- 第十二話 『二つの戦場』
ギコが走った先は、敷地内・庭の中央部。
未だ敵は門を越えた辺りで屋敷の防護兵に手間取っていた。
( ,,゚Д゚)「思ったよりも弱いな……と、なると」
「ぎゃぁぁぁああ!!」
左方向から叫び声。
見れば、敵の影も無いのに味方が続々と倒れていく。
( ,,゚Д゚)「あれは――」
(*゚∀゚)ノ「や」
一瞬で現われたは女性。
女物の黒いスーツに赤いロングブーツ、両の手にはナイフ。
( ,,゚Д゚)「その赤いブーツ……お前が内藤達が言っていたツーとやらか」
(*゚∀゚)「うーん、嬉しいねぇ。
やっぱり自分の事を知ってもらえてると嬉しいもんだねぇ」
( ,,゚Д゚)「ここからは俺が相手をしよう」
右手を掲げ、握る。
青い発光。
1st-W・グラニードが、その姿を現した。
- (*゚∀゚)「ハハ、すっごいデカいねぇ」
対する彼女は両手でナイフを器用に回しながら、ベラベラと喋る。
(*゚∀゚)「私さぁ、血をたくさん見たいんだけど
アンタ放っておいてやろうとすると、邪魔されるじゃん?
だから先に殺しておいてあげるよ」
対しギコはそのおどけた姿を見据えながら
( ,,゚Д゚)「やれるものなら、な」
(*゚∀゚)「言うじゃん」
途端、ツーの姿が消えた。
6th-W・ギルミルキルの能力である超高速移動だ。
『1st』VS『6th』、戦闘開始――
- しぃ、ドクオの二人は玄関の扉前にいた。
('A`)「発動!」
左手を掲げ、叫ぶ。
茶色の発光。
次の瞬間には、右手に巨大な銃器。
7th-W『ガロン』だ。
('A`)「ここからは通さねぇ!」
前方に向かって射撃。
光弾は光速とでもいうような速度で飛び、敵を撃破していく。
(*゚ー゚)「お願い……発動して!」
隣ではしぃが右手を掲げながら問いかける。
その先は桃色の指輪だ。
彼女の声に反応して光はするが、能力を発動することはない。
('A`)「それ、まだ使えないんスか!?」
(;*゚ー゚)「ごめん!」
と、彼女は懐から拳銃を取り出す。
前方の敵の群れに狙いをつけながら
(*゚ー゚)「ドクオ君、ここは通しちゃ駄目だよ!」
('A`)「OK、いっちょぶちかましてやる!」
- 窓には防護シャッターがあるおかげで、狙われるとしたらここだ。
屋敷内に敵を入れないよう、向かってくる黒い格好をした敵を順次倒していく。
('A`)「おぉぉぉぉ!!」
トリガーを引きまくる。
このガロンに弾切れという概念はなく、ひたすら光弾を発射するのみだ。
連射速度は多少遅いものの、その威力には不満はない。
隣ではしぃが射撃を続けていた。
ドクオよりも連射速度や迫力は無いが、その的確な射撃で敵を倒していく。
ふと、ドクオは背後に目を向けた。
( ω )「…………」
ブーンがうずくまるように身を丸め、壁に瀬を預けるように座っている。
ドクオ達が突破されるという事はブーンも殺される可能性があるということだ。
('A`)(やらせるかよ!)
友を護る一心で射撃。
ブーンは、俺が護る――!
