【命題】 不幸を一般化するとさらに不幸になる。


【例】
あるところにA子さんというOLがいた。彼女は同僚のBさんと交際していた。しかし、ある日、A子さんはBさんとケンカした。そして、A子さんはBさんに言った。
「あんたってさあ、とにかく愚痴っぽいのよ。何かあるとすぐに愚痴ばっかり言うじゃない。私、あんたの愚痴っぽいところ、前から嫌だったの。」
そして、A子さんはBさんと別れた。A子さんが落ち込んでいるのを知って、学生時代の友人C子さんが飲みに連れて行った。C子さんが尋ねた。
「Bってどんな人なの?」
C子さんはBさんと面識がなかった。A子さんは答えた。
「すげー愚痴っぽいの。一緒にいるだけでムカついちゃってさあ。ホント、Bって最低!」
「それで別れちゃったんだ。」
「そうなのよ。」
「要するに、A子は、そう言う男が嫌いなのね。」
「そうそう。私、Bみたいな愚痴っぽい男って、大嫌い!」


それから、数日後、A子さんは別の友人たちと飲みに行った。
その席で、どんな男が好きか、嫌いかという話になった。A子さんは言った。
「私、男の中でも、愚痴っぽい男って一番嫌い。許せない。男のくせにぐずぐず言うなっていうのよ。」
他の女性が言った。
「A子はよっぽど嫌いなのね、そういう人が。」
「うん。私、男だろうが、女だろうが、愚痴っぽい人間を見ると、虫唾が走るの。いるじゃない?そういう人。」
「うん、いるいる。」
「最近、他人が愚痴っぽいことを言ってるのを聞いただけで、私、すげームカつくの。聞いてるだけでいらいらしてきちゃって。」


最後に、A子さんは言った。
「ところでさあ、私、最近、仕事中に、何か、イライラすることが多くなったんだよねえ。どうしてかなあ。」


【問題】 何故、A子さんはイライラすることが多くなったのだろうか。


【原因】 まず、上の会話を整理してみると、A子さんの嫌いなものは以下のように推移している。
1.私は『Bの愚痴っぽいところ』が嫌い!
 ↓
2.私は『B』が嫌い!
 ↓
3.私は『Bみたいな愚痴っぽい男』が嫌い!
 ↓
4.私は『愚痴っぽい男』が嫌い!
 ↓
5.私は『愚痴っぽい人間』が嫌い!
 ↓
6.私は『他人が愚痴っぽいことを言ってるのを聞いただけ』でムカつく!


ところで、A子さんの会社の従業員数は500人である。そこで、上の人数に対して調査したところ、以下のような結果が出た。
1.Bさんの愚痴っぽいところ (0.n名/500名)
2.Bさん (1名/500名)
3.Bさんみたいな愚痴っぽい男 (12名/500名)
4.愚痴っぽい男 (82名/500名)
5.愚痴っぽい人間 (158名/500名)
6.他人が愚痴っぽいことを言ってるのを聞く機会 (320名分/500名)
そこには以下のような包括関係がみられることが分かった。
Bさんの愚痴っぽいところ ⊆ Bさん ⊆ Bさんみたいな愚痴っぽい男 ⊆ 愚痴っぽい男 ⊆ 愚痴っぽい人間 ⊆ 他人が愚痴っぽいことを言ってるのを聞く機会
要するに、『Bさんみたいな愚痴っぽい男』は『Bさん』より多く、『愚痴っぽい人間』は『Bさんみたいな愚痴っぽい男』より多く、『他人が愚痴っぽいことを言ってるのを聞く機会』は、『愚痴っぽい人間』の数より多いのだから、それだけ、勤務中にイラつく機会が増えるわけだ。


僕は以下のように考える。
【命題】 不幸を一般化するとさらに不幸になる。
しかし、これは以下のようにも言えるわけだ。
【命題】 幸福を一般化するとさらに幸福になる。
もし、A子さんが、以下のように考えていたら、彼女はずっと幸福になれていたかもしれない。
1.私は『Bの親切なところ』が好き!
 ↓
2.私は『B』が好き!
 ↓
3.私は『Bみたいな親切な男』が好き!
 ↓
4.私は『親切な男』が好き!
 ↓
5.私は『親切な人間』が好き!
 ↓
6.私は『他人が親切にしているのを見るだけ』で幸せ!


【結論】 不幸は一般化しないほうがよく、幸福は一般化したほうがよい。