(セ・リーグ、ヤクルト6-4阪神、23回戦、阪神12勝8敗3分け、10日、神宮)


殴り殴られ、また殴り、それでも最後は力尽きた。それでも中野のファイターぶりは虎党の心を焦がした。中野が一時同点の2点打を放ち、最後はヘッドスライディング。執念を体で示した。


「みなさんがつないで作ってくれたチャンスの場面で、なんとかしたいという思いだけでした。必死に食らいついていきました」


今季ワーストの17残塁を数えたように得点圏に走者を置きながらも、もどかしい攻撃が続いた。0-2の四回、梅野と代打・山本の連打、近本の四球で1死満塁としたところで打席に立つと、ベテラン石川のシンカーをとらえた。


二遊間への打球に二塁手・山田も飛び込んだが捕れず。中前へと転がり、試合を振りだしに戻した。四回、大山の一時勝ち越し打は三塁手・村上のトンネル。チームでただ一人、打点を挙げたのは新人王候補に名を刻む中野だった。


五回2死一塁では右翼線への二塁打を放つと、九回2死二塁ではマクガフの直球に詰まらされながらも、一塁へのヘッドスライディングで遊撃内野安打。得点にはつながらなかったが、好機を拡大させた。猛打賞は9月11日の広島戦以来、今季10度目だ。


負けられないヤクルトとの直接対決だったが、中野は前日までヒットを1本も飛ばせなかった。今季通算打率・208とセ・リーグ5球団の中で最も苦手とする相手。「最近、全く仕事もできていなかったですし、状態があまり良くない中でも塁に出るというのが大事だと思う。そこはしっかりとできた」。運命のドラフト会議から1年。D6位から虎に欠かせない戦力に成長した『令和の牛若丸』は自分の仕事を改めて見つめ直した。


「結果的に勝たないと意味がないので。つながりよく後ろにつなげられるようにやっていきたい」


敗戦の悔しさをにじませた。終わったわけではない。最後まであきらめず、逆転優勝へと突き進む。