晴れた日に永遠が見える | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

晴れた日に永遠が見える

再演ミュージカル『晴れた日に永遠が見える(On a Clear Day You Can See Forever)のブロードウェイ初演は65年、その5年後にバーブラ・ストライザンド主演で映画化もされたロマンティック・コメディよ。今回の再演は、ブロードウェイのカリスマ演出家マイケル・メイヤー(「春のめざめ」)のアイディアによって、オリジナルの脚本に”ヒネリ”が加えられた改訂版になっている。

物語の舞台は70年代のNY。5年前に最愛の妻を亡くし、立ち直れずにいる精神科医マークは、新しい患者としてゲイのデヴィッドを受け持つことに。セラピー初日、マークは彼に催眠術をかけて過去に起きたことを蘇えさせる。すると・・彼の前世は美しい女性ジャズシンガーであったことが判明。精神分析を進めているうちにマークは、前世の女に恋してしまう。その一方、デヴィッドは精神科医のマークが自分に恋していると思い込み、彼に惚れてしまうのだが・・・・。

主演は、大ヒットした再演ミュージカル「パジャマ・ゲーム」(06年)でブロードウェイデビュー、ジャズ歌手したハリー・コニックJR。甘いマスクとフランク・シナトラを彷彿とさせる低音の魅力で多くのオバちゃんの心をくすぐる彼。さすがに歌は巧いわ。グラミー賞候補になり、シナトラの再来といわれることはあるわね。でも芝居となると話は別。一挙手一投足は超不自然。やもめという暗く沈みがち役柄とはいえ、最初から最後まで演技は固いままなのはいかがなものか。それが演出によるものなのか、ハリー・コニックJRの演技のまずさからきているのか、私にはよう解らんけど、とにかく彼の姿が痛々しいったらありゃしない。「パジャマ・ゲーム」の二番煎じを狙ったようだけど、そうは問屋が卸さなかったわね。

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本公演の唯一の注目は作曲家バートン・レインと作詞家アラン・ジェイ・ライナーの音楽。ダイナミックで聞き応えのある名曲揃いよ。特に情熱的な曲“カムバック・トゥ・ミー”は私のお気に入り。でもね、なんで70年代の時代はじめのはずなのに、40年代に流行したビックバンド風の新曲を加えたのは疑問よ。おそらく、コニックJRの得意分野だからだとおもうけど、それによって時代背景がめちゃくちゃ。音楽に統一性がなくスゴい違和感を覚えたわ。

そもそも問題は脚本家ピーター・パーネル(「QED」01年)によって書き換えられた脚本とマイケル・メイヤーの演出ね。個人的にはゲイの男性を登場させたアイディアはオモロいけど、なんで、ゲイの男性と彼の前世の女性役を一人二役でやらせなかったのかよ?芝居の醍醐味を忘れているわ。ったくよ、観劇後、私の一日はUNCLEAR DAYだったわよ。公演は、夜逃げするように1月29日に幕を閉じたようよ。