私が黒田節を生まれて初めて聞いたのは、まだ小学校に

行く前だったと思います。機嫌のいい父が、晩酌をしながら

いきなり唄い始めたのでした。

 幼い私に、何の感興も起こらなかったのは当然のことです。

けれども、いつにない父の酔っぱらった姿は、私には不思議

なこととして印象に残りました。


 小学生になって、ふざけることの面白さに酔うことを覚えた

私は、栃錦や若乃花の土俵入りや、巨人にいた宮本外野手

のバッティングを真似たりするようになりました。

 その持ちネタの一つに黒田節があったのです。適当に踊り

を振り付けると、家族の中では受けました。ただ、そのような

時期は、いつの間にか過ぎ去り、黒田節も、私の記憶の隅に

置き去りにされていたのです。


 この記憶が甦ったのは、少し前に参席した甥の結婚式で、

黒田節の舞が披露されたからです。結婚式はもちろんのこと、

酒席においても、この歌は、私には縁がありませんでした。

 さすがに雅楽がルーツになっているだけあって、堂々とした

舞でした。幼き日にふざけていたことを、恥ずかしく思ったこと

は言うまでもありません。


 このようなことを今頃になって思い出したのは、昨夜の深酒

によるものです。久しぶりに味わう、二日酔いの焦燥の中で、

アルコールへの恨み節のつもりでしたが、凛としたエピソード

に、残っていた酔いも醒める思いがしました。


[ご参考①] 黒田節の Wikipedia です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E7%94%B0%E7%AF%80

[ご参考②] 赤坂小梅の黒田節です。

http://www.youtube.com/watch?v=KGD07pTc4C8

[ご参考③] 黒田節の歌詞です


  酒は呑め呑め 呑むならば
  日本(ひのもと)一のこの槍を
  呑みとるほどに 呑むならば
  これぞまことの 黒田武士


  皇御国(すめらみくに)の
  武士(もののふ)は 
  いかなる事をか 勤むべし
  ただ身に持てる 真心を
  君と親とに 尽くすまで


  峰の嵐か 松風か
  尋ぬる人の 琴の音(ね)か
  駒をひかえて 聞く程に
  爪音(つまおと)しるき
  想夫恋(そうぶれん)

 

  君の晴着のお姿を
  寿祝う鶴と亀 
  松竹梅のよろこびを
  幾千代(いくちよ)までも祈るらん