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ローズの秘密の頁/ページ

2016年作品/アイルランド/108分
監督 ジム・シェリダン
出演 ルーニー・マーラ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ

2月11日(日)、新宿武蔵野館のスクリーン3で、9時45分の回を鑑賞しました。

取り壊しが決まった精神病院から転院する患者たちを診察するため、病院を訪れた精神科医のスティーブン・グリーンは、赤ん坊殺しの罪で精神障害犯罪者として40年もの間病院に収容されている老女ローズ・F・クリアを看ることに。自分の名が「ローズ・マクナリティ」であると訴え続ける彼女は、赤ん坊殺しの罪を否認し続け、大切にしている聖書の中に何十年にもわたって密かに日記を書きつづっていた。興味を抱いたグリーン医師に、彼女は半世紀前からの自分の人生を語り始める(以上、映画.com)、という物語です。

アイルランドの人気作家セバスチャン・バリーによる、英国の権威ある文学賞コスタ賞を受賞した同名小説を、「マイ・レフトフット(89)」「父の祈りを(93)」のジム・シェルダンが映画化。ドラゴン・タトゥーの女(11)」「キャロル(15)」のルーニー・マーラが主演を務めます。

この映画、いつも私が拝読し勉強させていただいています信頼をおく女性ブロガー様お二人が揃って高得点をつけておられた作品です。これは観なければ!と劇場へ足を運んだ次第です。で、やはり観に行ってよかったです。これは、基本、美男美女によるちょっと苦いメロドラマなのですね。

アイルランドを舞台にした大河メロドラマ

物語は赤ん坊殺しの罪で精神病院に40年間入院しているローズの回想形式になっています。彼女は戦争中に疎開先のアイルランドの田舎町でマイケル・マクナルティと恋に落ちるのですが、彼は英国軍の戦闘機乗りとして戦争に参加。彼の帰還を待ちながら暮らす彼女に、やがて神父が心の内を打ち明けてきます。

この作品の背景には、第二次世界大戦中の英国と中立を保つアイルランドの二国間の微妙な関係や、プロテスタントとカトリックという宗派の違いが人間関係へ及ぼす影響が取り込まれていて、それがドラマを動かして行くのですね。この状況で、運命に翻弄されるローズの人生の悲劇が見どころなわけです。

アイルランドが舞台で、同国とイギリスとの対立を背景にした恋愛映画といえば、私にとってはデヴィッド・リーンの「ライアンの娘(70)」が頭に浮かびます。主人公の女性が、聖職者(「ライアンの娘」では教師)とイギリス軍の将校との間で翻弄されるという展開が、何とはなしに似ている気もします。

▼アイルランドの海岸線の風景がとても美しく心を掴まれます
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田舎では目立つローズの美しさと、彼女をめぐる2人の男性

ローズを演じるのが、ルーニー・マーラで、彼女のか弱さと意思の強さを感じさせる青い瞳に吸い込まれそうになります。映画では、叔母が経営する禁酒ホテルで働くローズに多くの男性が言いよって来ます。ベルファストからやってきた彼女の洗練された美しさに神父までも魅了されてしまうというのも分かる気がします。

しかし、マイケルのいなくなったあと、ローズに近づいてくる男たちとゴーント神父の間に確執がおこり、結局ローズは町にいられなくなり、彼女は叔母の指示で森のあばら屋に移されてしまいます。しかし、そんな時、マイケルの操縦する戦闘機が彼女の住む森に墜落するのです。ローズは、マイケルを助け出し、家に匿い治療をします。

ローズとマイケルが森の奥深くで二人だけのの生活を送るここからの一連の場面が、この映画のメロドラマとしての白眉ではないかと思います。二人がバイクに乗って海岸線を走る姿。そして、葉巻のシールで作った指輪であげる結婚式。しかし、幸せな日々も束の間、ゴーント神父と町の若者たちがマイケルを狙い、家にやってきます。

▼神父まで虜にしてしまう魔性の魅力を放つローズ
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尺が足りず、十分に描ききれていない部分がもったいない

さて、マイケルと引き離されたローズはゴーント神父から色情狂の烙印を押されて精神病院に入れられてしまいます。しかし、彼女の身体には既にマイケルの子供が宿っており、彼女は病院で子供を産み、育てる決意をするのですがー。ここから先の展開はこれから映画をご覧になる方のために書けません。ぜひ映画館でご確認ください。

この作品、メロドラマとして息を呑むいい場面がたくさん散りばめられています。海岸にいるローズの頭上をマイケルが操縦する戦闘機が頭をかすめるように飛来し飛び去る場面とか最高に美しいです。しかし、色んな点で疑問もあって、按配がよくないのですね。この場面も、マイケルがなぜここを飛んでいるのかがよく分かりません。

同じようにマイケルの戦闘機がいい具合にローズのいる森に墜落するのも偶然にしては出来過ぎのような気がします。また、ローズとマイケルとの間で三角関係を作るゴーント神父については、やはり神父としての立場を超えてローズに魅かれる苦悩など彼側の視点が欲しいところです。この映画だと敵役の域を出ない感じなんですね。

▼医師と看護師に聖書に綴った事実を語り出すローズ
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原作は未読ですが、もしかすると、そういう気になるところがきちんと描けているのかもしれないですね。1時間50分というのは、この作品では少し短かったのではないでしょうか。それでも、本作がなかなかに見応えがあるのは、3人の主役のうまさと絵作りの良さ、そして音楽ではないかと思います。

ルーニー・マーラはもちろんですが、マイケルを演じたジャック・レイナーの包容力、ゴーント神父を演じたテオ・ジェームズの目力にはメロドラマにふさわしい説得力があり、この二人の描き分けがうまく行っていたように思います。そして、年老いたローズを演じたヴァネッサ・レッドグレーヴも。

みなさんお書きになっているように、タイトルからしてミステリーっぽくはあるのですが、そこの面白さは底が浅く、やはりこれは男女のメロドラマとして観るべきものでしょう。全編を通して流れるベートーベンの〝月光〟の調べが切なく、きっと〝あの夜〟も、海を照らすように月光が輝いていたのでしょうね。

海岸でマイケルと戯れて写真を撮るふりをするローズの屈託のない笑顔。彼女がその後に歩んだ過酷な40年の人生に思いを馳せ、そして最後の最後に神様がくれたご褒美に、男性である私も思わず目頭が熱くなりました。

オススメ度: 4
5 必見です
4 お薦めです
3 興味があればぜひ
2 もう一つです
1 私はお薦めしません


この項、終わり。