物語はいよいよクライマックス PartⅢ。


何だか、もう、収拾がつきません。(^ω^)



【登場人物】


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 設定資料
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【おはなし】


以下の続き。


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 その11
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◇ 旅館「東野」の男用の露天風呂。


旬 「ところで、父さん。


話は戻るのですが、


(あたりを見渡しながら)


何故、こんなことになってるんですか。」


黒岩 「あなたに内緒で勝手なことをしてごめんなさいね。旬ちゃん。


実は、あなたが、あんまりにも、このお嬢さんのことを褒めるもんだから、


それなら、ぜひ、こちらの旅館のPRにご協力していただいたらって、そこの服部さんに助言させていただいたのよ。」


自分の名前が出て、ハッと驚いた顔をする服部さん。


旬 「やっぱり、そうだったんですか。


どうりで、おかしいと思った。」


黒岩 「(首をかしげながら) それにしても、おかしいわね。


私は、ただ単に、


こちらのお嬢さんが、そんなに優しくて、親切で、素敵な方なんだったら、


『親切すぎる温泉女将』


として、こちらのPRに一役買ってもらったら、って言っただけなんですけどね、


こちらの服部さんに。」


東野主人 「親切すぎる・・・?」


合田番頭 「温泉・・・女将?」


さやか 「『セクシーすぎる美人女将』じゃなくて?」


東野主人 「(内輪で) いってぇ、どういうことでぇ。」


合田番頭 「はっはーん。ようやく、今回の一連のからくりが見えてきましたね。」


東野主人 「要するに、アイツが、黒幕かよ。」


みんなの視線が服部一人に集まる。


おろおろ、きょろきょろする服部。


黒岩 「服部さん、どういうことなの。


説明してくださる。」


皆から詰め寄られて、ピンチの服部さん。




そのとき、さやかから意外な真相が語られる。


さやか 「黒岩先生、どうか、服部さんを責めないでください。」


黒岩 「どういうことなの。」


さやか 「実は、今回の水着撮影会の件、


私が、こちらの服部さんに提案させていただいたことなんです。」


黒岩、旬、服部 「何ですって。」


(↑三者三様、トーンが異なる。)


東野主人 「するってえと、何かい。


おめえが、今回の一連の黒幕だったってのかい。」


合田番頭 「そら知らんかった。何て、意外な結末なんや。」


さやか 「みなさん、私の話を聞いてください。


実は、私も、以前から、こちらの温泉街と、うちの旅館を復興するためのよい手段はないものかと、ずっと考えていたんです。


でも、所詮は、小娘。 自分に出来ることは限られています。


それで、こんな私でよかったらと、今回の水着撮影会を、私の方から服部さんに提案させていただいたんです。


そうでしたわよね、服部さん。」


服部 「へっ? ああ、そうでした。そうでした。」


服部が今さらながら深く頷く。


黒岩 「そうだったの。


(黒岩先生、深く頷く。)


なんて健気な子なの。」


さやか 「最初はもっと過激な水着を用意していたんですけど、


こちらの服部さんから、


『年頃の娘さんが、そんな水着を着ちゃいけねぇよ』


と教え諭されて、こちらの水着を渡していただいたんです。」


黒岩 「さすがは、『人柄の服部』さんね。


若い娘さんを持つお父さんらしい心遣いだわ。」


服部 「ワハハハハ。おっしゃるとおりです。」


合田番頭 「ホンマかいな。」


さやか 「服部さんが、今、握っている領収書が、何よりの証拠。」


服部 「えっ?」


服部が自分の手の内にある領収書に目を遣る。


受取人の名前が『服部様』になっている。




さやか 「それはともかくとして。服部さん、


もう、そろそろ水着撮影会を始めましょう。


カメラマンの人たちが、ずっとお待ちだわ。」


服部 「そうですなあ、そうですなあ。」


さやかが立ち上がり、旬の目の前でバスローブを脱ぎ棄てる。


旬の目が点になる。


さやかの女の武器が牙を向く。


ウブな御曹司の運命や、如何に。


さやか 「あら、いけない。


ヒモがほどけちゃったわ。


(と言いながら、両腕で、お乳を抱えて、持ち上げる。)


ヨッコイショっと。」


旬が、それを目の前で見て、ブッと鼻血を噴出す。


(↑分かりやすいぐらい、真っ赤な鼻血を出してください。遠慮はいりません。(^ω^))


黒岩 「あら、大変。


旬ちゃん、しっかりして。」


みんな、慌てて、わらわらする。




しばらくして、ようやく騒ぎが静まる。


黒岩 「(服部の方を向き直って) ところで、服部さん、


(服部の耳元で、ささやくように)


こちらのPRの件でお願いしてあった、あのお嬢さんへの出演料の件ですけど、


お願いしてあったお金、


(黒岩が両手の指を開いて、パッパ、パッパと二回づつ、開く。)


