玉子といい、料理自慢だった我が母の味付けを思い起こす味。
うれしい、やさしい、なつかしい。
この日はたまたま25キロ級のクエが入荷していたらしく、本当はクエの握りが食べたかった。
しかしガス台を3つ占領してまで焼く、玉子の誘惑には抗えなかったのだ。
玉子を5貫も食べたらさすがに腹パン。
シメに、でっかい湯呑みにたっぷり注がれた熱い静岡茶をズビズバといただく。
寿司を食うと、どうにも喉の渇きがおさまらぬ。
渇きが抑えられるのは濃い緑茶だけだが、ここで二杯もおかわりしてようやくひとごこち。
お勘定を済ませ、日中の暑さの余韻を残す夕暮れの港町を、潮風に吹かれてほろ酔い気分で歩く。
翌日も、気持ちよい快晴。
汗をかきかき、日本武尊を祀った地元の神社や、民俗博物館を歩いてまわった。
この地のある有名なニュースは、学生時代に日本史でも習ったのに、詳しいことをまったく知らずにいた。
第五福竜丸。
その名の漁船に乗ったこの地の漁師たちが、カツオの遠洋漁業に向かった際、太平洋沖のビキニ島でアメリカの水爆実験に遭遇。
何も知らぬ漁師たちが死の灰を浴びせられ、苦しみ続けた許し難い事件である。
わたしは何も知らず民俗博物館を訪れた。
この地には縄文時代からの出土品などもあり、ふんふんと興味深く楽しんでいたが、展示室の一番奥が第五福竜丸のコーナーだったのだ。
第五福竜丸に、無線長として乗っていた久保山愛吉さんは乗組員の中でも最年長の40歳だったが、ビキニ島で被曝した半年後に亡くなった。
愛娘が三人おり、奥様やお嬢さんたちに諭すように遺された直筆の手紙の数々が泣けた。
ウソか本当か分からないか、Wikipediaで久保山愛吉さんを調べたら、死因は被曝によるものというよりも、輸血による肝炎だと書かれていた。
これも、医療の闇の深さを物語ってるなあ。
こちらは、日本武尊をお祀りする神社のお宮。
なんと龍神さまがお越しであった。。。
翌昼も同じ店に向かい食べた。地魚の寿司も旨かった。
少し昼を回った頃合いに入店したら店内は老若男女、家族連れやカップルやらで満席。
少し待たされた。
この地魚握りは一番安く、地のさかなを食べたかったので丁度よかった。
こちらは、握りとセットで付いている味噌汁ではなく、別注のあら汁。
大きなお椀に盛られ身がたっぷり。
汁物ウメーー😂
ああ幸せ。