『建設ドキュメント1988 イサム・ノグチとモエレ沼公園』を読む。

(川村純一・斉藤浩二/著、戸矢晃一/構成)

 

 

イサム・ノグチがモエレ沼公園のマスタープランにかかわることになった詳細の経緯から、ノグチ逝去後に遺志を継いだ人たちがどう完成までこぎつけたかが書かれたノンフィクション。

 

モエレ沼公園だけでなく、大通公園にあるノグチ作「ブラック・スライド・マントラ」についても触れられている。

以前から、大通公園の8丁目と9丁目がどうしてつながっているのか不思議だったのだが、ブラック・スライド・マントラを置くためだった。

 

 

当初は、ブラック・スライド・マントラを置くために、札幌市は子どもたちに親しまれていた「クジラ山」を撤去しようとしていたらしいがノグチが反対。すでにその場で空間の一部に溶け込んでいるものを壊すことを快く思っていなかったそうだ。

その一方で、自然の秩序を乱しているものはあっさりと壊してしまう(海の景観をふさぐように建っていた図書館を壊したとか)。

 

そこで「道路をなくしたら置けるかもね」とノグチが提案したことで実現。一体、どんな手続きを経て、道路をなくすことができたのかが興味ある。それを可能にしてしまうイサム・ノグチという人物にも。

 

とても読み応えのある一冊だった。