(セ・リーグ、中日3-3阪神=九回規定により引き分け、20回戦、阪神10勝8敗2分、23日、バンテリンD)

帰ってきたぞ!阪神は中日と3-3で引き分け、1日での首位復帰はならなかった。この日、1軍昇格して即「7番・右翼」でスタメン出場した佐藤輝明内野手(22)は4打数無安打も、四回に右翼ポールを直撃しようかという大飛球。前半戦の快進撃をけん引したルーキーが復帰し、役者はそろった。24日から3位巨人と敵地で3連戦。宿敵をたたき、前半戦の勢いを取り戻す。

負けなかった。ただ、勝ちきれなかった。幻のホームランは何か起こしてくれそうな期待を抱かせたものの、まさかのドロー決着。チームも自分自身も是か非か判断のつきづらい結末に、佐藤輝は言葉を絞り出した。

「結果が出ていないので、何とも言えないですけど…」

9月5日の巨人戦以来のスタメン出場。10日に初めて登録抹消されてから13日ぶりの1軍だった。しかし、4打数無安打で自己ワーストをさらに更新する39打席連続無安打。チームは3-1の九回に守護神・スアレスが同点に追いつかれ、痛恨ドロー。打線は最近5試合で計9得点、今季ワーストの6試合連続ノーアーチと、深刻な貧打の解消に一役買うことはできなかった。

ただマイナス面ばかりを数えても、前には進めない。手応えを残したスイングも確かにあった。

「いい当たりも出たので、ポジティブに、また次に向けてやっていきたいです」



四回1死一塁。先発・笠原の初球、内角高め126キロをとらえた。白球は右翼ポール際スタンドにズドン!見る者が驚く飛距離で一塁塁審の手が回った。しかし、中日がリプレー検証を要求。ボールはポールのわずかに外を通過しており、判定は無情にも覆った。


それでも、持ち味のフルスイングで放った『幻の24号』は場内を騒然とさせ、ベンチにも笑顔をもたらした。球団の新人記録を更新する23本塁打を放ち、前半戦の快進撃の一翼を担ったルーキーの復帰は、後半戦で苦戦するチームの空気を確かに変えた。試合前には仲間たちの前で「フレッシュな僕が入ったことにより、このチームの流れを変えられるように頑張ります」と凱旋のあいさつ。矢野監督も「『ムードを変える』って試合前の円陣で言っていた。結果は出なかったけど、そういうピースになってくれたら」とテル効果に期待を寄せた。


ヤクルトと巨人との優勝争いが佳境に入る中、チーム状況は決していいとはいえない。後半戦は15勝15敗3分けと、貯金を増やせていない。しかし、打席に立つだけで空気を変える男が帰ってきた。役者はそろった。24日からは敵地・東京ドームで3位巨人と3連戦。今シーズンの対戦成績は9勝9敗1分けの五分。16年ぶりのリーグ制覇に向けて、宿敵に勝ち越すことは必須課題だ。


「負けられない戦いだと思っていますし、少しでもチームのために、自分のできることをやっていきたいと思います」


それは佐藤輝も十分に承知。次はマボロシではなく、ホンモノの豪快弾をぶっ放して、チームのVばく進に貢献する。


★輝「すごくやりやすい環境」1軍に戻ってきたルーキーは先輩たちに温かく迎えられました。「すごくやりやすい環境を作ってくれる。結果で応えたいと思います」と本人も感謝の気持ちでいっぱいでした。2軍の練習に駆けつけて指導した井上ヘッドは、幻のアーチのあとに「なんであの30センチ、50センチ、もうちょっとこっちに行かへんの?」と声をかけたことを明かし「楽しみな素材を一生懸命見つけて『こんないいこともあったやないか』って、ポジティブな雰囲気だけを前面に出していくしかない」と打線の起爆剤に期待しています。