最近リリースされた新譜から ㊲
今週は引き続き、ヨンのピアノとウリューピン指揮による、フランスのベルエポックを象徴する音楽を集めたCDを鑑賞しました。2枚組CDの2枚目にあたります。メインはナディア・ブーランジェによる、ピアノと管弦楽のための幻想曲。教育者としても20世紀の音楽に大きな影響を与えたナディア・ブーランジェの曲はどんな曲なのでしょう。
【CDについて】
①N.ブーランジェ:ピアノ管弦楽のための幻想曲 (21:19)
②フォーレ:ピアノと管弦楽のための幻想曲 op111 (14:23)
③フォーレ:夢のあとに op7-1(ヨン編によるピアノ独奏版) (2:28)
演奏:ヨン(p)、ウリューピン指揮 ベルリン放送交響楽団
録音:2023年1月3-6日 ベルリン Haus des Rundfunks, Saal 1
CD:19658863302(レーベル:SONY Classical) 2/2CD
【曲と演奏について】
先週に引き続き、ベル・エポックを感じるCDの2枚目です。ナディア・ブーランジェのピアノと管弦楽のための幻想曲は、1912年にピアニストであるプーニョのために作曲されました。ナディア自身は作曲をフォーレに師事しており、30歳になるまでは作曲活動を続けていましたが、卓越した作曲センスを持ち虚弱でもあった妹のリリ・ブーランジェには敵わないという自覚により、6歳年下のリリの死後は作曲の筆は折ってしまったとのこと。その後のナディアの教育者としての活躍は華々しく、著名な門人は数知れずという事となりました。
この幻想曲はプーニョのために作曲されましたが、ナディアとプーニョは深い愛で結ばれていたということが、残された資料により明らかになっているようです。曲は荘厳な雰囲気で、ドラマティックに開始されます。そして、壮大な音の渦中へと引き込まれていき、音楽は映画や舞台音楽的な、豪華絢爛たる展開を見せるものでした。そこには20世紀初頭の雰囲気を色濃く感じられます。進行の中で、ヴァイオリンのソロにピアノがキラキラと輝くように絡んだりと、とてもロマンティックになったりします。メロディをすぐに思い出すような曲では無く、雰囲気で聴く感じで、ドビュッシー的なのかもしれません。大変豪華な感じのする曲なのでした。
とりあえず見つけた動画は、グレイルザンマーのピアノとスローン指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団による演奏です。
このCDには、あとはフォーレの作品が2曲。「ピアノと管弦楽のための幻想曲op111」と、ピアノ独奏版の「夢のあとに」がカプリングされています。幻想曲はフォーレの晩年にあたる1918年の作品になります。この曲はピアノがとても輝かしい曲で、オーケストラは色を添えるといった雰囲気です。幻想曲的なとりとめの無い雰囲気を感じる曲でもありました。オーケストラは、進むにつれて少し頑張り出すところはありますが、あくまでもピアノのソロが中心の曲だと思いました。
ベル・エポックをテーマに、ブーランジェとその師でもあったフォーレのきらびやかな作品が収められたCDでした。実際ベル・エポックの雰囲気というものを感じるすべはないのですが、なんとなくバブル時代の華々しさを思い出して、一人納得するのでした。
華やかなベル・エポックの最後に「夢のあとに」というセンスも面白いなと…。バブル崩壊のあとも、まさに「夢のあとに」があちこちに見られました(笑)歌は鮫島有美子さんです。
【録音について】
1枚目と同様で、ちょっと音量が大きめですかね…。
【まとめ】
ベル・エポックから狂乱の時代へ。輝かしい時代の後の反動はいろいろな形で訪れるものですが、その時代はとても躍動的なので、一度経験したものとしてはいつまでも懐かしい時代でもあるのでした。
購入:2024/03/16、鑑賞:2024/04/30
CD1の記事のリンクです。