今日は大安 ドキドキ 

そういえば、昨日は冬土用の入りでした。

土用というと夏の土用丑の日が有名ですが(笑)、立春・立夏・立秋・立冬の前18日間をいいます。

つまり、もうすぐ立春 ビックリマーク ってことですね 音譜

 

さて150年前の本日は文久3年12月10日

先日あった南部家の通夜に続いての葬儀の日です。

「御浪士御一統様(何名かは不明ですが)」が列席しております。

この方にも、春がきてくれれば良いのですが…

 

 

「ふぅ」

南部家の葬儀の帰り道、敬助は小さくため息をつく。

局長である勇は、守護職に呼ばれて黒谷本陣に出向き、歳三は大坂から戻っていない。

したがって、敬助が十名ほどの隊士とともに葬儀に列席したのだ。

近所のことであるのに足取りが重い。

 

 ー私はいったいどうしてしまったのだろう…

 

屯所である前川家の門前でひとつ大きく息を吸った。

「お役目ご苦労様でございました」

当番の隊士が走りよってきて、ひしゃくで水を掬う。

「ありがとう」

言いながら手を清めた。

もう一人の隊士が塩を持ってきた。

なすがままにされながら目を閉じた。

「山南副長」

懐かしいような声がして、敬助は目を開ける。

「総司!」

眩しいような笑顔があった。

「いつ大坂から戻ったんだ?」

「今さっきです。土方副長も、お部屋で待っていますよ」

「そうか」

 

「おお、総司!」

「帰ったのか?」

「わぁ、お帰りなさぁい」 ラブラブ

むこうからやってきたのは、新八・左之助・平助の3人だ。

敬助が苦笑する。

「ただいま戻りました」

「大坂はどうだった?」

「南部さんで葬式饅頭を貰ったんだ。一緒に喰おうぜ」

「馬鹿、左之。局長に供えてからだろっ」ビックリマーク

「え? そ、それまずくないですかぁ…?」

「わっ あせる 言い間違えた。内緒だぞ」汗

「近藤局長より、歳さんに知られた方が怖いですよぉ」

総司がニヤリと笑う。

「お、おおそうだ! 俺の部屋に旨い菓子があるぞ、総司」

「え? 新八っあんのとこにあるのって、酒だけじゃ…」

「平助、金平糖買ってこい!」

 

彼らの会話を聞きながら、敬助はそっとその場から離れる。

以前は会話に加わることまではできずとも、そんな雰囲気が好きだったのに、今はその場にいることすら辛い。

邪魔をしないようにその場を離れることが、精一杯自分に出来ることだ。

そしてそれに気づかないふりをする彼らに感謝と苛立ちを感じてしまう。

軽く噛む唇は、自分自身に対してだ。

 

副長室の前に立って、ひとつ深呼吸をする。

歳三の顔を見るのは嬉しいとともに、僅かな煩わしさもあった。

思いきるように襖を開けた。

「土方君、おか…、!?」

敬助の言葉が止まった。

「あ、お帰りやす。お寒ぅおしたやろ? ご苦労はんでございました」

女性が一人、三つ指をついていた。

「あ、あの…」

 

「明里、八木さんの許可を取ってきたからな」

歳三が部屋に入ってきた。

「土方君、これはいったい…」

「おお、山南さん、戻ったか」

「はい。じゃなくて、この方は…?」

「此度、大坂から連れてきた。八木家に奉公することになった明里だ」

「どうぞよろしゅうお頼申します」

「あ、あ。こちらこそ」

「女手が必要な時には前川屯所(こっち)の方の手伝いもしてもらう。マサさんにばかり負担を掛けられねぇからな」

「とりあえず、お着替えをお手伝いしまひょ」

明里が立ちあがあって、敬助の後ろに立つ。

「俺は勇さんとこへ行ってくる」

歳三がぐっと敬助の耳元へ顔を近づけた。

「新しい沖光だぞ」

「えっ?」

「沖田みつ。沖光だ」

ニヤっと笑う。

「……」

敬助が耳まで真っ赤になったのを見て、歳三は頷いて廊下に出た。

 

一刻程の後。

 

局長室から戻った歳三は、副長室の前で立ち止まる。

「それは違いますよ。本当はね…」

何やら話をしている敬助の声が聞こえた。

ふっと口辺を上げる。

 

 -久しぶりに聞いたな。山南さんのあんな楽しそうな声

 

歳三は部屋の前を気配を殺して通り過ぎる。

 

 -しょうがないから、稽古でもつけてくるかなぁ

 

その時刻に道場にいた隊士たち。

幸運だったのか、不運であったのか…

 

 

   2014年睦月18日  汐海 珠里

 

☆南部家「野帳」に、「御浪士御一統様」と書かれる。