予防接種を拒絶する人たち
世の中には予防接種を忌避する人々が居られます。私共が日頃の診療や乳幼児健診の場で母子手帳を見て予防接種欄が空欄のままで、何故接種を受けられないのかお聞きすることがありますが、殆どの場合は明確な理由がなくて、忘れていた、予定がたたなかった、などが主な理由です。ところが、世の中には、明確な理由があって予防接種を受けられない方があるのは事実です。ヨロッパの小児科医にアンケート調査をした論文がありました。ワクチンの種類によってもそれは、異なるようでフランスではB型肝炎ワクチンを受けないとする人が多いのだそうです。事故があったり、風評が影響するのは何処でも同じなのかもしれません。肺炎球菌、ヒブの一時中止が、そのようにならないことを願っています。受けない理由として挙げられていたのは、①ワクチンの害が怖い、②赤ちゃんに多くのワクチンを接種することが免疫の負担になるのではないか?③西洋医学ではない医学、補完的な医療を信じている、④ワクチンで予防するよりも自然に罹患した方が好い⑤ワクチンで自閉症になる、⑥ワクチンで予防できる病気に罹ることに危険性はない、⑦ワクチンが脳を冒す、⑧ワクチンにチロメサール(水銀製剤)が入っている、⑨ワクチンが多発性硬化症の原因になる、⑩信仰があげられていました。事実とは異なる、チロメサールのように既にワクチンに入っていないものについては説明することで意見を変えることは可能でしょうが、信じていることを否定しなければならないので、折角、自分のクリニックに来ておられる方を断ることにもなりかねないので、あえて介入しないという医師もいるようです。日本では、このような論文を余り見ないように思いますので興味深く読みました。(Primary pediatrician's perceptions of vaccine refusal europe ,Ped.Inf.
Dis,J 2011,30)3)255-256)ところが、そのまま、受け入れて好いのかとなると考えを異にするかもしれない事実があります。同じ雑誌のトップ記事なのですが Comementary としてAnthrosophy ;A risk factor Noncompliance with measles immunization ;Ped.Inf.Dis.J 2011;30(3)187-189)がありました。麻疹でも罹患した方が好いとする立場の教育が行われているグループの人がいたり、それを信条とする学校があって、そこではワクチンが接種されていなくて、そこで麻疹が流行し、場合によっては死亡例もでている、周囲に流行が広がることが起こっていることが、イギリス、オランダ、、デンマーク、オーストリア、ドイツの例が語られています。公衆衛生上の問題になるわけです。数年前にもアメリカで宗教上ワクチン接種を拒否して居る方々がスイスに行き麻疹をアメリカに持ち帰り流行が起こったことが報告されていました。個人として信条があってワクチンを接種しないことを決意することは、そう簡単に犯してはならないことだろうと思います。社会の中で生きていくことは、常に、自分もOKあなたもOKのように双方に好い条件が得られることが大事だとも思います。世の中で若し麻疹が予防されない状態になれば、1000人の患者さんで1~3人は死亡されます。自分が罹患して死ぬことは自己責任であるとしても、他人が感染して(自分が感染源になって)死亡することはどのように考えるかということは、自分はOKでも他人はOKではありません。医師としては、なるべく、弱い人を世の中に沢山つくることは予防したいと思います。
予防接種を受ける医療機関で質の差がありますか?
Q;ワクチンは決った内容だから、何処で接種を受けても同じだと思っていましたが、違うというママトモがいます。本当でしょうか?若し差があるとしたら、どのような面で異なるのでしょうか?
A; これは予防接種に来られた方からの質問でした。私は実は、大きな差があると考えています。そして、可及的に質を上げようと努力しています。私は、日本外来小児科学会に属していますが、この学会ができたときに、質の向上検討委員会で最初に取り組んだのが予防接種の問題でした。私もここで、大いに学びました。
ワクチンはメーカーから、直接、医療機関に届くのではありません。販売業者、卸を通して私ども医療機関に届けられますが、その過程でワクチンが劣化しないように届けられたかどうかが問題です。でも、これは私どもが要望するだけで、実際は難しい課題です。届けられてから、接種するまでは各医療機関で保存されます。その保存が適切に行われているかが問題です。一般に、不活化ワクチンは4度以下に保存するように指定されています。多くの冷蔵庫は開閉を繰返すと4度以上になります。生ワクチンはー20度で保存するのが劣化を防ぎます。このような保存状態に注意を払うかどうかは接種されるワクチンの質に反映してくるでしょう。予防接種全体、個々のワクチンに対する知識を持っているかどうかは、利用者への指導や説明、ひいては予定の立て方にも関係してきます。ワクチン接種の手技も大きなポイントです。接種部位、接種方法によって局所の反応もことなります。利用者の側からみると、同じワクチンならばどこで受けても同じだろうと思われるかもしれませんが、私は大きな違いがあると思っています。アメリカの小児科学会では子どものプライマリケアの質について、6つの項目を挙げています。安全性、有効性、効率、患者中心性、適時性、公平性ですが、ワクチンに関してもこれは同じではないかと思います。どのようにすれば、ワクチンに関して質があがるかどうか、医療従事者には常に課せられている問題だと思います。
今後の対応について
今後も病気の予防のためにワクチンの接種は積極的に行った方が良いのですか?
