人間の才能が開花するのは、何によってでしょう?人生の成功者とか、失敗者とか、分かったようなことを語る人がいますが、それらは、お金を稼ぐとか、立身出世するとか、一定の価値観に偏っての評価によるものが多いようです。

成功譚において、素材と環境というテーマがあります。どうやら、素材だけでも環境だけでも、成功者になれるわけではなようです。人間の能力は、その素材と環境の掛け算だと言う人もいます。それら以外にも、「運」の要素が大きいと言う人もいます。いずれにしても、成功の要因は一つではないということでしょう。

 

私は、兵庫県立芸術文化センターの周りにある小さな杜(もり)の中で、木漏れ日に反射する、さまざまな緑を見ながら、素材と環境について考えていました。もちろん、素材とは樹の種類、環境とは太陽光(複雑に反射もしています)の当たり方です。

そうです。樹々の緑が、色々な種類に見えるのは、それぞれの木の種類と、光の当たり方によるものでした。それらが、多様な緑を演出してくれていたのです。素材と環境の掛け算こそ、多様な美の演出者でした。

 

そう考えると、きっと人間も、素材と環境の掛け算によって、何色かは分かりませんが、輝いて見えているに違いありません。杜の中にある緑が、どれをとっても素晴らしいように、すべての人間が煌(きらめ)いているのだろうなと思えたのです。

そうなると、成功者や失敗者という評価は意味をなさなくなります。存在そのものが輝いているのですから、いかなる色合いであるかということは、評価とは異次元の世界です。人生とは、もともと、そういうものだったではありませんか。

 

そんな、当たり前のことに気づいた「緑の研究」でした。