- 射撃、射撃、射撃。
もはや玄関前から発せられるのは弾丸と光弾のみ。
向こう側からは何も飛んではこない。
相手が攻撃姿勢に入るまでに的確な攻撃を当てているからだ。
('A`)(訓練の成果が出てるな……)
内心、ガッツポーズをとる。
暇なときがあればガロンを使って射撃練習をしていた。
その成果が今、形となって出ている。
撃って撃って撃ちまくる。
それがドクオの唯一出来ることだった。
故に訓練は単調だったものの、成果が出るのは早い。
と、その時だ。
「随分と派手にやってんじゃねぇか」
('A`)「!?」
前方に影が降り立つ。
ジャラリを鎖を纏うように振り回すその姿は、さながら蛇使いのようだ。
彼の身体を護るように巻きついているのは9th-W『ユストーン』。
( ゚∀゚)「俺も混ぜろや」
ジョルジュ。
ブーンが初めて戦った相手だと聞いている。
- ('A`)「お前……!」
銃口を向ける。
その先に立つジョルジュは、軽く両手を上げながら口笛を一つ。
( ゚∀゚)「おぉ、怖い怖い……俺、銃が苦手なんだよなぁ」
('A`)「なら喰らってくたばれ!!」
トリガーを引く。
光弾が、ジョルジュ目掛けて発射された。
( ゚∀゚)「だってよぉ――」
当たる直前に、ジョルジュは鎖を振るった。
甲高い、ガラスが割れるような音が響く。
(;'A`)「――!?」
光弾を弾いたのだ。
ジャラリ、ジャラリと鎖を振り回し、身を護るように纏わせるジョルジュ。
以前ブーンと戦ったときよりも、その鎖の長さは数十メートルほど伸びている。
( ゚∀゚)「だってよぉ……三次元空間でありながら一直線しか攻撃できねぇし
軌道が読みやすいったらありゃしねぇ。
やっぱ苦手だわ……自分が使うのは」
(;'A`)「こいつ……!」
- ( ゚∀゚)「ところで……お前の後ろでうずくまってる奴、誰?」
( ω )「…………」
返事はない。
( ゚∀゚)「まさか、あのガキだとか言わねぇよなぁ?
俺様が失敗作の次に殺したかった、あのガキじゃねぇよなぁ?」
('A`)「待てよ! アイツの前に俺がいるってことを忘れるな!」
( ゚∀゚)「は? お前が俺様と戦えるとでも?」
('A`)「嘗めるなっ!!」
今度は連射だ。
合計四発の光弾がジョルジュに迫る。
( ゚∀゚)「だぁから、数が増えたって本質は変わねぇんだっつの」
気だるそうに鎖を振るう。
甲高い音が今度は四回響き、ドクオの攻撃を通さない。
ジョルジュを護るようにして舞う鎖は、もはや鉄壁の域だ。
( ゚∀゚)「次はこっちがやらせてもらおうかねぇ……。
これで死んでも謝らねぇからな」
- (;'A`)「……!」
咄嗟に足を引いた。
瞬間、鋭い鎖がドクオの足元を砕く。
ドクオは後退しながらも射撃するが――
しかしそれは全て鎖に防がれる結果に終わる。
(;'A`)「くそっ、どうすりゃいいんだよ!」
( ゚∀゚)「お前のウェポン、俺様のと相性最悪みてぇだな!
