ミッション:インポッシブル フォール・アウト (9点) | 日米映画批評 from Hollywood

ミッション:インポッシブル フォール・アウト (9点)

採点:★★★★★★★★★☆
2018年8月13日(映画館)
主演:トム・クルーズ、レベッカ・ファーガソン、ヘンリー・カヴィル、アレック・ボールドウィン、ヴィング・レイムス、サイモン・ペグ
監督:クリストファー・マッカリー

 

 テレビで前作が公開されていたこと、アメリカで「シリーズ史上最高の完成度!」という評判を得ていたこともあり、映画館へ足を運んだ。

【一口コメント】
 「シリーズ史上最高の完成度!」、その名に恥じない傑作であり、シリーズの集大成と言うべき作品です!!

 

【ストーリー】

 IMFエージェントのイーサン・ハントと彼のチームは、盗まれた3つのプルトニウムの回収を目前に、仲間の命が危険にさらされ、プルトニウムを奪われてしまう―――。
 この事件の裏側には、シンジケートの生き残り勢力アポストルが関連していて、奪われたプルトニウムを追う手掛かりはジョン・ラークという男の名前と彼が接触しているホワイト・ウィドウという女の存在のみ。さらにイーサンの動きを不服とするCIAは、ウォーカーというエージェントを監視役に同行させることをプルトニウム追跡の条件とする。
 ホワイト・ウィドウに接触することに成功したイーサンだったが、任務遂行のために収監中の敵であるソロモン・レーンの脱走に手を貸すことになる―――。

【感想】
 「シリーズ史上最高の完成度!」というアメリカでの評判通り、素晴らしい作品だった。
 IMF、CIA、アポストル、そしてジョン・ラークという4つ巴の略奪戦。しかもジョン・ラークは名前しかわからないという最後の最後までどんでん返しが期待される設定。そしてプルトニウムが3つあり、最後の最後は車やバイクではなく、ヘリ・チェイスという状況で相手のヘリからコントローラーを奪うという"不可能な作戦"が待ち構える。
 脚本家はクライマックスのこの設定(飛行中のヘリを追跡しながら、相手のヘリからどうやってコントローラーを奪うのか?)を考えただけでもすごい!と思ったのだが、よくよく考えてみれば、
パート3で風力発電用のプロペラの間を縫ってのヘリ・チェイス・シーンへのセルフ・オマージュとも言える。
 セルフ・オマージュと言えば、
パート2のオープニングで見せたロック・クライミングも活かされている。

 

 そして今作はパート4から始まった3部作の完結編とも言える位置づけの作品で、パート4パート5で散りばめられていた伏線を見事に回収して、見事な大団円を迎えている。
 中でも「イーサン・ハントとは何者なのか?」、そして「イーサンの愛する女性とは?」の2つのテーマについては深く掘り下げられている。
 1つ目の「イーサン・ハントとは何者なのか?」というテーマ。頭脳明晰、運動神経も抜群の超優秀なスパイでありながら、メンタルに弱さを抱えているイーサン。敵の手に落ちたルーサー、パラシュート降下で気を失ったウォーカー、殺されてしまうハンリー長官・・・と、イーサンが大切に思う人物が幾度となく危機に陥るたびにイーサンのメンタル以外での強さが描かれる。その一方でイーサンの弱さも描かれている。「大勢の命より目の前で失われそうな一つの命を救い出すことを優先する」というスパイとしてはNGな判断をしてしまうイーサン。例えばパリでレーン略奪の際に警官隊を皆殺しにしないように独断で作戦を変える機転の良さ=強さを描くと同時に、非常になり切れない=弱さも描いている。その弱さを最も象徴するのが、偶然出くわした婦人警官に対する対応。普通のスパイ映画なら問答無用で殺害されるであろうキャラクターに対しても非情になり切れないイーサンの弱さが描かれたシーンだった。こうして何度も何度もイーサンの苦悩を描いていくことで、2つ目のテーマがより際立つことになる―――。
 その2つ目の「イーサンの愛する女性とは?」については、今作が夢オチで始まったことに象徴され、ラストシーンで1つの答えを提示することで、パート3、パート4、そして今作と登場したジュリア、そしてパート5と今作に登場したイルサの2人のヒロインに対しても1つの答えを提示したように思える。そして、その2人のことをルーサーが「イーサンが愛した2人の女性」という直接的な言葉で表現するシーンまで登場する。そしてラストシーンでのジュリアとイーサンの会話が、あまりにも悲惨な過去を送ってきた2人の最後の会話としてはあまりにも切なすぎるのだが、イーサンが最後に見せた笑顔によってすべてが救われた気になってしまったのは自分だけだろうか?
 こうして幾度もの苦境と2人の女性を通して、イーサン・ハントという人間の内面をここまで深く描いたのはシリーズ通して初めてであり、それこそがこの作品をシリーズ最高傑作にしている最大の要因だろう。

 もちろんイーサン以外にもパート1から連続で出演し続けているルーサーとの強い絆であったり、パート3から出演しているベンジー、前作から続投したイルサとハンリー長官にもそれぞれに見せ場が用意されていて、その1人1人に"人間"イーサンとの直接の絡みが描かれているあたりも今作の脚本が非常に良くできていると感じられる理由だろう。

 

 またシリーズお約束のバイクのチェイスもシリーズ最高の出来。凱旋門をはじめとする様々な観光地を含めたパリ市街地で敵に追いかけられながら、ギリギリのところで交わしていき、最後の最後、パリならではの放射状の道路で四方八方から敵が迫りくる中、敵を撒いたあの演出はしびれた!!
 そしてジョン・ラークを出し抜くシーンの演出もスパイ映画ならではの渋さが光る演出で、これまたシリーズ史上最高の敵の出し抜き方だった。
前作であれば、ここで話は終わるところだったが、今作はここからさらにアクション的にもサスペンス的にももう一山あるのが、シリーズ史上最高傑作になっている第二の要因。今までのシリーズも何度も山場があったが、今作はその数が今まで以上に多いと感じた。
 それでいて、
パート3から加わったベンジーが良い意味で笑いのアクセントになっていて、アクション続きで緊張しっぱなしというわけでもなく、緊張の中にも笑いが上手く織り込まれているのも相変わらず上手い。例えばロンドンの街でイーサンをタブレットでナビゲートしながら、上下が逆だったり、3Dではなく、2Dで見ていたり・・・といった場面はその典型的なシーン。
 スパイ映画らしい演出という意味でも、物語序盤のカギを握るある人物がいる部屋が一瞬で変わってしまう演出なんかは、お見事!!またトイレでの1対2での肉弾戦も
パート2のジョン・ウー以来の派手な演出だった。それでいて一般客が入り込んできた際にイルサの返しが上手かったりするあたりはセンスの良さが光っていた。
 こういった一連の流れを踏まえると、この作品はシリーズの集大成と言っても過言ではない!!

 これでおそらく4~6の3部作は完結となると思われるが、次回作はどうなるのだろうか?現時点ではまだ次回作の話はないみたいだが、あるとすればどんな展開になるのだろうか?
 またアクションについてもどうなるのだろうか?パート2では断崖絶壁を登り、パート3では巨大プロペラの間をヘリ・チェイスし、パート4ではドバイの高層ビルにへばりつき、パート5では飛行機に掴まったまま離陸し、そして今作では上空8,000mからスカイダイビングしたり・・・。毎作観客の想像を超えるアクションを見せてくれたトム・クルーズ。今回はついに足を骨折してしまった彼だが、パート7では一体どんなアクションに挑むのか?
 いろんな意味で次回作が楽しみな作品です!!