ちゃんとお支払いいただけてるんでしょうね。


こちらの方たちが金銭的に苦しいと聞いてたもんですから、


少しでも足しになればと思って、余計なお申し出をさせていただいたんですけど。」


服部 「ええ。もちろんでございますとも。


もちろんじゃないですかぁ。ワハハハハハ。」


そう言いながら、服部がヤケになって手もみをする。


合田番頭 「(東野主人に向かって) 親方、


黒岩・・・先生の、両手が、パッパ、パッパ、2回ずつ、閉じたり開いたりしてますね。」


東野主人 「一体、元はいくらだったんだ。」


さやか 「どいつも、こいつも、最低だわ。」




黒岩 「まあ、そんなことはどうでもいいわ。


それより、服部さん。


話は、肝心の本題に戻るんですけどね、


こちらの旅館の復興支援計画はどうなっているの。」


東野主人 「(内輪に向かって) そういや、どうなってんだい。」


合田番頭、さやか 「(頷きながら) ねえ。」


黒岩 「こちらの温泉街の人気を盛り返すためには、この温泉街で最古の歴史を誇る、こちらの東野さんに、是非とも頑張っていただかないといけないのよ。」


服部 「いやー、それがですなあ、


先ほども申し上げましたようにですなあ、


こちらの連中がですなあ、先生のご申し出をですなあ、一向に聞こうとはせんのですわ。


何とも欲深い連中でしてなあ。ワハハハハ。」


(↑かなりヤケになっている服部さん。)


黒岩 「そうなの。おかしいわね。


こちらの旅館を復興していただくためにご提案させていただいた、5千万円(当時)、無償融資の件。


そんなに悪い話ではないと思うんですけどね。」


顔を見合わせる東野の人たち。


東野主人 「五千万円?」


合田番頭 「無償融資?」


さやか 「自分で言うのもなんだけれども、


『盗人に追い銭』?」


黒岩 「要するに、たかだか5千万円ぐらいで、無償融資を受けるような、誇りのない人たちじゃなかったということね。」


合田番頭 「いやいや、黒岩先生。


この親子、10万円もあれば、何でもしますから。」


東野主人、さやか 「おいおい。」




黒岩 「それにしても、何が何だか、分からないことだらけだわ。


そんなに難しい交渉ごとでもないはずなのに・・・。」


すると、ずっと黙って話を聞いていたとん吉が、深く悩みこむ黒岩先生のことを、「ヘイ、ユウ」と指差しながら、


とん吉 「よぉ、黒岩先生よう。


あんたも、ホッントに、馬鹿なお人だなあ。


ここまで来りゃあ、分かんでしょうがよう。」


服部 「おいおい、とん吉君・・・。」


とん吉 「要するによう、交渉ごとってのはよう、


長くかかれば、かかるほど、交渉役が儲かる・・・。」


ボカッ。


いつの間にか、服部さんが、こげ茶色のスチロール製の棒を持っており、とん吉の後頭部を殴打。


とん吉がその場で失神する。


(↑お約束どおりのスラップスティックです。(^ω^))


しかし、間髪入れずに、これまでほとんどせりふのなかった蛾邪郎が発言する。


蛾邪郎 「そうだよ。服部のアニキだって、さっき言ってたんだから。


『この仕事は、こじれればこじれるほど、もつれればもつれるほど、


うまい汁がたっぷり吸え・・・。』」


ポクッ。


同じく服部さんが、棒で蛾邪郎の後頭部を殴打。


蛾邪郎もその場で失神する。


(↑こちらもお約束どおりのスラップスティックです。(^ω^))


黒岩 「服部さん。


部下の人たちが、何か言いかけてたようだけど。」


東野主人 「おう、服部のぉ、一体、どうなってるんでぇ。」


黒岩 「どうなってるの、服部さん。


ちゃんと説明してちょうだい。」


みんなに取り囲まれて、あたりをキョロキョロする服部。




その後、しばらくして、服部の様子が変わる。


服部 「(あたりを見渡しながら) ここは一体・・・、どこでおじゃる。


麻呂は、一体・・・、今の今まで・・・、何をしていたのでおじゃる。」


皆がお互いに顔を見合わせる。


さやか 「たいへんよ。


服部さんが、麻呂になってしまったわ。」


合田番頭 「何やて。」


東野主人 「そいつはてえへんだ。」


黒岩 「服部さん、しっかりして。」


みんながそちらに釘付けになる。




その隙を見て、若手従業員の浜津がさやかに声をかける。


浜津 「(さやかに) お嬢さん。」


さやか 「今、たいへんな修羅場なのよ。あとにしてちょうだい。」


浜津 「いや、でも・・・。」


さやか 「どうしたの。大事な話なの。」


浜津 「ええ。 実は、前に、うちの旅館の玄関に、生ゴミが撒き散らされてた件なんですが・・・。」


さやか 「ええ。それがどうしたの。」


浜津 「あれ、実は、自分がやっちまったんです。


あの日の早朝、生ゴミを出そうとしてたら、玄関先で、下駄の鼻緒が切れて、躓いちまって。


慌てて片付けようとして、履物を代えて、箒を持って戻ってきたら、それより先にお嬢さんに見つかってしまって、言え出せなくなっちまって・・・。


すいやせんでした。」


さやか 「なんですって。


どうして、もっと早く言ってくれなかったの。


もう少し早く言ってくれていれば、服部さんも麻呂にならなくても済んだかもしれないのに。」


浜津 「すいやせん。」


さやか 「いいのよ。


済んだことは仕方がないわ。


成り行きに任せましょう。」


浜津 「お嬢さん。うう。」


涙ぐむ浜津。




服部 「(尚もボケながら) どうして、麻呂は、こんなところにいるのでおじゃる。


京の都に帰るでおじゃる。」


あたりを見渡しながら、服部が退場する。


みんながなおも服部に釘付けになる。




彼らがたばたしているうちに、もう一方の出口から、一人、出て行くトラジ。


(↑いたんですね。(^ω^))



(以下に続く)


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 その13
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