ヒャハハ、哀れで仕方ねぇ!」
高笑いが響く。
( ゚∀゚)「ま、本番前のウォーミングアップっつーことで――」
ジョルジュが右手を頭上高く上げる。
途端、身を護っていた鎖がその腕を支柱とするかの如く螺旋を描き始めた。
(;'A`)「……!?」
天高く上る螺旋の鎖。
- ( ゚∀゚)「俺の新技……喰らっちゃいな!」
ジョルジュが、構えながら鋭く左手をこちらに向けた。
瞬間、右手で竜巻を作っていた鎖が一瞬にして左手に移る。
そこから発せられるのは、螺旋型の威力の牙だ。
(;'A`)「うぉ!?」
圧倒的な威圧感を感じ取り、身を投げる。
鎖は螺旋を描きながらも一直線にドクオを狙うが――
しかし、判断が一歩早かった彼はその身を食われずに済んだ。
破砕。
破壊の音が、その場に激震として響く。
(;'A`)「う、うわ……」
慌てて視線を上げる。
その視線に写るは、頑丈そうな扉が無惨にも『喰』われた様子だ。
円状に破壊された扉の破片が、パラパラと音を立てて落ちている。
食い破った鎖がジャラジャラと音を立て、破壊された扉の奥から引き出されていった。
( ゚∀゚)「ちっ、外したか。
これ、人の身体で試したことがねぇから、どうなんのか見たかったんだけどなぁ」
(;'A`)「……くそっ!」
- 相手の攻撃のバリエーションが多い。
そしてそれは防御にさえも使用可能。
対し、ドクオは光弾を発射するだけの銃器だ。
利点と言えば遠距離攻撃が可能というくらいで、しかもそれさえ相手は軽く防ぐ。
勝てる要素がまったく見当たらない。
まずい。
非常にまずい。
攻撃は当たらず、相手の攻撃は高威力で高性能。
圧倒的に相手が悪い。
しかも奴の狙いは、屋敷への侵入ではなくブーンだ。
逃げるわけにもいかない。
しぃは今、ジョルジュ以外の敵の迎撃で精一杯だ。
ジョルジュはそれには興味が無いのか、見向きもしない。
ギコもおそらく、他の指輪使いと戦っている頃だろう。
駄目だ。
退路も無く、そして勝ち目も無い。
(;'A`)(ど、どうすりゃいいんだよ……!)
己の弱さに歯噛みする。
- かつても似たような状況があった。
ツーに初めて襲われた時。
あの時も、自分は生を諦めようとした。
('A`)(そうだ……俺はすぐに諦めてしまう)
駄目だ。
それでは駄目だ。
親友の前で幸せを掴むと誓ったじゃないか。
諦めるな。
必ず何か弱点があるはず――
ドクオは立ち上がり銃を構える。
先ほどとは違い、重心を微かに上げた状態だ。
('A`)「やってやる……!!」
( ゚∀゚)「根性あるじゃねぇか……だが、こういうのは根性論じゃどうしようもねぇんだぜ」
再度、ジョルジュが右手を上げる。
先ほどと同じように螺旋状に舞い始める鎖。
攻撃開始の合図は、左手を上げたときだ。
それさえ無事に回避出来れば、奴を護る鎖は無いも同然。
そして奴は今まさに左手を――
('A`)(上げた!!)
瞬間、ジョルジュから見て右方向へ身を投げ出す。
- 回避出来るか……!?
?
何も、こない?
音も衝撃も無い。
不思議に思い、顔を上げる。
その視線の先には、口の端を吊り上げ笑うジョルジュの顔があった。
( ゚∀゚)「引っかかってんじゃねぇよ、バァカ!!」
左手はフェイク。
未だ鎖は右手で螺旋を描いていた。
(;'A`)「なっ!?」
慌てて身を起こそうとする。
が、遅い。
( ゚∀゚)「死ねやぁぁぁあ!!」
右手から鎖が『発射』された。
飛んだ鎖は上空で一瞬うねるように身をよじらせるが、すぐに頭を落下させてくる。
落ちる先はドクオだ。
- (;'A`)「やられて……たまるかよ!!」
倒れたまま横転。
直後、鎖の頭部が地へと直撃した。
しかしそれで終わることは無い。
高き塔が崩れ落ちるかのごとく、その身を転がるドクオの方へ倒してきたのだ。
(;'A`)「がっ!?」
普通の鎖とは思えない一撃が、ドクオの背中に直撃する。
メリメリと悲鳴を上げる内臓、そして背骨。
( ゚∀゚)「ヒャハハハハ! お前、弱いなぁ!!」
ドクオは痛みと苦しみに耐えながら、笑うジョルジュを見上げる。
どうしても一泡吹かせたいが、それも叶いそうにない。
自分はどうにもギコやブーンのようにはいかないようだ。
悔しい、そして悔しい、更に悔しい――
どうにも埋まらない、この差。
だがしかし――
(;'A`)「う、うおぉぉぉぉ!!」
全力で腕に力を入れ、上半身を起こそうとする。
(;'A`)(やってやるさ……たとえ差が埋められぬ深さでも、埋める行為自体は出来るはず!!)
