カオハガンの夜明け(おおたとしまさ撮影)
つい先日まで、フィリピンのセブ島にいました。
たまたまご縁があって、セブ島には日本人の友人も現地人の友人もたくさんいて、よく通っています。
なかでもセブ島の沖合い8キロほどのところにあるカオハガン島という小さな島がお気に入りで、今回、そこにも滞在しました。
今日はカオハガン島について紹介したいと思います。
セブ島はリゾート地として有名ですが、昨今は英語の語学研修の留学先としても人気です。
セブ島といっても、実は国際空港や高級リゾートホテルがあるのはその脇にあるマクタン島という島です。
カオハガン島に行くには、マクタン島の南にあるマリゴンドン港という船着き場から小さな船に乗ります。
カオハガン島はサンゴのかけらなどが堆積してできた小さな島です。
広さは東京ドーム約1個分。歩いて10分、15分くらいで島の周囲を一周できてしまいます。
電気もガスも水道もありません。
そこに現在約700人の島民が暮らしています。
島民の家はほとんどベニヤ板とトタンでできています。
約30年前、崎山克彦さんという日本人がこの島を購入し、『何もなくて豊かな島』というタイトルの本を書いたことで、日本の旅行者にとってカオハガンは憧れの場所になりました。
島の一画には崎山さんがつくった素朴なゲストハウスがあり、旅行者はそこに泊まることができます。
いまは崎山さんのあとを継いだ日本人女性2人がそこを切り盛りしています。
海に出れば何かしら食べ物はとれますから、食うや食わずやであくせくすることがない島はありますが、一方で、小さな島ですから、無限にフルーツが採れるわけではありません。
井戸を掘っても海水しか出ませんから、飲み水は近隣の島から買ってくるしかありません。
シャワーや洗濯などは雨水を大事に使って暮らしています。
主食のお米だって定期的に回りの島から買ってくるしかありません。
だから完全に自給自足ができているわけではなくて、最低限の現金が必要です。
その点、アイランドホッピングでやってくる観光客向けにおみやげを売ったり、シーフードのBBQを提供したりすることで得られる現金が、ほぼ唯一の現金収入です。
みんなで役割分担して、わずかな現金収入を分け合って暮らしています。
つまり、経済的な指標で見たら、とても貧しい島です。
でも島民はみんな笑顔ですし、島に誇りをもっています。
ゲストハウスを切り盛りする日本人女性のひとりは「水道も下水もない。病院もない。教育も不十分。SDGs的な指標にあてはめればこの島はほとんど何も達成できていませんが「誰一人取り残さない」というSDGsの究極の目標はすでに達成できています」と語ります。
この逆説が、カオハガン島の興味深いところです。
私自身、カオハガン島に通うなかで、現代人が自分たちの生活を勝手に複雑にして社会課題をつくりだし、それを克服するために17の目標を設定して2030年までに達成しようとかやっていることに、大きな疑問に感じるようになりました。
曹洞宗の開祖・道元の有名な言葉に「放てば手に満てり」がありますよね。
まさにそれを体感できる島なんです。
この島にときどき通っていることは、私の教育に関する考え方にも少なからぬ影響を与えていると思います。
カオハガンから、私たちは多くを学ぶことができると思います。
日本語のサイトもありますから、ぜひチェックしてみてください。
https://caohagan.com/
私は今回、9月30日の朝にセブ国際空港を出るフライトで東京に帰ってきたのですが、まさにその日の夜、セブ島を大きな地震が襲い、沢山の死者が出ていることが報道されています。
カオハガン島もだいぶ揺れたそうですが、全員の無事が確認されているそうです。
まだ被害の全貌が明らかになっていないようですが、被害者数がこれ以上増えないことをお祈りするばかりです。
※2025年10月2日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。
