- 第九話 『依存はただの停滞だ』
クルト博士の元・研究所。
夜の闇に閉ざされ、光さえ届かない空間に、二人の男女が立っている。
空間の名は『クルト博士の私室』。
川 ゚ -゚)「ここ、か」
( ´_ゝ`)「ここしかあるまい」
二人の前には本棚があった。
他の棚が全て倒れているのに、この本棚だけは倒れずその姿を保っている。
怪しいと思わない方がおかしい。
おそらくは隠し扉なのだろうが、肝心の開け方が解らない。
だが――
( ´_ゝ`)「こういう扉は、本がキーになってるパターンが多いぞ」
川 ゚ -゚)「そういうものか。
だとすれば、どの本だろうか」
( ´_ゝ`)「クルト博士の作りし隠し扉。
それはつまりクルト博士とその密接な関係者くらいしか
入ることの出来ない空間だろう」
- 川 ゚ -゚)「それで?」
( ´_ゝ`)「だとすれば、そこらへんにある汎用な本をキーにするはずがない」
川 ゚ -゚)「と、なると――」
( ´_ゝ`)「たとえば、これだ」
兄者が、奥に設置された机に向かう。
おそらくはクルト博士が使っていたと思われる机だ。
机上にはいくつかの書物と書類、そして文房具が散らばっている。
その中の一つを兄者は持ってきた。
川 ゚ -゚)「それは?」
彼の右手に握られていたのは、少し分厚いハードカバーの本だ。
全体は赤く、金と銀の装飾が施されている。
( ´_ゝ`)「……クルト博士の日記帳だよ」
川 ゚ -゚)「なるほど……確かに近しい者しか触れることさえ出来ぬキーだな」
うむ、と言いながら兄者は本棚へ向かう。
- 不自然に空いているスペースにそれを入れ込んだ。
カチリ、と音が鳴る。
川 ゚ -゚)「む」
( ´_ゝ`)「ぬ」
声を発したのは同時。
そして本棚が動き始めたのも同時。
ゴゴ、と重い音を立てながら、本棚が二つに割れるように開いていく。
川 ゚ -゚)「これは――」
階段だ。
向かう先は地下。
光が無いため、数メートル先は闇に閉ざされ奥を確認することは出来ない。
が、その闇の奥から得体の知れない何かを感じる。
川 ゚ -゚)「……行くか」
( ´_ゝ`)「OK」
二人は同時に足を進める。
男女の身は、何も見えぬ闇の中へ吸い込まれるように消えていった。
- 風が鳴る。
- 月が、星が光り輝き、草原という戦場を照らす。
月下に人影。
対峙するは二人の男。
片方は青い巨剣を肩に担う、茶色のロングコートを着込んだ男。
片方はその手をポケットに突っ込んだ、藍色のスーツを着た男。
二人の視線は、種類は違えど鋭く冷えている。
動きは無い。
互いの出方を見るかのように、視線だけを絡ませる。
- ( ,,゚Д゚)「やる前に、一つ言っておく」
( ・∀・)「何かね?」
それは、かつてブーンにも放った言葉。
( ,,゚Д゚)「死んでも恨むなよ」
途端、状況が動く。
ギコが地を蹴り、男の元へ疾駆を開始した。
対する男は不敵な笑みを浮かべたまま微動だにしない。
距離が縮まる。
二人の猛獣が接触――
( ,,゚Д゚)「!」
しなかった。
スーツの男が、大きなステップで後退する。
男がいた空間を巨剣が薙いだ。
( ・∀・)「やはり、目の前にすると怖いね……グラニードと君は」
( ,,゚Д゚)「戯言を――」
- ( ・∀・)「次は私の番だ」
ギコの言葉を遮るように、男が宣言する。
動きは同時。
バックステップした衝撃を地面に流し、反動で前へ飛び出した。
対するギコは巨剣を振りかぶり、迎撃の姿勢。
男は右手をポケットから出し、握る。
接触。
空気を弾くような音が響いた。
ギコの頬に、男の拳が直撃している。
が、ギコは巨剣を振るってはいなかった。
( ・∀・)「その心意気、感嘆に値するよ」
ヒュッと風を切りながら背後の空間へ飛ぶ男。
その足先を、横薙ぎに巨剣が通り過ぎていく。
( ・∀・)「打撃を入れ、安心したところでカウンターかね。
解っていても実行することは難しい……流石はギコ君だ」
言いながら着地。
- 頬を殴られたギコは、血の混ざった唾を吐き捨てながら