諦めず抗う――それを抵抗という。
- ('A`)「うわあぁぁぁ!」
何とか起き上がり、そして走る。
向かう先はジョルジュだ。
( ゚∀゚)「あ? 気でも狂ったかよ?
銃で接近戦って……某映画のアレのつもりか?」
('A`)(今だ!)
ブン、と思い切り腕を振るう。
( ゚∀゚)「!?」
飛んできたのは光弾ではない。
ガロンそのものだ。
(;゚∀゚)「銃ごと投げる!? 馬鹿か!?」
鎖を振るい、ガロンを叩き落そうとする。
('A`)「――解除!」
声と共に動きが起きた。
ガロンが、一瞬の光の直後に指輪に戻ったのだ。
(;゚∀゚)「なっ!?」
結果、ジョルジュの振るった鎖は何も無い空間を締め上げ、隙が出来る。
ドクオは一気に接近、空振った鎖を掻い潜り指輪を回収。
- ('A`)「発動!」
指輪がガロンの形を取り戻す。
すぐさま銃口を向け――
(;゚∀゚)「――!?」
その先端は、しっかりとジョルジュの喉元に突きつけられていた。
危険過ぎる賭けだったが、どうにか成功したようだ。
(;'A`)「う、動くなよ……首が吹っ飛ぶぞ」
(;゚∀゚)「ちぃ……」
膠着状態。
少し離れた場所では、しぃが射撃しながらもこちらの様子を伺っていた。
どうやらジョルジュの動きを封じることが出来たのを見て安心したのか、その口元には笑み。
( ゚∀゚)「テメェ……マジでウゼェ」
軽く両手を上げ、睥睨するようにドクオを睨む。
(;'A`)「お前よりはマシなんだよ……!」
- 正直、怖い。
この男の殺気を間近で、そして全身でヒシヒシと感じる。
まるで全身を針で突かれているような感覚。
背中は既に汗でぐっしょりだ。
膝も微かに震えている。
だが、それ以上に達成感があった。
あの凶暴な男を自分が抑えることに成功した事実に、ドクオは内心喜ぶ。
しかし、これからどうするべきか。
まさか殺すわけにもいくまい。
かといって、戦闘が終わるまでこのままにしておけば、必ずジョルジュは何らかの手に出るだろう。
(#゚∀゚)「…………」
(;'A`)「…………」
え、いや、マジでどうするの?
- 庭の中央部では、巨剣とナイフが高速で交差している。
持ち味の速度でかく乱しつつ、隙を狙ってくるツー。
防御に徹し、攻撃を回避したところでカウンターを入れようとするギコ。
互いの得物も速度もまったく異なるというのに、それは互角の戦闘に見える。
ギコの周りに声だけが響いた。
(*゚∀゚)「アハハハハ、やるじゃん、アンタ!
面白くて涙出ちゃうー!」
( ,,゚Д゚)「こっちは早く終わらせたいというのだが……蝿か、お前は」
(*゚∀゚)「いいねぇ、いいねぇ!
来世は死体に群がる蝿になりたいねぇ!」
( ,,゚Д゚)「だったらすぐにでも来世へ送ってやる」
と、ギコが一方向に向かって走り出す。
その場で留まっていても的になるだけだ。
とにかく動き、そしていち早く敵の動きの乱れを発見する。
( ,,゚Д゚)「そこか!」
一定のパターンを発見。
タイミングを計算し、そこへ巨剣を叩き下ろした。
- (*゚∀゚)「ひょぉ! 危ない危ない!」
( ,,゚Д゚)「ちっ……」
どうにも捉えきれない。
刀身を極限まで軽量化して戦うことも考えられたが
しかし己の身体の速度は上がらないことを考慮すると、得策ではない。
確実に切り刻まれる。
( ,,゚Д゚)(弱点はないのか……?)
