一匹のイワシが大海の中で、何かを思考しながら泳いでいる

あまりにも複雑な海の水はとても塩辛くて、飲んでは吐き

体内をおどるように走る塩辛さに眉をひそめながら

それでも彼は泳ぎ続けるのだ

まがいもない、群れだ

彼は一匹なのに、ずいぶんな群落を背負いながら泳いでいる

孤独であることも承知していた

強い圧力で当たってくる無言の力が彼を苦しめていた

ずっと今までもそうしてきた

ずっと一匹だった、一人だった

寄り添うものも居なければ、囁きかける昆布も居ない

味の薄れたプランクトンを食み、目は見ひらいている

自らの鼓動は未だ不確かではあるが感じていた

そう思いながら彼は夜明けを密かに感じていた

何の根拠もないながらも

そう、思い込むしかなかった

彼の後ろには無限の見えない群れがあった