はりぼて
監督:五百旗頭幸男 、砂沢智史
80点
最初の概ね30分間はかなりひどい内容だ。政治批判のドキュメンタリーとして考えれば、取り上げるテーマがステレオタイプの陳腐なものである。また、市民団体などの「活動家」の政治的偏向に彩られた作品のようにも感じる。
要するに、「政治家は悪者だ!」という固定観念に彩られた一種の政治的プロパガンダともとられかねない内容なのだ。
だが、中盤以降、政治家たちの不正が暴かれていく中での描写が一味違う。
「人間愛」にあふれた目線で描かれているのである。決して彼らを「抹殺すべき悪人」と捉えるのではなく、だれでもが持つ「人間の性」を描くことに重点がおかれている。
「最後はみんな良い人」というのが日本映画の伝統だが、「悪行を働く政治家」をただ糾弾するのではなく、「一人の人間」として描いているのがこの作品の特徴だ。その部分は非常に説得力がある。
このように書くと、最初の30分はまったく無駄なようにとられる恐れがある。しかし、最初の30分のスタイルが「既存メディアの報道の在り方」への「疑問提起」として重要である。
監督が「新しい報道の在り方」を模索していることは、最後の部分での「突然の発表」に集約されるであろう。
ドキュメンタリーと言っても、実際には製作者の主観が入った「創作」であることは間違いが無い。五百旗頭幸男たちは、「人間愛・人間観察」という主観が入った内容のドキュメンタリーを「映画」という媒体で表現したことになる。
ただ、多くの人々は映画になにがしかの娯楽性を求める。
センセーショナルな部分も無く、ただ淡々と人間を誠実に描く姿はスティーヴン・ソダーバーグ監督の「28歳の革命」「39歳 別れの手紙」と同じスタンスだ。だが、本作品同様抑揚が無い。
ソダ―バーグ監督の「チェ・ゲバラ2部作」ほど長くは無いが、100分という長尺の作品は、苦痛なしに鑑賞するのは難しいと言える。
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