肺炎球菌、ヒブワクチン共に、積極的に接種をお薦めします。
今日、夕方都内で小児科医院を開業している女性医師から(私の娘に近い年齢ですが、頑張って開業している人です)から、相談とも報告とも嘆きともつかない電話を貰いました。
乳児を16日に診察をしたそうです。発熱、咳、呼吸速迫があり、血液検査をしてCRP(細菌感染で上昇する蛋白)は上昇していなかったそうです。処方して帰っていただいたそうですが、17日(日)気になってお母さんに電話をしたそうですが、電話が繋がらず、18日に電話をしたら具合が必ずしも好くなさそうなので受診を薦めた。
少し遠いところに居られたのですが、近所の医師を受診されて、紹介で病院に入院したら、ヒブによる細菌性髄膜炎と診断されたとのことが今日報告を受けたそうです。
このように、気道感染の患者さんが菌血症を起こして、更に髄膜炎になるのです。救命できるか、救命できたとしても後遺症は残らないのか、これは今後の治療経過で明らかになってくると思います。
女性医師はどうすれば、もっと早く救えなかったかと嘆いていましたが、髄膜炎であれば必ず痙攣、意識障害などをきたすとは限りませんし、若し、そのような症状が出れば間違いなく受診されるでしょうが、そのときには髄膜炎は起こっているわけです。公費助成が行われているときに、未接種で倒れるというのは、将に不幸、運が悪いとしか言いようがありません。
生後2ヶ月になったら先ず、肺炎球菌、ヒブの同時接種、3ヶ月になったら三種混合とともに肺炎球菌とヒブの2回目を接種する、4週空けて同じ組み合わせで接種、これがスタンダードのお薦めスケジュールです。
すでに、スケジュールがずれている方は可及的に早く接種をされますようにかかりつけ医とご相談していただきたいものです。
予防接種しておけば好かった?
保育園に4月から入った0歳児とそのママ、ブツブツがでたとのことで受診、典型的な水痘、そのように診断すると、『好かった、貰いに行こうと思ってたのに助かった』とのこと、その理由を聞いてみると、水痘は幼いときに罹ると軽いけど、大きくなって罹ると重いから、早くに罹った方が好いとママトモに聞いたとのこと、そのママトモは、貰いに行き、罹ったばかりだとのことでした。水痘は免疫に軽い異常があっても、重症になること、若し免疫に異常ががあっても、事前にはわからないこと、確かに成人の水痘は重症になる頻度は高いといわれているけれども、幼いときに罹れば必ず軽症だといえない、水痘になった人は、将来、帯状泡疹になる可能性があることなどを話しました。世界の常識は予防接種をして予防しようと言う方向にあること。お隣の韓国は、もう麻疹は撲滅の目標にほぼ達していて、1歳になったら水痘のワクチンを!と運動されていることなどを話しました。ママは。『えっ~
そんな、あのママトモ、何を考えているのだろう?』って言われるので、貴方もねと話しました。罹った方が好いと思いながらも心配だからこられたのでしょう。ワクチンで水痘は勿論、将来の帯泡疹を予防できるのですから、ワクチンはお薦めなのですがね。
ワクチンの検定結果と品質管理について
Q1:品質や異物混入などワクチンそのものに問題はなかったのですか?
結論から言えばワクチンには問題はありませんでした。亡くなられた7人の方のなかで、確かに同じロットナンバーを接種されている方がありました。ワクチンの発売時期や接種時期や地方の関係でそうなったのかと思います。ワクチンの品質には検討されて小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンともに”問題なし”とされています。
それとは別に、ヒブワクチンで異物が混入していたとする事例がありました。黒いものが2個あったそうです。私どもは接種前に異物の有無を見た上で接種を行いますが、そこで気がつかれて報告がされています。ワクチン輸入販売を行っている第一三共(株)はそのロットは勿論、そのロットを作ったのと同じバルクから作られたワクチンを全て自主回収を行いました。
検討された結果、異物は感染力のあるものではないこと、ワクチンの品質には問題がないことが確認されました。回収されたワクチンと同じロット番号のワクチンを接種された方も既にあったと考えられますが、異物の有無は医師は確認して接種をしていることで、実害はでていないと考えられています。
私も購入した全てが回収されましたが、既に新ロットのワクチンを購入して接種しています。このような経緯は厚労省のサイトでも閲覧できますので、確認していただけると好いと思います。