もし政治家なら、国民の半数から無視され、49%から反対
されたなら、たとえ1%の人から愛されたとしても、その人の
政治生命は風前の灯火です。その将来は、暗澹たるものだ
と言わざるを得ないでしょう。
ところが芸術家なら、同じ状況でも将来の評価は、まったく
逆になります。1%の人から愛されることができれば、残りの
つまり、現代日本では人口が減少しつつあるものの、当分
1億人をベースに考えることができると思います。それなら、
1%も支持があれば、書籍やCDなどが100万単位で売れる
ことになるのです。
芸術は本来、経済とは無縁のものであるはずですが、心の
発信をするにも、経済の手から逃れることはできません。です
から芸術家は、自分が創作した作品が、営業の商品であると
いうことにも、思いを及ばさなければならないのです。
けれども芸術家は、自分の作品に経済的な側面があること
を自覚はしていても、目的は心を伝えることです。この目的が
異なるものは、すべて、私は似非芸術だと思っています。
さて白状しますが、この文章は自分を励ますために書いた
ものです。最近、非常に真摯で説得力のある、私の文学的
能力に対する悲観論を示されたり、自分の作品に対しての
自己不満もあったりして、少し意気消沈気味でした。
そのような中で、偶然にも、温かい励ましなどをいただいた
こともあり、前向きになろうと、このようなことを思ったのです。
1%の人に愛されることも、それほど易しくはないのですが。
人から評価されなくても、自分の心を伝えることができるよう
になるのです。これこそ、芸術家の生きる糧なのです。