ロミと妖精たちの物語219 ⅴ-17 死と乙女⑦ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

 

聖少女ロミの守護者を自認する、アイルランドのガンコナー妖精の長(おさ)フィニアン、姪っ子の妖精マドレーヌの誘(いざな)うままに、その母親であり彼にとって一番苦手な女性シモーヌ姉さんのアパルトマンにまで来てしまったフィニアンは、かつて気ままに使わせて貰ったこともある狭い部屋に入り、二重ガラスの窓を開けると、正面に見える凱旋門の上に広がるパリの空を見上げ、ロミの母マリアのことを思った。

 

 

 

 

 

 

――彼女は人の思い、夢と希望を、そして不安と苦悩を読み取ることが出来、その人の未来を愛と癒しの心で表現してくれた、古(いにしえ)のザ・ワンの血脈をつなぐ聖なる少女マリア。

 

あの日、ベルリン大聖堂のらせん階段を降りてくる聖少女が足を止め、その透き通るような青い瞳で、階段を上ってくるフィニアンを見つけた。

 

全てを見通すような少女の視線に、彼は金縛りにあったように身動きが出来なくなった。

 

――なぜ、この少女は、妖精であるわたしの姿が見えるのだろう。

 

少女は束の間フィニアンの心を読み取ると、優しく微笑み彼の手を取り、再びらせん階段を昇った。見えない妖精サイズにいるフィニアンと同じくらいの背丈、5フィートくらいの少女。

 

ドームの回廊に出ると、少女は黙ったまま、天使の石像を一つひとつ彼に指し示し、言葉は使わずエンパシーでフィニアンに伝えた。

 

――あなたはいずれ、天使を護ることになるのよ。

 

フィニアンは黙したまま彼女に手を引かれ、ベルリンの街を眼下に望みながら、ゆっくりと回廊を一周する間に、ごく自然に、何の疑いも持たぬままに彼も、エンパシーを使って思念の言葉を伝える能力を覚えることができた。

 

そして二人は、言葉を交わすことも無く、エンパシーで心を通じ合うことが出来た。

 

半世紀以上前の、聖なる少女だったマリアと、その赤ん坊のロミを描いた絵が存在したなんて、二組の母子を描いたあの絵は、横に並んだマーガレットと赤ん坊のトムを見れば、女の赤子を抱いているのが、母マリアであることはロミに分かってしまう、シモーヌ姉さんは、そのことを、ほんとうに知らなかったのだろうか。

 

――まあ、そんなことを聞いても、また笑い飛ばされてしまうに決まっている。

――さて、今夜に備えてしばらく休みますか。

 

フィニアンはグリーンの背広を脱ぎ、部屋の真ん中に置かれたレプラコーンの金貨の壺に潜り込み、何百枚にも積まれたイングランド金貨の上で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

ロミは、おやゆび姫マリアを右の乳房に抱いたまま、客間の大きなベッドで目を覚ました。

 

一緒に寝ていたマドレーヌは、ロミの左胸に小さな顔を押し付けて眠っている。

マリアがドラゴンボウルを操ることと同じように、マドレーヌも戦闘妖精に変身して戦ったあとのダメージは大きく、その眠りは深いもののようであった。

 

ロミはゆっくり起き上がり、おやゆび姫をマドレーヌの乳房の上に移してみた。

おやゆび姫は目を覚ますことも無く、マドレーヌの乳房に頬を寄せた。

――まあ、マドレーヌ、ほんとにあなたも乙女なのね。

 

第二次ジャガイモ飢饉の時代に生まれた戦闘妖精マドレーヌ、こんな可愛らしい女性がいつまでも乙女を守って生きてきたことに、ロミは愛おしさを感じ、彼女の頬にそっとキスをした。

二人をベッドに残し、ロミは裸のままバスルームに向かい、朝の支度をすることにした。

 

大きな鏡の前で歯を磨き、熱いシャワーを浴び終えて、柔らかいバスタオルで身体を拭いていると、そこにフィニアンの思念の声が聞こえてきた。

 

――ロミさま、大変です

――どうしたのフィニアン

――博士が、、、あれ?

 

――えっ、なんなの、パパがどうしたっていうの

 

――フィニアン! 聞こえている?

 

 

次項Ⅴ-18に続く

 

旅行中、書籍を持ち運ぶのが面倒な方へ第一部第1章から

始めは少し退屈かもしれませんが↓

https://ameblo.jp/tony-max/entry-12239916183.html

 

 

 

「2017年12月 広島 LEGEND-S 成人の儀」

わたしも原爆ドームに参り祈りのエンパシーを捧げました。