最近リリースされた新譜から ⑯
今回の新譜は、タローのピアノによるラヴェルのピアノ協奏曲集を聴いてみました。先週に引き続きエラートの新録音です。エラート自体はかつてのエラートとは別物と思いますが、愛着もあり、イメージも多少は受け継いでいる感じがするので、ついつい買ってしまうのですよね…。
【CDについて】
①作曲:ラヴェル
曲名:ピアノ協奏曲ト長調 M83 (21:44)
左手のためのピアノ協奏曲ニ長調 M82 (16:51)
②作曲:ファリャ
曲名:スペインの庭の夜 G49 (23:36)
演奏:タロー(p) ラングレー指揮 フランス国立管弦楽団
録音:2022年7月5-8日①、2023年6月23日② パリ Auditorium de Radio Francd
CD:50 5419 766071 9(レーベル:ERATO、輸入販売:ワーナーミュージックジャパン)
【曲と演奏について】
ラヴェルのピアノ協奏曲集のCD。今年はユジャ・ワン(再発売)のを買ったので、2枚目ですね。今回は、タローの演奏です。タローのピアノは、じっくり聴いたことがないので、楽しみです。さっそく聴いてみます。ハネケ監督の「愛、アムール」は見たことがあります…。
ラヴェルのト長調のピアノ協奏曲。冒頭のオーケストラのから、陰影の濃い鋭い演奏を感じます。タローのピアノも同様にニュアンスに富んだ演奏でした。まさに両者で協働プロジェクトを行ったという感じです。緊張感があり起伏に富む音楽は、今までの私のわずかしかないこの曲の経験の中でも、最高の部類ではないかと思いました。もしかして、私にとっての新たな名盤を聞いているのかも…?
第二楽章が淡々と進む様子はこの上なく美しく、オーケストラも雄弁にメロディを奏でていて、深い憂いを感じます。第三楽章は、とても躍動的で尖っています。作曲された戦間期のパリの憂鬱と、アヴァンギャルドな雰囲気も感じとることができる演奏で、ラヴェルのこの曲の印象を新たにしました。
タローのピアノによる、ラヴェルのピアノ協奏曲第3楽章(ライヴ)
続けて、左手のためのピアノ協奏曲です。印象派の音楽でありながらも、重厚さを持った音楽を感じます。ラングレーの指揮するオーケストラの音の広がりに圧倒されました。それに対峙するタローのピアノが、クリスタルのような透明感に輝き、変幻自在の色彩感が音楽から次々と溢れ出ています。ここには、二人の協働による世界観が構築されていると感じます。
ファリャのスペインの庭の夜は、三角帽子のようなスペイン色の濃い音楽ではなく、むしろ印象派に近い音楽です。ドビュッシーほどの晦渋さはないにしても、「映像」のピアノ協奏曲版というようなイメージを持ちました。従って、ラヴェルに引き続いて聴いても、それほど違和感を感じません。演奏はラヴェルと同様で、雄弁な管弦楽と輝くピアノで積み上げられた、美しい音楽を感じることができました。
このCDは、私としてはなかなか気に入りました。
購入:2023/11/10、鑑賞:2023/11/23