( ,,゚Д゚)「お喋りが過ぎるぞ」
( ・∀・)「勘違いしないたまえよ。
私はこの戦いを楽しんでいるのだから」
( ,,゚Д゚)「侮辱か」
( ・∀・)「まさか……むしろ賛美だよ」
言葉と共に、男が再度ギコの元へ向かう。
その速度は高速。
身を低くしながら、獣の如く走る。
今度は両手を解放し、しかし握り締めていた。
( ・∀・)「ふっ!」
腹部を狙った打撃だ。
しかし回避される。
続いて、ギコのカウンターが――
- ( ,,゚Д゚)「!?」
行動を開始する前に、胸部に打撃。
出鼻を挫かれる。
( ・∀・)「君は解っていない」
連打を続けながら、男は語る。
( ・∀・)「確かに君のグラニードは強力だがね。
攻撃の回転数は拳の方が圧倒的に勝るのだよ」
打突。
熊手。
裏拳。
肘打。
四連撃が、ギコの身体の各部にめり込む。
- ( ,,゚Д゚)「ッ……!」
思わず声が出かけるが、歯を噛み押し留めた。
その際に生じた身体の力を、剣先に篭める。
振り下ろす。
動きは相手を脳天から両断する唐竹割りだ。
( ・∀・)「遅いよ?」
が、横に軽くステップされるだけで回避される。
直後、地面に巨剣が叩き込まれた。
刀身の三分の一程度が地にめり込み、一瞬ギコの動きが硬くなる。
( ,,゚Д゚)「ちっ!」
動きが取れないギコに、今度は蹴りを混ぜた嵐のような打撃が襲い掛かった。
音は一つ。
だが、打の数は七つ。
横からまともに喰らったギコは、剣を地から抜きながらも軽く吹き飛んだ。
宙で体勢を整え、着地。
- 顔を上げれば――
( ・∀・)「どうしたのかね? 君らしくもない」
男が真正面から迫る。
ギコは巨剣を正面に構え、盾代わりに構えた。
ウェポンは存在自体が非常に強力だ。
生身で殴れば、その皮膚は裂け、最悪骨が砕ける。
しかし――
キン、という金属音が響いた。
疑問に思う間もなく、構えた巨剣の位置が横にズラされる。
視界から外れていく刀身の影からは、笑みを浮かべた男の顔。
巨剣の刀身に触れているのは、左手にはめた指輪だった。
( ,,゚Д゚)(指輪を用いた接触――!?)
( ・∀・)「言ったろう? 能力にとらわれていては、それはただの停滞だと」
言葉と共に、右半身を前にした男が蹴りを放った。
足刀。
言葉の通り、鋭く貫く強力な足技だ。
それがギコの腹に当てられた。
一瞬、二人の動きが止まる。
- ( ・∀・)「破ッ!!」
男が気合の声を発した瞬間、畳まれていた足が伸び切り、ギコの内臓を圧迫する。
貫く衝撃はギコの身体を蹂躙し、遂には背中から抜けていった。
轟、という強烈な波動の音。
男が足を引く。
後に残るは、背を曲げ、虚ろな表情で地を見るギコだ。
一時的な意識の剥奪という、強力な一撃。
それがギコの意識と動きを完全に失わせた。
( ・∀・)「停滞した者に強さは得られないよ」
更に衝撃。
ギコの下げられた顎先に、真下からの男のつま先が直撃した。
そのまま蹴り上げられる。
ギコの身体は、弾け飛ぶように身を仰け反らせながら飛んだ。
- 放物線を描くように飛ぶギコに対して、男が背を向ける。
( ・∀・)「君の敗因は……そのウェポンに依存する慢心と停滞。
そして――」
ギコの身体が地面に直撃する音と共に
( ・∀・)「私を、調子に乗らせたことだ」
果たして聞こえなかったのか、それとも耳には入ったが意識には届かなかったのか。
ギコはそれに答えることも反論もすることも無く、落ちたままの姿勢でピクリとも動かない。
(;^ω^)「ギ、ギコさん!?」
あれほどの強さを誇ったギコが、何も出来ずに沈んだ。
動きを一通り見ていたが、あの男の格闘能力はとんでもない。
おそらくブーンでも一撃さえ入れられず、そして一撃でも防げないだろう。
( ・∀・)「ウェポンなんて使わなくても、イケるところまではイケるのだよ」
両手を軽く振りながら、男は淡々と語る。
その息は乱れてさえいない。
- (;'A`)「と、とんでもねぇぞ、アイツ……」
ドクオ
が声を震わせながら呟く。
あれほどの男が、次に自分達に牙を剥いたら?
