(限界にっぽん)介護バブル、群がるファンド | 介護付有料老人ホーム としおの里 (群馬県太田市)介護付ホーム

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(限界にっぽん)介護バブル、群がるファンド

(限界にっぽん)介護バブル、群がるファンド
朝日新聞 2013年9月29日

http://salsaseoul.sakura.ne.jp/sblo_files/ajisaibunko/image/09291-thumbnail2.jpg
転売が繰り返されたトラストガーデン南平台(渋谷区)の登記簿。
「所有権移転」の記録が並ぶ
 
http://salsaseoul.sakura.ne.jp/sblo_files/ajisaibunko/image/09292-thumbnail2.jpg

介護業界が熱いまなざしを送る大型M&A(企業合併・買収)の
交渉が大詰めを迎えている。

「かなりのプレミアム(買収額への上乗せ)がつくとは思ったけれど」
有料老人ホームなど約30の施設を運営する生活科学運営(東京)の
買い手を決める交渉。買収に動いた大阪中堅介護事業会社社長は、
買収額が当初の想定よりもつり上がっていることに驚かされた。
買収候補をしぼる1次入札では、10社以上が応札したといわれる。
「2次入札に残った社は、100億円前後の買収額を提示したはず」。
買収交渉で複数の社と組んだ金融機関の担当者はこう話す。
入札は、投資家から募ったお金を元手に投資する「ファンド」の
ジェイ・ウィル・パートナーズ(東京)が実施した。
1年前に別のファンドから引きつぐ形で生活科学運営経営権を握り、
財務を立て直して今回、売りに出した。
買収が過熱しているのは、介護の需要は増える一方なのに、
介護保険から給付されるお金を使って運営する有料老人ホーム
などの施設が増えすぎないように、国や自治体が新設の認可数を
抑えているからだ。落札するために、本来の価格に上乗せする
「のれん代(プレミアム)」の相場は、「年間のもうけの5~6年分」
から最近では「10年分」とうなぎ登りだ。
東京・白金高級住宅10階建ての「ザ・レジデンス白金スイート」。
「50歳以上」という入居制限があるシニアむけ分譲マンションで、
訪問介護の事業者や定期的に医師が訪れるクリニックもテナントに
入る「サービスつき」を売り物にしている。
「村上ファンド」の村上世彰氏が新たに始めたビジネスだ。
2010年、破綻(はたん)した大手介護業者から安く買い取り、
1区画8千万円台~1億数千万円で販売した。
「相場から見て安い価格で売り出したから全部売れちゃった。
その後値上がりして資産価値はずっと上がっていますよ」
と村上氏は言う。
■5年で「償却切れ老人」
「老人ホームころがし」のような例もある。
東京都渋谷区の有料老人ホーム「トラストガーデン南平台」などの
4施設は、介護会社が破綻した後の08年以降、ジェイ・ウィルなどに
よって少なくとも4回、転売された。
なぜ転売が繰り返されるのか。ホーム経営の裏側を、
あるファンドのマネジャーが明かしてくれた。
入居の際に家賃を一括して預かる「一時金」を、施設側は入居から
一般的には5年間、毎年分割して取り崩し(償却)、「家賃収入」
として懐に入れる。6年目からはそれがなくなるので、償却期間を
過ぎても入居が続く老人からは、介護費などしか徴収できない――。
「長生きすればするほど施設側は収益が出にくくなる。
なるべく『償却切れ老人』を減らし、家賃収入が計算できる
新しい入居者に入れ替えて収益力を上げ、早めに売ろうとする」
複数の介護施設で働いてきたある施設長は「けがや
病気をきっかけに、『償却切れ老人』を
『医療が必要になったのでうちではもうお世話できる力がない』
などと体よく追い出す施設が増えている」という。
収益力を高めれば価値が上がり、また買い手がつく。
介護を成長産業に」という安倍政権のかけ声とともに、買収合戦が
激しくなる。その陰で入居者の安心は遠のき、効率優先の
しわ寄せで働く人たちが疲弊する。
