演出家ジュリー・ティモア解雇後の「スパイダーマン」 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

演出家ジュリー・ティモア解雇後の「スパイダーマン」

おかげ様で、昨夜は、私の登場を待って
三羽の鶴が舞い降りてきました!
ミッドタウンの魯山人、トシカプ。

2011/7/28

災難続きの上、しまいには演出家“ジュリー・ティモア”(「ライオン・キング」)までクビにしたミュージカル『スパイダーマン』。ティモアが降板した2011年5月、公演は3週間ほど中断。脚本、演出に手が加えられた。そして6月14日、ついに正式に開幕するに至ったわけ。あれから1年半。チケットの売り上げは週1億2千万円で常時ベスト5を維持する大健闘。この感じだと75億円の借金返済も現実ものになりそう。

ストーリーはシンプルに。ジュリー・ティモア版ではギリシャの怒りに触れ、蜘蛛女のアラクネーが、寂しさのあまりピーター・パーカーをスパイダーマンにし、自分の恋人にてしようとする・・ってな展開があったけど、改訂版ではそれを削除。書き換えられた物語は、スパイダーマンを生み出し、自分で開発した研究薬で悪のモンスター、グリーン・ゴブリンに変貌してしまった
ノーマン・オズ・ボーン博士とスパイダーマンの対決が中心に描かれている。

ピーター・パーカー(スパイダーマン)に扮したのは、ブロードウェイ初挑戦のリーヴ・カーニー。少女漫画で出てくる王子様のようなイケメンだ。けど、プレビューで183回演じているわりには演技は安っぽいテレビドラマの俳優レベル。つまり大根ってこと。全く印象に残らないし、オーラも感じない。その相手役メアリー・ジェーンを演じたジェニファー・ダミアーノ(「ネクスト・トゥ・ノーマル」)もねぇ~?体当たりで演技に挑んでいるの認めるけど、華がないからヒロインに向かないんだ。

ボノとエッジ(U2のメンバー)の音楽もね~。今どきの子供にしたら80年代ロックの懐メロ。
印象に残ったのはアラクネーが歌う” Turn Off the Dark"くらい。なぜ、本作にボノとエッジを起用したのかが、私には全く理解できまへん。まあU2も世界を代表するロックバンドといえども過去の人。話題性が欲しかったららこのオファーを受けたのだろうけどね?

ジュリー・ティモアとグレン・パーカーの脚本を手直したのはテレビ、映画、コミックの世界で活躍中のロバート・アギーレ・サカサ。子供の為の稚拙なストーリーに、ジュリー・ティモアが残していたったクリエイティブな豪華な舞台装置はあまりにミスマッチ。私は、この退屈な改訂版を見てジュリー・ティモアを降板させたのが果たして得策だったのかは疑問!?

本公演の見どころはのべ10分ほどのフライングシーン(ちなみに上演時間は2時間半。ティモア版と比べたらかなりフライングのシーンが削られたような?)。いかにも吊ってますってな図太いワイヤー丸見えじゃ興奮度は半減だね(まだ堂本くんのミュージカル「ショック」のフライングの方がしっかりしてるような)。最初からシルクドゥ・ソレイユのフライングのエキスパートに特殊効果を頼めば良かったのかも!?とはいえ、腐っても鯛の”スパイダーマン”。抜群の観客動員を誇っている。その多くは家族連れ。劇場内は甘いキャンディの香りが充満(肥満児の子供が多かったわけだ)。あの雰囲気は、もう劇場というよりは映画館。いっそのこと劇場でバターたっぷりかけたポップコーンとソーダでも売りゃあいいのよ。