そう考えただけで、ドクオは勝手に身体が震え始めた。
( ・∀・)「さて、と」
男は背後に振り返る。
ギコの姿勢は先ほどと変わらない。
うつ伏せに、身を丸くして倒れている。
( ・∀・)「結果は呆気なかったが、事実は事実だ。
1st-W・グラニード……返してもらおうか」
ザッ、ザッ、と短く生えた草を踏みしめる音。
倒れた巨剣の剣士を真下に見据え、彼は少し悲しそうな表情を浮かべる。
( ・∀・)「能力にとらわれた停滞、か。
君がまさかそうなるとは思わなかったのだがね」
その目が見るは、ギコの右手の中指にはめられた青い指輪だ。
手を伸ばす。
- ( ・∀・)「ん?」
その手を止める動きがあった。
右方向を見れば、しぃの手が男の腕を止めている。
(*゚ー゚)「やめて……!」
( ・∀・)「何かね、君は」
(*゚ー゚)「これ以上、これ以上ギコ君を苦しめないで!」
( ・∀・)「はは……まるで私が悪役のようだね、これは」
(*゚ー゚)「それ以外に何があるの!?」
しぃは涙が浮かんだ目で、男を睨みつける。
( ・∀・)「ならば言わせてもらおうか。
本当の悪はね……ギコ君なんだよ」
(*゚ー゚)「え……」
( ・∀・)「何も聞かされてはいないのだね……哀れだよ、君は本当に哀れだ」
- その言葉に、しぃが顔を怒りに染める。
華奢な両手で男を突き飛ばした。
(*゚ー゚)「ふざけないでよ!
ギコ君が……ギコ君が悪なわけないじゃない!」
押された男はフラリとよろめき、しぃと少し距離をとった。
( ・∀・)「では問おうかね。
君はギコ君の何を知っていると?」
(*゚ー゚)「何をって――」
( ・∀・)「知らぬなら教えよう。
私が構える会社がある都市で、強盗などの凶悪犯罪――
更には殺人を犯したギコ君を拾ったのが私だ」
(*゚ー゚)「ッ……!?」
( ・∀・)「彼はいわゆる死刑囚というヤツでね」
- ニューソクとは異なる、しかし巨大な都市。
その郊外にあるスラム街でギコは育つ。
両親は最初からいなかった。
捨てられたからか、そうでないのか、今になっては解らない。
その汚い世界で育ったギコ。
青年といわれる歳になる頃には、その名を知らぬ者はいないというほどの大量の犯罪を犯していた。
強盗、窃盗、脅迫、誘拐、暴行、殺人……金になることなら何でもやった。
しかしその犯罪劇も幕を閉じることとなる。
仲間のミスで、己だけ警察に捕まってしまったのだ。
裁判は異例な速度で進んでいき、言うまでもなく死刑が確定。
死を待つだけの牢獄での毎日が始まった。
それに目をつけたのが、スーツの男だった。
男の正体は『フィーデルト・コーポレーション』社長。
営業内容は武力関係。
ヤクザやマフィアとは違う、しかし武力を主とした正義を振りかざす会社。
警察からの要請があれば兵を貸し出し、軍から依頼があれば武器を売る。
スーツの男は、ギコのその戦闘力……そして行動力を買う。
そして初めて出会ったのは牢屋越しだった。
- ( ・∀・)「やぁ、君がギコ君かね」
( ,,゚Д゚)「…………」
( ・∀・)「外に出たくないかね? ん?」
( ,,゚Д゚)「……別に」
