アメリカ訪問記その2 「米軍」 基本スタンスは秩序の維持 | Making Our Democracy Work! 石井登志郎オフィシャルブログ Powered by Ameba

アメリカ訪問記その2 「米軍」 基本スタンスは秩序の維持

今回、世界最大の海軍基地であるVirginia州Norfolk Naval Baseや、西海岸最大のNaval(海軍)およびMarine(海兵隊)のBaseとなるSan Diego、そして太平洋軍司令部(United States Pacific Command USPACOM)があるHonoluluを訪問する機会を得ました。

アメリカ軍はとにかく規模も何もかもが大きいです。日本は約5兆円の防衛予算ですが、アメリカの国防予算は5500億ドル(戦費を除く)、ざっと55兆円で、日本とは段違いの存在感です。隊員数はざっと150万人で、予備兵や退役軍人、家族を含めると、その存在感は、日本の比べ物になりません。今回は、退役軍人専用の病院や州兵の基地を訪ねる機会に恵まれ、また、若い20代の退役軍人とも懇談する機会も得ることが出来ました。

色々お話を聞き、実際に見て回りながら、一番に印象として残ったのが、「軍」の役割を私なりに整理することが出来たことです。それは、米軍は「秩序」を守り、平和を維持することがミッションであり、軍そのものが何かを仕掛けることはない、ということです。例えば、様々な国がそれぞれの主権を主張する南シナ海に関して、米国政府の政治的意思がない限りは、米軍が同盟国だからと言ってフィリピンの肩のみを殊更かつぐということはない、単にその地域で武力衝突やそれに準ずる行動がないかを監視し、秩序が崩された際に出ていくのが軍の役割である、と私は理解しました。その文脈で捉えると、わが国固有の領土である尖閣諸島に関しては、アメリカの政治家ないし行政サイドが、何らかの政治的発言をすることはあっても、実際に秩序を脅かされる事態を迎えない限り、米軍が実際に主体的な動きをすることもない、ということです。

なるほど、となれば、今の中国のように、秩序を崩さぬふりをして、じわりじわりとプレゼンスを拡大し、いつの間にか秩序が変わっていた、となることは、(あってはなりませんが)ある意味で恐るべきことです。よって我が国も、秩序を維持しつつ、その秩序をより強めるための政治的意志を、かもし出さねばならないということでしょうか。

その文脈で、ヘリテージ財団のある研究員の方が興味深いことを言っていました。それは、「アメリカ海軍が尖閣諸島を守るのは、あまりにも中国を刺激しすぎるが、アメリカの沿岸警備隊が、日本の海上保安庁と共に尖閣海域を警備するというのは、ひとつの選択肢としてありうるのではないか」というものです。尖閣はアメリカの「沿岸」ですか?、という突っ込みは当然あるのですが、これも政治の芸術のなせる業によって、一つの選択肢にするのも手かもしれません。

米軍の実態(の一部)に触れ、直接お話の機会を得たことは貴重な経験でした。国防は、地道な現場の方々の努力と、政治の英知の組み合わせなのだなと、私なりの整理がつきました。

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Naval Station Norfolk にて、CAPT(大尉) Robert Clark さんと、原子力空母・ジョージブッシュの前で。原子力、ってものに対するアメリカ人と日本人のマインドの違いも実感。