ポリオワクチンは危険って本当ですか(1)?
Q;ポリオワクチンについてのリスクに対する質問です。ワクチンを飲むと、麻痺が出ると言うのは本当ですか?が一番多いですね。
A;現行のポリオ生ワクチンによる健康被害の可能性があるのは事実です。特に、今は、春のワクチン投与の時期であり、親御さんの関心も高いのだと考えます。ワクチンという言葉の由来が天然痘に対する種痘(牛痘)に由来するように、ワクチンの歴史は生ワクチンで始りました。種痘は、人に病原性の低い牛痘をワクチンとして選びました。BCGも同じ発想で、ヒトの結核の予防に牛の結核菌を使うとしたものです。本来、ヒトの病気に対するワクチンはやはり、その病原体でワクチンを作成しないと効果は薄いわけです。多くのワクチンを病原性は持たせなくて免疫源性だけを用いたいとなると確実性、安全性が高いのは病原体を殺す(不活化)する方法になりま
す。ポリオワクチンの歴史は、人間がワクチンに何を求めるかを考えながら戦った歴史としてみることができます。アメリカで最初に作られたのは、ジョーナス・ソーク博士が作ったワクチンでポリオウイルスをホルムアルデヒドで殺した不活化ポリオワクチン(Inactivated polio vaccine;IPV)でした。1954年に初めて接種されました。トーマス・フランシスという人が野外接種試験を行い、約40万人の子どもが接種を受けました。これを受けて6つの会社がIPVを製造、販売する許可を得ました。その中の一つにカッター研究所というのがありました。1995年4月の間に、カッター研究所で作られたワクチンを約40万人の子どもが接種されました。それから2ヶ月の間にワクチンを受けた人から94人、ワクチンの接種を受けた人の家族から126人、地域で感染した人が140人麻痺を来たしました。それが、カッター社のワクチンによることが証明されました。ウイルスは細胞の中で増殖をします。ウイルスをホルムアイデヒドで殺すのが不十分であったために、一部の子どもに病原性のあるウイルスが注射されてしまうということが起こってしまったのです。これが有名なカッター事件なのです。この事件以来、ワクチン製造や安全試験が厳しくなり同様の事件の発生はありません。ワクチンが有効であったのはアメリカ全土で1952年に2万人のポリオ患者発生があったのが、1961年には1600人に減っています。他方、アルバート・セービンによって経口ポリオ生ワクチン(oral polio live vaccine;OPV)が作られて1961年にはじめて接種されました。アメリカでは1963年までに2種類のワクチンが使えるようになりました。そこで、どちらが予防には優れているかが問題になりました。しかし、OPVの方が効果が高い、OPV接種された子どもは100%予防できたのに対してIPV接種された子どもは70%しか予防できなかった、IPV接種者は自分は発病しなくても媒介者にはなりえる、子どもがワクチンウイルスを排泄するので家庭内の他の大人の家族にも免疫を広げることができるということから、OPVが選択されて。1979年以来ポリオの麻痺患者の発生はゼロになりました。OPVとIPVの働きの違いは次のように考えられています。IPVでは抗体をつくるのですが、抗体は血液の中にあります。ウイルスは腸管で感染するのですが、血液を介して脊髄に感染するので血液中の抗体がそれを阻止しますが、腸管でウイルスが増えるのを100%予防することができません。つまり、自分は発病しないが媒介者にはなりえます。OPVを投与された場合には、腸管と血液内と双方に免疫ができます。ウイルスに対して腸管での増殖をさせないので、媒介者にもならないのです。日本では昭和36年に北海道、九州でポリオの流行があり、外国からの生ワクチンの導入を図り、終焉を迎えることができたという事実があります。以来、日本はOPVを続行しています。IPVは目下のところ、製造、販売を許可されたものはありません。
東京都内で麻疹流行のニュース
相関と因果関係は別物
4月26日の日本経済新聞の夕刊の十字路という欄に野村マネージメントスクール主席研究員の野村幸彦さんが、脳研究者の池谷裕二氏の著書を引用して データの間に見かけ上相関があることと、それらが原因と結果の間にあることとは全く違うと戒めていると 書いておられます。これは、肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン接種とワクチン接種後の死亡例の関係でもそうであったのだと思いました。野村さんは、実験科学は絶対に因果関係を証明できない、相関関係が強いときに、脳が勝手に因果関係があると解釈してしまう とも書いておられます。
肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを接種したあとで、死亡した人が増えた、だからこの二つのワクチンは死因である、または死因である疑いが濃厚であると考えられた。これは、あくまでも仮の結論、推論でした。
ヒトは必ず死亡します。亡くなった人に共通の因子を一つあげて、死亡という結果と結びつけて並べてみます。誰もが死因になりそうでないと考える事象をあげて、並べたのでは相関関係があるとは思わないでしょう。ましてや、因果関係も考えないでしょう。ところが、ワクチンというのは、ヒトにとっては異物であり、身に危険を及ぼしそうなものでもあります。副反応があることはよく知られています。ましてや、国が接種を中止したとなると、因果関係があると強く思う人が多くなるのも当然でしょう。
ところが、肺炎球菌やヒブワクチンを導入するに際して、予め私どもは学習をしました。ワクチンの有効性だけでなく、安全性、副反応について学びました。私の場合には、本や論文を読んだり、講演を聴いたりしました。幸いにして日本は、ワクチンについては後進国であるので、世界で既に検討されたものを利用できます。ワクチンを接種したあと、必ず、一定時間を接種した場に留まっていただくのは、直後に起こるかもしれないアレルギー反応に備えるためです。全身に一挙におこるアレルギー反応をアナフィラキシーと言います。それは、過去にも起こった例は報告されています。7人の報告された例には、それは1例もありませんでした。外国の例でも、乳児急死症候群(SIDS)に属すると考えられる死亡例は報告されて検討されています。外国の検討では、SIDSはワクチン接種では増えないことが証明されていました。ワクチン接種後のSIDSについても検討されていました。既に外国で検討されているから日本では不要だとは思いません。今後、このワクチンによる福音を日本の子どもに享受させたいと思えば、一度、立ち止まって日本は日本のデータで検討してみることは必要だろうと思いました。
公費助成が国会を通過したのを契機にして1月から公費助成を始めた市町村が多く、被接種者が増えた。当然、接種後に死亡した人の数も増える、死亡した人にワクチン以外の死因が証明されればワクチンとの因果関係は否定されますが、肯定も否定も十分できたとは言えない、それならば、ワクチン接種者での頻度と非接種者での頻度を比較することを行ったりして、検討することになりましょう。そして、特にワクチンが危険とするに至らなかったので接種が再開された、つまり因果関係は証明できなかったというのが結論になったのだと思います。
病気のときに薬を呑んだ、病気が治った だから呑んだ薬は有効だというのはしばしば間違いであることを知っています。それが薬の乱用を招き、副作用に悩まされることにもなるのです。相関と因果関係は別物、これは今後も肝に銘じて科学的に対応したいと思います。
ワクチンの種類にはどのようなものがありますか
夜の急患
4歳の女児、保育園に4月から通うようになって、病気ばかりしている、この数日、発熱・咳がありかかりつけ医で診てもらっているが、今日も40度になった、夜間診療に行ったが肺炎かもしれないと言われたとのこと、深夜帯に拝見した。打診で右の背部に濁音(打診をすると音が鈍い)呼吸音も弱い、熱は肺炎だけでも上るが菌血症も考えて、血液検査を行った、白血球18600/μℓ、好中球は幹状核球37%、分葉状核球48%、CRPは12.6mg/dl、血液培養も行った、肺炎球菌の肺炎及び菌血症を考えて、アモキシシリン60mg/kg/day投与した。
ママは、肺炎球菌ワクチンをやっておけばこのようなことはないのかと言われた。100%予防は無理だが、髄膜炎への進展や菌血症のリスクは低いので好くなったら肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンを接種されることをお薦めした。ワクチンの意義はこのように、発熱に際して、シリアスな病気を考えなくても済むということになりますし、
医療費の削減にもなるのではないでしょうか。