どんな武器や能力にも弱点や制約・制限があるはずだ。
( ,,゚Д゚)(しかしそれは甘い考え、か。
これはウェポン同士の戦い……常識は当てはまらない)
クルト博士の作りし、究極の攻撃を想定に入れた14の武器。
それらに弱点などあるというのか。
例えば、ドクオのガロンには弾切れがない。
例えば、ブーンのクレティウスは格闘戦における身体強化。
例えば、ギコのグラニードは刀身に対する引力変化を可能とする。
そう、弱点や制約というモノを排除したのがウェポンなのだ。
ならば、どうやって指輪使いを倒すか。
簡単な話だ。
術者自身の弱点を突けばいい。
そこには武器の優良さなどは関係ない。
- では、ツー本体の弱点は?
( ,,゚Д゚)(その高速移動ゆえの――慢心だろうな)
ツーは速度に関して、絶対的な自信を持っている。
そこに付け入る隙があるはずだ。
( ,,゚Д゚)「ならば、こうさせてもらおうか!」
(*゚∀゚)「!」
ギコが、轟音を立てて真上へ飛んだ。
しかしツーは追わない。
空中には蹴る対象が無いからだ。
下で姿を見せぬよう、高速で動き回ることしか出来ない。
ギコは刃を下方へ向け、刀身に対する引力を最大に設定する。
そこから発生するのは暴力的な落下という加速だ。
内臓が下から圧迫されるような錯覚を受けながら、ギコは歯噛みしつつも柄を離さない。
目指すは地面――その直下と周囲。
( ,,゚Д゚)「ッ!!」
もはや落下とは思えないほどの一撃が地面に突き立つ。
轟音と共に地面が揺れ、そしてヒビが入っていき――
破砕。
ギコを中心とした半径数十メートルの地面は、波を起こすかのように放射線状に割れていった。
- (*゚∀゚)「!?」
その被害を一番被ったのはツー。
ガクン、とその姿勢が崩れた。
ツーのギルミルキルは地を蹴った後、地面との一定の角度でしか一直線に移動出来ない。
突如として割れた地面に足を取られ、そのスピードが落ちたのだ。
( ,,゚Д゚)「そこか」
一瞬で巨剣の重量を軽くし、疾走。
対するツーは
(*゚∀゚)「!」
高速移動しようとするが、崩れた地面に足をとられ上手くいかない。
むしろこのブーツでは普通の走行以下の性能しか出せなくなっていた。
(*゚∀゚)「くそっ! 使えないウェポンだねぇ!」
( ,,゚Д゚)「さぁ、チェックメイトだ」
(*゚∀゚)「違うね! これからさ!」
逃げ切れないと悟ったのか、複数のナイフを取り出しながらツーが叫ぶ。
(*゚∀゚)「これでも喰らいな!」
ヒュッ、という風切音と共に計八本の投げナイフがギコの元へ向かう。
対するギコはグラニードを横に構え、盾にしつつ突進。
金属音が連続で響くが、全てのナイフは刀身に当たった途端に砕けていった。
- ( ,,゚Д゚)「無駄だ」
(*゚∀゚)「ははは! はははははは!!」
ツーは狂ったかのように高笑いを発し――
(*゚∀゚)「『OVER ZENITH』……!」
(;,,゚Д゚)「!?」
突如として口から発せられた限界突破命令。
一瞬、ギコは躊躇うような表情をしたが、しかし巨剣をツーに向かって振り下ろした。
硬い物と硬い物がぶつかり合う激音が響き――
(;,,゚Д゚)「なっ――」
巨剣が阻まれていた。
ツーの、その長い足によって。
その足を包むは、先ほどまでの赤いロングブーツではなかった。
禍々しいほどに刃をいたる所から突き出させた、血のような真っ赤なブーツ。
ギコは、本能的に危険を察知、すぐさまバックステップで距離をとる。
しかしツーは追わない。
(;,,゚Д゚)「…………」
離れて見ても、ツーのその足は禍々しさを薄めることはない。
吐き気、悪寒を感じるほどだ。
- (*゚∀゚)「あはははは、ギルミルキルがまだ死ぬなってさ!