( ・∀・)「正直な返事をありがとう……でもぶっちゃけると、私は君という人材が欲しいんだ」
( ,,゚Д゚)「……何故?」
( ・∀・)「我らは正義の名の元に、武力という裁きの鉄槌を下す集団でね。
君にぴったりな仕事がいくつかあるんだが、どうだね?」
ギコは少し黙り、そして重々しく口を開いた。
( ,,゚Д゚)「そこは……自由か?」
( ・∀・)「心は皆、平等に自由だと思うのだが? ん?」
( ,,゚Д゚)「……解った」
後は金が解決した。
巨大な都市ほど、汚い政治家や警察官は多い。
死刑囚のギコを引き取るのに、さほど苦労は無かった。
- (*゚ー゚)「そんな……」
しぃが愕然とした表情で男を見る。
( ・∀・)「彼がね……私の会社へ入って、初めてしたことは何だと思う?」
(*゚ー゚)「…………」
( ・∀・)「かつての仲間の始末だった」
己が捕まる原因となった元・仲間。
ミスとはいえ、当時のギコにはそんな分別や良心など皆無だった。
( ・∀・)「その後スッキリしたのか、彼は順調に仕事をこなしていったよ」
しかし
( ・∀・)「彼の反抗期は割と早めに来てしまってね」
- クルト博士が死亡したというニュースを聞いたスーツの男は
その遺産とも呼べるウェポンをいち早く集め始めた。
理由は、単純な興味。
武力を主とする会社の社長としては、そのウェポンという武器に興味があったのだ。
金と人脈を巧みに利用し、男の手に入ったのは1st-W『グラニード』。
だが、グラニードは男を主とは認めなかった。
兵士全員に試したところ、適合したのは意外にもギコだった。
男は喜ぶ。
ウェポンを間近で見れ、しかもそれが己の部下にいることに。
だが、その歓喜の時間も長くは続かなかった。
ギコが、グラニードを持って脱走したのだ。
理由は解らない。
彼は、死ぬはずだったところを助けた男を裏切り、1st-Wを持って逃げた。
一度は追い詰めるところまでいったのだが、一瞬の隙を突かれて逃げられる。
それが男の言う、一度目の対峙だ。
- 月下。
スーツを着た男は、淡々と過去を語っていく。
( ・∀・)「あの時の、そしてその後の彼に何があったかは知らないが
随分と幸せにやっているようだね?」
(*゚ー゚)「嘘よ……ギコ君は、そんなことしない!」
( ・∀・)「何故、そうと言える?」
(*゚ー゚)「だって、だって――」
しぃが理由を告げようとしたときだ。
( ・∀・)「!」
男は気付いた。
しぃの背後の空間。
ギコの姿が、無い。
一瞬我が目を疑う男。
が、その疑いは次の瞬間に晴れることとなった。
- 「死ね」
声が頭上から聞こえた。
首を上げる時間も煩わしい。
男は一瞬でバックステップを踏んだ。
直後。
( ・∀・)「ッ!」
男が元いた位置に、青い稲妻とも言える一撃が降り立った。
壊と破と砕が混ざった凄まじい音、そして衝撃波。
その吹き荒れるような衝撃に、男としぃは地にしがみつく様に耐える。
( ・∀・)「今のは――!」
前方に巻き上がった砂煙を見る。
誰だ?
問うまでもなく――
- ( ,,゚Д゚)「…………」
青い巨剣を肩に担いだ、ギコだった。
先ほどと変わらない姿で――
( ・∀・)(いや、あれは……?)
