インディペンデンス・デイ =リサージェンス= (4点) | 日米映画批評 from Hollywood

インディペンデンス・デイ =リサージェンス= (4点)

採点:★★★★☆☆☆☆☆☆
2016年7月9日(映画館)
主演:リアム・ヘムズワース、ジェシー・アッシャー、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマン、マイカ・モンロー
監督:ローランド・エメリッヒ

 

 20年前に日本でも100億円を超える興行収入を稼ぎ、アメリカに住んでいた時代には毎年のように独立記念日に放映されていた「インディペンデンス・デイ」。その続編ということで楽しみにしていた作品。

 

【一口コメント】
 同じキャストが出ている以外に続編要素は皆無の、前作とは別物「
インディペンデンス・デイ」です。

【ストーリー】
 20年前、エイリアンに勝利した人類は彼らの宇宙船から技術を吸収し、太陽系の各惑星に前線基地を設営し、反重力制御の戦闘機などの次世代兵器の開発を行い、新たなる襲来に備えていた。
 2016年7月、月面に未知なる宇宙船が出現する。20年前の英雄たちの制止を振り切り、その宇宙船を迎撃する人類。しかしそれと前後して、太陽系に張り巡らせた防衛システムに異常が発生始める。そして7月4日、アメリカの独立記念日の演説中にまた別の宇宙線が襲来する―――。

【感想】
 う~ん、前作の興奮はどこへ行ったのだろう?
 来襲する宇宙人の圧倒的な強さは前作以上なのだが、その緊迫感がほとんど感じられないまま、終わってしまった・・・そんな感じ。その要因はいくつか考えられる。

 1つ目は前作が実際に存在する戦闘機F/A-18Aなどが登場していて、地球軍と宇宙人の戦闘機の戦闘力の違いにも絶望感があったのだが、今作では地球軍も前作で敵が残していった技術力を手にしているという設定のため、そこまでの絶望感を感じられないし、存在しないもの同士の戦いなので、実感がわかないと言ったほうが近いかもしれない。
 前作では、地球上に存在する戦闘機の実弾が敵を撃墜した時に未知のテクノロジーを擁した戦闘機にもその効力を発揮した!という喜びがあったのだが、今作ではその喜びはないとは言わないが、かなり薄い・・・。

 2つ目はその宇宙人が残していった技術が実は大したことなかったという描写があまりにも多い。戦闘機の性能は別として、月面に設けた巨大レーザー砲は、とある物体を撃ち落とすだけの威力があるかと思いきや、本陣ともいうべき敵にはバリアーで防がれてしまい、何のダメージも与えることなく、破壊されてしまう。
 そのバリアーの技術を地球上の最終決戦では使用しているのに、何故月面ではその技術が活かされていないのか?も大いなる疑問として残った。

 

 3つ目が圧倒的戦力の違いを、人類が持つ技術と知恵を使って埋めていくというプロセスが今回はない。前作では圧倒的戦力差を人類が一致団結して、乗り越えていく描写に高揚感を覚えると共に感動も覚えた。さらに宇宙人のマザー・シップにコンピューター・ウイルスを送り込むという奇想天外なアイデアもあった。端的に言うと、技術力の無さを団結力とアイデア力でカバーしていたのだ。
 それが今作では最初から宇宙人の残していった技術力を持っているが故に圧倒的戦力差というのをそこまで感じないし、人類が"一致団結して"感は残っているものの、知恵を振り絞って奇想天外なアイデアを出すというプロセスは皆無になっている。

 4つ目が前作はエリア51やロズウェル事件など、現実世界でも存在するオカルト要素が入っていて、そこからの発展形でストーリーが進んでいくという、あくまでも現実世界の延長上の話であり、ただのパニック映画やSF映画ではなく、サスペンス的要素も入っていたが、今作では主な決戦場所がエリア51付近だということ以外、現実世界観はゼロ。当然ながらサスペンス要素もゼロ。

 5つ目は前作はいくつかの家族の平穏な日々が描かれた後で宇宙人の来襲があり、そこに家族愛や恋愛などのヒューマン・ドラマの要素もいくつか盛り込まれていたのだが、今作は平穏な日々が描かれないままに来襲されてしまったので、母親が死のうが、父親が死のうが、大統領が死のうが、そこに感動はない。

 とまぁ、こんな感じ。他にも前作同様突っ込みどころは満載なのだが、前作はそんな突っ込みを吹き飛ばすだけのパワーが作品にあった。しかし今作は突っ込みどころは前作同様満載なのだが、それを吹き飛ばすパワーは持ち合わせておらず、以下のような突っ込みどころだけが残ってしまう。
 ・20年振りに意識回復した博士が、何の身体的問題もなく、目覚めてすぐに自由に歩き回る。
 ・無駄にアピールしてくる"中国"。今やGDP同様に日本を抜き去り、世界第2の映画マーケットとなったので、仕方がないと言えば仕方ないが、牛乳のくだりなど、ここまでアピールしてくるのもある意味凄い!。
 ・地球のコアに至るプラズマ・ドリルという宇宙人の最新技術を、コア到達までの時間を分単位で計測できるほどの超高感度センサーを持っていながら、1億ドルに目がくらむ謎のお宝探し船。
 ・背後から宇宙人を殺すことに拘りを持つ謎のアフリカ部族の長。 ・タイム・ワープできるだけの技術力を持ち、敵に対抗するための技術を授けているはずなのに、バリアーの技術は持たないというとても不思議な・・・GANTZの球体よろしく登場した"敵の敵は味方"宇宙人の都合の良さ。

 ・・・とここまでダメダメな点ばかりを挙げてきたが、良かった点もある。
 まずはオープニングから何度か使われてきた前作の名演説シーン・・・、今作が良かったというか、前作の良さを際立たせてしまったという意味ではマイナスか?

 

 次に良かったのが、敵の圧倒的パワーを示すための描写。前作でも都市を覆う程大きかった宇宙船が今作は都市どころか大陸を覆ってしまうほどの大きさで、もはや大きすぎて想像もできない。
 しかしそこはエメリッヒ!宇宙船が発する重力によって、地上のありとあらゆるものを吸い上げるという描写を見せる。しかも月面でいろいろあって宇宙船に捕獲された地球人がそれを宇宙船目線から見るという絶妙な視点を入れることで、その恐怖感を増すことにも成功している。吸い上げられたものは人や車だけでなく、飛行機や高層ビルなどバラエティに富んだセレクションになっている。
 そしてその吸い上げたものが落ちるという描写も上手い!ロンドンの街にドバイにある世界一高いビル、バージュ・カリファが落ちてくるという未だかつてない演出はさすが"安心のエメリッヒ印"だ!極論、このシーンを見るだけでもこの作品が作られた価値はあったかもしれないくらいの名シーンと言っても良いかもしれない。

 しかしやはり、「
インディペンデンス・デイ」の続編として作られた作品として見ると、「敵の敵は味方」という禁断の奥義を使い、"地球人" vs "宇宙人"ではなく、"善の宇宙人" vs "悪の宇宙人"という構図になってしまっている。
 そうなるとタイトルの「独立記念日」はキャストが同じだという以外、何の意味も持たない作品になってしまうので、どうせなら、別の作品として作っても良かったのではないだろうか?それならそれで別の見方ができて、また違って点数を付けていただろう。
 3部作になるという噂もあるが、3作目が作られるとしたら、舞台は地球ではなくなり、「
スター・ウォーズ」よろしくの宇宙戦争映画になるだろう。