アメリカン・ユートピア | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

アメリカン・ユートピア


2020年作品/アメリカ/107分

監督 スパイク・リー

出演 デビッド・バーン


11月21日(日)、下高井戸シネマにて、18時30分の回を鑑賞しました。


元「トーキング・ヘッズ」のフロントマンでグラミー賞受賞アーティストのデビッド・バーンが2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原案に作られたブロードウェイのショーを、「ブラック・クランズマン」のスパイク・リー監督が映画として再構築(以上、映画.comからの引用)、という作品です。


最初にお断りしておきますと、この手のジャンルに関しては全く疎くて、〝トーキング・ヘッズ〟と言われましてもその名前は知ってはいるものの、聴いたことのある曲といえば〝Road to Nowhere〟だけです。それだけ、この曲は有名なんでしょうね。そんな私ですが、この映画は素晴らしかったです。友達に引っ張られて行ったコンサートで衝撃を受けたという感じかなと。




《感想です》


使用されている楽曲の素晴らしさは言うに及ばず、極めてシンプルな舞台装置と衣装で、スタンドアローンからマーチングバンドへと発展していくショーの構成。平面的な舞台を俯瞰で見せる演者たちの幾何学的な動きや創られた模様の美しさ。そして、人類の進化から始まって、多様性の大切さと人を快く受け入れることの難しさから人種差別問題へと繋げていくストーリー。


最終的にはデビッド・バーンが(トランプの再選を控えた)大統領選挙の投票へ行こう!とオーディエンスに呼びかける大変ポリティカルなショーなんですね。タイトルは〝アメリカン・ユートピア〟ですが、今のアメリカは〝ディストピア〟だと言わんばかりの内容でした。でも、自分たちは変われるし、変えていかなければならないという前向きな気持ちにも溢れています。


特に〝Everybody’s Coming to My House〟をして、自分が歌うと〝来てほしくない〟というニュアンスになるのに、高校生たちが歌ったものだと〝どうぞ来てください〟という感じになるとコメントするところが興味深かったです。そして、そのバージョンがラストに流れるのですが、ここはキャメラが劇場から外へ出ることとの相乗効果で実に清々しく世界の変化を感じさせました。


デビッド・バーン、69歳とは思えないかっこよさでした。スコットランドからアメリカに移住しており、今回は彼以外の12人のメンバーもダイバーシティを意識した選定になっています。ラストに会場を練り歩くなかでオーディエンスを含めた全ての人たちがインクルージョンされる世界を見せてくれ、この劇場そのもので地球の、世界のあるべき姿を表現してみせていました。


監督のスパイク・リーの色もあるのでしょうが、人種問題だけでなく、コロナ禍という分断された社会のなかで、〝つながる〟ことを意識したパフォーマンス、メッセージが素晴らしかったです。正直、聴いたことのない曲ばかりでしたが、楽曲や歌詞そのものがドラマなので、全く退屈することがなかったです。やっぱり音楽の持つパワーって凄いなと改めて実感されられました。


今年も何本かのミュージカル映画を観ましたが、ライブビューイングっぽく系統は異なるものの、本作はいちばん観ておくべき作品だと思いました。


✳︎デビッド・バーンは私のなかではトーキング・ヘッズより、「ラストエンペラー」の音楽で坂本龍一さんとともにアカデミー賞を獲った方ですね。



トシのオススメ度: 5

5 必見です!!
4 オススメです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


アメリカン・ユートピア、の詳細はこちら: 映画.com


この項、終わり。