今月17日にも、新たなM&Aが成立した。
関門海峡をのぞむ北九州市門司区の住宅街に、リゾート施設を
思わせる3階建ての建物がたつ。不動産やカラオケ事業から
介護に参入したウチヤマホールディングス(北九州市)が
運営している老人ホーム「さわやか和布刈(めかり)弐番館」だ。
買ったのは、シンガポールに拠点を置く「パークウェイ・ライフ・リート」。
「不動産投資信託REIT〈リート〉」と呼ばれる金融商品を運営している。
不動産を買うお金を投資家から集め、買い取った物件の家賃収入
などを「配当」として投資家に返す。ウチヤマからは門司区の施設の
ほかにも三重県の鳥羽など四つのホームをまとめて買った。
ウチヤマの山本武博・経営企画室長は「売れたのは開設後
1~2年の施設。どこもまだ半分は空室があるのに、早く成約したいと
いう感じで、まるで青田買いのようだ」という。5施設を計約45億円で
売り、ウチヤマには十数億円の売却益がころがりこんだ。
パークウェイは、リートでは日本国内で最大の介護施設のオーナーに
なっている。これまで総額800億円で計44件の介護施設や病院を
買収してきたが、このうち日本国内の施設が40件を占める。
「これから団塊世代が後期高齢者になって、介護や関連の市場も
成長が見込める。優良な投資先としては世界屈指。日本は買いだ」。
パークウェイ・ライフ・リートを運営するヨン・ヤンチャオ最高経営
責任者(CEO)は、日本へのさらなる投資に意欲をみせる。
■効率優先、人員は最低限
買収合戦の過熱で施設が値上がりしても、
その恩恵は働く人に届かない。
「そんなこと書いちゃダメ。マズいから、書き直して」。施設トップの
ホーム長の言葉に、当時勤めていた女性看護師は耳を疑った。
介護事業会社「ワタミの介護」(東京)が経営する神奈川県内の
老人ホームで昨春、前夜の状況を引き継ぐ会議でのことだった。
夜勤責任者のケアワーカーが、ある入居者について「ベッドから
落ちたが、けがはないので様子見した」と報告書を読むと、
ホーム長がすぐさま書き直しを命た。
この施設では夕方6時以降、看護師が常駐せず、翌朝8時まで
ケアワーカー3人で約60人の入居者をみる。夜間に転落などの
「事故」が起きた時は、自宅待機の看護師に連絡し、処置を
仰ぐことになっていた。
ルール違反の発覚をおそれて、ホーム長は「様子見した」と
いう報告書を、「自宅待機の看護師に報告した」と書き直させた。
入居者への薬の飲ませ忘れや取り違えも数え切れなかった。
誤って薬を飲ませれば重大事故につながる可能性もある。
配薬ミスを聞いた主治医が、「いい加減にしろよ」と
怒鳴ることもしばしばだったという。
酸素ボンベの操作ミスで女性入居者が意識不明に陥ったり、
徘徊(はいかい)ぐせのある男性の部屋に鍵をかけ忘れ、
深夜2時に5キロ離れた場所で警察に保護されたこともあった。
「本来なら自治体に事故報告書を提出するケースさえ、
もみ消されていた」と関係者は証言する。
「経営効率を優先するから、人員は最低限。だから入浴や
排泄(はいせつ)の介助が重なると、誰もいないことも多かった。
便で汚れたまま、数時間も放置された老人もいた」。
同じ「ワタミの介護」で勤務したことのある元ケアワーカーは
慢性的な人手不足を挙げる。
こうした問題に、ワタミグループは「事故隠しの事実はない。
人手不足でサービス低下の認識もない」(広報)としている。
 
■介護、成長戦略の柱
介護は医療とともに、安倍政権の成長戦略の柱の一つと
位置付けられている。6月の「日本再興戦略」では、
「制度設計次第で巨大な新市場として、成長の原動力に
なり得る」とし、介護情報の電子化をはじめ、高齢者向け
住宅の建設や介護ロボットの開発を促す方針を打ち出した。
近く分科会を立ち上げ、具体策の検討に入る。
介護保険給付費は増加の一途をたどり財政を圧迫しているが、
逆に介護事業を成長産業に転ずることで負担を和らげる
狙いもある。介護はこれまでも、麻生政権の「未来開拓戦略」
(2009年4月)や、菅政権の「新成長戦略」(10年6月)などで、
雇用を増やす成長産業として育てる方針が示されてきた。