四回1死一塁。先発・笠原の初球、内角高め126キロをとらえた。白球は右翼ポール際スタンドにズドン!見る者が驚く飛距離で一塁塁審の手が回った。しかし、中日がリプレー検証を要求。ボールはポールのわずかに外を通過しており、判定は無情にも覆った。
それでも、持ち味のフルスイングで放った『幻の24号』は場内を騒然とさせ、ベンチにも笑顔をもたらした。球団の新人記録を更新する23本塁打を放ち、前半戦の快進撃の一翼を担ったルーキーの復帰は、後半戦で苦戦するチームの空気を確かに変えた。試合前には仲間たちの前で「フレッシュな僕が入ったことにより、このチームの流れを変えられるように頑張ります」と凱旋のあいさつ。矢野監督も「『ムードを変える』って試合前の円陣で言っていた。結果は出なかったけど、そういうピースになってくれたら」とテル効果に期待を寄せた。
ヤクルトと巨人との優勝争いが佳境に入る中、チーム状況は決していいとはいえない。後半戦は15勝15敗3分けと、貯金を増やせていない。しかし、打席に立つだけで空気を変える男が帰ってきた。役者はそろった。24日からは敵地・東京ドームで3位巨人と3連戦。今シーズンの対戦成績は9勝9敗1分けの五分。16年ぶりのリーグ制覇に向けて、宿敵に勝ち越すことは必須課題だ。
「負けられない戦いだと思っていますし、少しでもチームのために、自分のできることをやっていきたいと思います」
それは佐藤輝も十分に承知。次はマボロシではなく、ホンモノの豪快弾をぶっ放して、チームのVばく進に貢献する。
★輝「すごくやりやすい環境」…1軍に戻ってきたルーキーは先輩たちに温かく迎えられました。「すごくやりやすい環境を作ってくれる。結果で応えたいと思います」と本人も感謝の気持ちでいっぱいでした。2軍の練習に駆けつけて指導した井上ヘッドは、幻のアーチのあとに「なんであの30センチ、50センチ、もうちょっとこっちに行かへんの?」と声をかけたことを明かし「楽しみな素材を一生懸命見つけて『こんないいこともあったやないか』って、ポジティブな雰囲気だけを前面に出していくしかない」と打線の起爆剤に期待しています。