囲碁に限ったことではありませんが、人生には先を読む

ことが必要になる場面が少なくありません。本当は、必ず

しも先を読まなければならないこともないのですが、先を

読めば、利益を得たり危険を避けたりすることができます。

 もちろん、このような功利的な意味でなく、単に将来への

興味や準備から先を読むこともあります。読みを間違えて

しまうこともあり、読みには読む力が影響します。読む力を

養うには、読む経験が大切です。



 囲碁に実力差があるのは、この、読む力に差があるから

です。囲碁は交互に碁石を置いていくゲームです。自分の

次に相手の順番になりますから、読むときには相手のこと

も考えながら自分の打ち手を考えるのです。

 正確な読みが、勝負の帰趨に関わります。どこまで読み

切れるかも大切ですが、相手の対応による変化も含めて、

一連の流れを読み取ることが肝要なのです。



 面白いことに、読むということにも囲碁と人生との共通点

が見られます。つまり人生には囲碁のような勝敗はありま

せんが、読みの力には、人によって歴然とした差があると

思うのです。

 このことを説明するために、次のような事例を考えました。

友人が自分の傘を誇らしげに語る場面を思い浮かべてくだ

さい。よくあることだと思います。



 「昨日この傘を買ったのだけれど、いくらだったと思う?」



 さて、どのように答えればいいかという問題です。前提と

して、友人が持っていたのと同じ傘が、千円で販売されて

いたことを知っていたものとします。

もちろん、正解はありません。どのように返事しようとも、

全く自由です。ただ、このように友人から問われたときには、

幾通りもの答え方があります。