青い巨剣。
その刀身の周囲が歪んでいる。
まるで陽炎のようだ。
( ・∀・)「しかし……今のは何かね? 初めて見る一撃だったが」
( ,,゚Д゚)「悪いが話す余裕も、意思もない」
言いながらギコが接近してくる。
男は迎え撃つように構えた。
横から、薙ぐような一撃が迫る。
刀身の長さと速度から、男は回避は難しいと判断。
ならば方法は一つ。
左手に装着した指輪。
それを向かってくる青い刃に向かって突き出した。
- 金属音、そして衝撃。
押さえた、と男は判断。
巨剣の弱点は、その重量ゆえの遅さだ。
つまり一撃をかわすか防御すれば、あとはカウンターを入れ放題。
しかし――
( ・∀・)「!?」
左手で刃を押さえ、右手で打撃を入れようとした瞬間に気付く。
ギコが、ギコの手が、ギコの振りかぶった姿勢が、先ほどとは違い全て『逆』を向いていることに。
見れば左手の指輪に既に刃は無く、更にギコの再攻撃は始まっていた。
来る。
青い斬撃。
( ・∀・)「ッ!」
青の線がスーツの胸部を切り裂き、その奥にある皮膚をも狙う。
しかし判断は男が早かった。
カウンターを入れようとしていた右腕を無理矢理引き、その反動で背後へ身を投げたのだ。
まさにギリギリというタイミングで、青い刃が胸部の皮膚をかする。
砂埃を上げながら後退。
- ( ・∀・)「その速度……」
ふと頬を冷や汗が伝う。
見れば、胸の位置で真一文字にスーツが裂けていた。
少しでも遅ければ、おそらく胸部の皮膚を切り裂かれ、心臓や諸々をぶちまけていただろう。
( ,,゚Д゚)「これが、何だか解るか?」
ギコが青い巨剣を片手で振り回す。
陽炎のようなものが追従するようについていく。
そこで男は気付いた。
( ・∀・)「その陽炎……熱によるものではないな。
思うに重力や引力関係だね?」
( ,,゚Д゚)「ご名答」
ブオン、と巨剣を風車の如く眼前で回転させる。
( ,,゚Д゚)「グラニードの能力は『刀身に対する引力操作』。
言い換えるならば、引力強弱を自在変更可、か」
- ( ,,゚Д゚)「殺れると思ったんだがな……。
最初の攻防で、この巨剣が重く攻撃が遅いという事を
貴様の脳に叩き込んだつもりだったが」
( ・∀・)「なるほどね……先ほどの頭上からの攻撃は
刀身に対する引力をプラス化し、落下威力を上げた一撃。
そしてその後の攻撃は、逆に刀身に対する引力をマイナス化して刀身を軽くし
私の反撃よりも速く剣を振れた、か」
( ・∀・)「正直、危なかったよ……見たまえ、スーツが破れてしまった」
言いながら、男は左手を掲げる。
黄色の閃光。
現われたのは薄い黄色の長い柄だ。
先端に、鉄の塊ともいえる頭部が付属する。
その形は、ハンマーもしくは鉄槌と呼ばれるものだった。
ハンマーの柄の中間部分を持ち、フォン、という高い音を立てながら回転していく。
そしてピタリ、とその動きを止めた。
( ・∀・)「使わせてもらうよ……『2nd-W・ロステック』を」
( ,,゚Д゚)「構わん。 そうでもしないと貴様に勝ちはない」
- 対峙している二人とは少し離れた場所。
先ほどのギコの反撃に、ブーン達は開いた口が塞がらなかった。
ギコの過去もそうだが、グラニードのその能力の使い勝手の良さに驚愕したのだ。
(;^ω^)「な、なんか僕のクレティウスがとても貧弱に見えるお」
(;'A`)「お前なんてまだいいよ。
俺のガロンなんて、ただ光の弾撃つだけだぜ?」
理不尽だー、と二人で同時に声をあげた。
そんな二人に、ギコが声を掛ける。
( ,,゚Д゚)「お前ら、見ておけよ」
( ^ω^)「お?」
( ,,゚Д゚)「これが俺の『OVER ZENITH』だ」
- 瞬間、ギコが真上に高く飛んだ。
巨剣を振りかぶり、叫ぶ。
( ,,゚Д゚)「『OVER ZENITH』……!!」
途端、青い光が巨剣を包む。
その光の強さは、発動時の発光とは比べ物にならない。
( ・∀・)「見せてくれたまえ……君の力を!」
モララーが地上で迎撃の姿勢を取る。
( ,,゚Д゚)「おおおおぉぉぉぉあああぁぁぁ!!」
1st-W『グラニード』。
誇り高きその青の巨剣が、吠えた。
大気が震える。
『OVER ZENITH』とは、限界突破の意。
限界を超えた攻撃が月下で発動する。
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