【CDについて】
作曲:グラズノフ
曲名:ヴァイオリン協奏曲イ短調 op82 (20:00)
作曲:プロコフィエフ
曲名:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op19 (22:22)
作曲:シチェドリン
曲名:ロシア受洗一千年記念のスティヒラ(1988) (22:14)
演奏:ムター(vn) ロストロポーヴィチ指揮 ナショナル交響楽団
録音:1988年3月 ワシントン Kennedy Center for the Performing Arts
CD:0630-17722-2(レーベル:ERATO)
【曲について】
プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番は、1917年に作曲され、1923年に初演されました。いろいろとアヴァンギャルドな時代ですが、メロディのとても美しい曲なのでした。雲間に漂うような雰囲気と躍動感を行きつ戻りつする曲で、白昼夢のような不思議な世界観があります。
【演奏について】
このCDは、ジャケットが印象的で、なかなかいいセンスだと思います。でもたぶんオリジナルではなくて、再発時のジャケットではないかと思います。オリジナルはオーソドックスなものでした。ムターの演奏するプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番というと、なかなかイメージが湧きづらいのですが、どうなんでしょう。そんな興味にひかれて、買ってみました。
グラズノフは、後期ロマン派時代のロシアの作曲家ではありますが、音楽はかなり西欧志向です。この曲は、グラズノフの曲の中でも比較的よく演奏される曲と思います。内容はやはり、ロシア風の哀愁のあるメロディという印象はあまりなく、聴いていると、大地の風景よりは、西欧に開いているロシアの港町の風景なんかが頭に浮かびました。ムターの演奏は、技巧的部分もあるこの曲を美しく表現している素晴らしいものでした。
そして、楽しみにしていたプロコフィエフ。冒頭からねっとりと歌われるのかと危惧していましたが、かなり抑えて、透明感のある演奏になっていました。これでひと安心。ゆっくり聴いていけます。素晴らしく安定した演奏ですが、ムターの特徴はかなり抑えられています。第二楽章のスケルツォのリズムなどは、ムターの技巧も冴えて聴きごたえがあります。そして第三楽章の前半でヴァイオリンがメロディを歌う部分は、ムターの面目躍如という感じです。全体としては、とても美しい演奏に仕上がっていました。ただこの曲とムターの相性という意味では、やはりちょっとね…という感じはあると思います。
最後はシチェドリンの曲で初めて聴きます。この曲はオーケストラ曲なので、ムターの登場はありません。シチェドリンがロストロポーヴィチに捧げた曲で、この録音の月に同じメンバーで初演されました。宗教性のある管弦楽曲で、旋律の奥に聖歌の響きを感じつつ時折、先鋭的な響きを連発する現代的な曲でした。今回初めて聴き知った曲となりました。
【録音について】
ヴァイオリンとオーケストラの響きがバランス良く捉えられ、細部までクリアな優秀録音です。
【まとめ】
ムターとプロコフィエフ第1番の組み合わせということで興味深く聴きました。結果はそうだよね…という感じではありますが、ムターの素晴らしい演奏を楽しめるものでした。ロストロポーヴィチの指揮も表情豊かなサポートで、とてもいいと思いました。
購入:2023/12/01、鑑賞:2023/12/04