まだ自分に血を見せろって言ってるよ!
少し見捨てられたと思ったけどさ、やっぱアイツも私と同類なんだ!」
( ,,゚Д゚)「それで限界突破した姿がそれか。
随分とお前のウェポンは性格が悪いらしい……」
(*゚∀゚)「ウェポンは似た者に惹かれ合う!
っつーことは、私も性格最悪って感じー?」
( ,,゚Д゚)「言うまでもない」
(*゚∀゚)「あはははははははははははははははは!!」
ひとしきり笑った彼女は、ふと声を閉じた。
(*゚∀゚)「……負ける気がしないねぇ」
( ,,゚Д゚)「奇遇だな、俺もだ」
瞬間、ツーの姿が掻き消える。
( ,,゚Д゚)「また高速移動……たまには他の芸でも見せてみろ」
(*゚∀゚)「んじゃ、一番ツー! いっきまーす!」
見る。
上空だ。
- ( ,,゚Д゚)「馬鹿か……お前は空では高速移動が不可能なはずだろうに」
小さな呟き。
それが彼女の耳に入ったかは解らないが
(*゚∀゚)「無問題! ノープロブレム!」
空中で叫びながら、彼女は右足を高く上げた。
高速で下ろす。
その動作によって発生するのは、大気の切り裂きだ。
しかしギルミルキルは、切り裂き以上の事象を求めた。
その真空となった空間に周囲の大気を大量に取り込み、透明の刃を生成する。
瞬間、発射。
( ,,゚Д゚)「!」
己の周りの空気が逃げていく感覚。
来る。
見えないが、しかし来る。
咄嗟に回避。
( ,,゚Д゚)「これは……」
己の立っていた位置が切り裂かれていた。
真一文字に、そして深く。
- ツーが地上へ降り立ちながら
(*゚∀゚)「あははは! これ、おっもしろー! ナイフなんてもういらないや!」
( ,,゚Д゚)「お前には過ぎた玩具だ」
(*゚∀゚)「あのね……さっきからウザイよ、アンタ?
こっちは限界突破状態だよ?
ただの太った剣に何が出来るってのさ」
( ,,゚Д゚)「その趣味の悪い化け物の足で何が出来る?」
(*゚∀゚)「人を殺すこと」
( ,,゚Д゚)「ならば言おうか……俺は、この剣で人を護る」
(*゚∀゚)「何故さ? 自分のため? 金のため? 地位のため? 自己満足?」
( ,,゚Д゚)「言う必要は無い」
(*゚∀゚)「あはは、硬いっていうかイタいっていうか!
アンタみたいな奴は死んだ方が幸せだよ!」
( ,,゚Д゚)「悪いが死ぬことは許されない身でな。
俺には護る人がいて、決着を付けなければならない男もいる」
だから
( ,,゚Д゚)「こんな場所で、お前のような奴にやられるわけにはいかない……!」
- 言葉と共に地を蹴る。
速度は高速。
しかし――
(*゚∀゚)「あははははは!」
ツーの姿が掻き消える。
速度は超高速だ。
圧倒的な速度差。
しかしギコはうろたえず、そして諦めもしない。
勝機は、どんな相手だろうとあるのだ。
敗北した者は、それを信じられなかったか、見つけられなかったかの二種類。
己は違う。
勝利を――
( ,,゚Д゚)「必ずこの手に――」
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