子供たちの人権を守れ!

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新刊『追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉』では、教育熱心過ぎる親による「教育虐待」の闇にいろいろな角度から光を当てました。単に教育熱心過ぎるだけでなく、その親自身、教育虐待の被害者として大人になり、そのことを自覚できていない場合もあります。

ぜひお読みいただきたいのですが、本を読むほどには興味が湧かないという人にも、一般的にいわれるいわゆる「教育虐待」とは直接関係ないのですが、今こそぜひ知っておいてほしいことがあるので、ちょっと長くなりますが、引用します。


 1989年、国連は、「子どもの権利条約」を採択した。日本は1994年に批准した。世界中の子供たちの人権を守るために、世界中の大人が何をすべきかを定めたものだ。
 さらに1990年、国連は、「子どもの権利条約」を基盤として、「少年非行予防のための国連ガイドライン」通称「リヤド・ガイドライン」を定めた。その前提となっている認識は、「人権侵害をされた子供が非行に陥る。つまり非行は、人権を尊重されてこなかった子供のSOSと受け止めるべきだ」というものだ。
 非行をSOSとして受け止め子供たちの人権を回復すれば、子供たちは立派に人生を歩み、社会に貢献できる存在になれる。非行少年に「犯罪者」というラベルを貼って社会の厄介者として扱うのか、彼らの人権を保障し社会に貢献する人として扱うのかを問うている。
 さらに、「非行を予防しようとするのなら、幼いころから子供の人権を守り、保障していくことだ」としている。
 実は「国連子どもの権利委員会」は1998年から2010年まで3度にわたり、「高度に競争的な学校環境が子供のいじめ、精神障害、不登校、中退および自殺を助長している可能性がある」などと日本に対して勧告している。しかしそれがメディアで取り上げられることは少ない。
 武蔵大学の武田信子教授も、日本の学校そのものが広義での「教育虐待」の温床になっている可能性があると指摘する。「学校によっては、教師から生徒への『権力による押さえつけ』『決して弱者に対してでなければなされないような強制』『使われないような言葉遣いや態度』が見逃されていることがあります。子供たちを萎縮させ、主体性を剝奪しかねないこの国の教育の現状をこのまま続けていて良いのでしょうか」と訴える。
 一方、学校教育の現場には、「ゼロトレランス」という考え方がある。軽微な違反や非行でも、停学や退学といった処分を与える方針の学校管理の方法だ。アメリカで提唱され、特に公設民営の通称「チャータースクール」と呼ばれる学校で広く取り入れられている。「害悪は早めにつまみ出せ」ということである。子供の権利を守りSOSを受け止める代わりに、「問題児」「非行少年」「犯罪者」というレッテルを貼り学校から放り出す施策といえる。
 この方針により、アメリカでは年間約300万人以上の児童が停学・退学処分を受けているといわれている。ちなみにアメリカは、未だ「子どもの権利条約」を批准していない数少ない国の一つだ。
 日本でも一部の自治体で「ゼロトレランス」導入の動きがある。背景にはいじめ事案への対応があるのだが、それとこれとは別にしてもらいたい。「ゼロトレランス」の方針が社会に広まれば、子供たちはSOSを発することができなくなる。人権が踏みにじられていても誰も助けてはくれない。それどころか、「犯罪者」のレッテルを貼られ、教育を受ける権利すら剥奪されるのだ。そんな不寛容な社会がどうなっていくかは、誰でも予想がつくのではないだろうか。
 ある名門進学校の校長は「問題を起こしたからといって退学にするようなことは、教育ではない。問題を起こしてからが教育ではないでしょうか」と訴える。私も同感だ。
 社会の目指すべき方向は自明であるように私には思える。