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夏休みもそろそろおしまい。お子さんの夏休みの宿題は無事終わりましたでしょうか。自由研究も形になったでしょうか。先日、週刊誌のインタビューを受けました。説明書通りにやれば1時間くらいでできてしまう自由研究キットのようなものが売れているのだそうです。「それはなぜか?」「それでいいのか?」という取材でした。

 

個人的な考えを言えば「いいんじゃない」です。が、懸念する気持ちもわかります。そこで、「自由研究」はそもそもどういう目的で課されるものなのかをいま一度確認しておく必要はあるかなと思いました。それをふまえたうえで、各ご家庭で自由研究へのスタンスを決めればいいのではないかと思います。

 

さて、「自由」というのは「出しても出さなくてもいい」という意味ではなく、「テーマ設定は自由」という意味です。要点は「研究」のほうにあるのだろうと私は思います。

 

「研究」とは、よく調べて考えて真理をきわめることと辞書にあります。普段の学校の勉強はどうしても教えられたことを覚えたり、言われたことをくり返し練習するようなものになりがちです。でもそれだけではだめだから、たっぷりと時間がある夏休みに、自分なりに気になったこと、疑問に思ったことをテーマとして、たっぷり時間をかけて自分で調べて、考えてみてねというのが「自由研究」の主旨であるはずです。「調べてみたけど、わからなかった」という結論でもいいわけです。

 

その点でいうと、自分で調べなくても材料が用意されていて、自分で考えなくてもやり方が示されていて、「完成図」という形で結論もあらかじめ見えているというのは、本来の「研究」の主旨からは外れるような気がします。「完成図」という「正解」に向けて「説明書」に決められたとおりにやるというのは、普段の勉強とあまり変わらない構図です。まあ、それもやり方次第でしょうが。

 

自由研究キットのようなものは昔からありましたし、キットを使わなくても「自由研究のネタ帳」みたいな本は昔からありました。そこに書かれたとおりに材料を集めて、そこに書かれたとおりの手順で実験すると、そこに書かれたとおりの結果が得られてめでたしめでたしというわけです。だから、いまどきの子どもはダメだとかいうつもりは私にはさらさらありません。

 

ただ、気をつけてほしいのは、見た目に派手で完成度の高い成果物が必ずしも良い自由研究ではないということです。自分では何も考えず、言われたとおりに作業をしただけの「大作」より、自分の好奇心を追求しできる範囲で調べて自分なりに考えた結果をまとめた画用紙のほうが、自由研究の主旨には合っているといえるでしょう。

 

見た目に派手な成果を求めるというのは、高校における理科教育にもいえる傾向だと思います。最新機器を用いて派手な実験をすることが高度な理科教育であると勘違いしているひとたちがたくさんいます。また、ノーベル賞を受賞した科学者が、口々に言うのは「もっと基礎研究を大事にしろ」ということです。何かにすぐに役に立つ派手な成果が出る研究ばかりでなく、地道で泥臭い研究がもっと高い評価を受けなければいけないということです。ちょっとこじつけではありますが、どこか、いまの自由研究のトレンドと共通するものがあるように感じるのです。

 

とはいえ、もう時間がありません。「自由研究やってなかった!」という親子は、どうぞ多彩な自由研究キットのなかからいちばん興味をもって取り組めそうなものをお買い求めください。

 

私の個人的な本音を言わせてもらえば、夏休み終了間際にイヤイヤやるくらいなら、「自由研究」は提出するかどうかも自由にしちゃえということです。「夏休み中に、気づいたこと、気になったことを自分で調べてみて、わかったことをまとめて提出してくれたら嬉しいな」くらいにしておけばいいのではないでしょうか。

 

やりたいひとが勝手にやって、それを見たほかの児童たちが内心「すげー」と思って、「来年は自分も何かやってみよう」と思うようになるのが理想的だとは思います。

 

そして2学期になったら、成果物の完成度の高さを評価するのではなく、「こんなことに気づいたんだね!すごいね!」「こんなことに疑問をもったんだ!面白いね!」「いろいろ試してみたんだね!頑張ったね!」と、研究の出発点や試行錯誤のプロセスのほうに焦点を当てて自由研究を評価してあげたほうが、子どもたちの知的欲求は刺激されるのではないかと思います。

 

 

 

 

(参考記事)

https://www.news-postseven.com/archives/20190819_1433385.html

https://www.news-postseven.com/archives/20190821_1433877.html

https://www.news-postseven.com/archives/20190822_1433883.html

 

※2019年8月29日にFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容の書き起こしです。