ワクチン広場 -42ページ目

東京都内で麻疹流行のニュース

東京都内で麻疹流行のニュースが報じられています。現在は、全国に定点となる医療機関があり、毎週、月曜日にその前の週の月曜日から日曜日までの感染症の患者さんの、年齢、男女別の数を保健所に報告し、集計されています。そこでの都内での報告数が増えたということでのニュースなのです。現在、麻疹のワクチンは、風疹ワクチンと混合になり、MRワクチンとして、1期を1歳から2歳未満の1年間に最初の接種、2期として5歳から6歳の3月31日までの間に、接種を行うことになっています。2期を接種しないままに来た子どもで、中学1年生の間に3期として接種、高校3年生の1年間に4期として接種する制度になっています。多くの大学が、入学に際して麻疹に対する免疫を持っているか、それとも2回ワクチンを接種しているかの証明を求めているので、進学する人は接種をしているのですが、問題は専修学校に進んだ人、社会にそのまま出た人です。免疫を持っていない若者が社会に増えてくると、その年齢層で麻疹が流行することになります。麻疹は、潜伏期間が平均11日くらい、飛まつ感染で感染します。感染した場合に免疫がなければ発病する確率は極めて高いのが特徴です。当初は、発熱、咳、流涙、眼球結膜(しろまなこ)の充血、などの症状が目立ちます、やがてコプリック斑といわれますが、頬の内側の粘膜に斑点がでます。その後、うなじからほっぺにかけて発疹が出始めてやがて全身に広がります。気管支炎の状態には全ての患者さんがなり、こおときには非常に重症感があります。10日くらいの発熱期間で合併症がなければ治ります。0歳の幼い子どもが罹ると、死亡率も高くなります。成人でも、多くの人が死ぬかと思ったと言われます。昔から、麻疹は命定めとも言われたほどです。麻疹ウイルスに有効な薬物はありません。最も有効な方法は、ワクチンで予防することです。最近は年少者の接種率は改善されているので年長者の感染が多くなっているのが特徴です。中一、高三の方はなるべく早く接種をされることをお薦めしますし、ワクチン歴の記憶、記録がない大人も接種をお薦めします。0歳児が免疫がないので、罹患すると弱者としての被害を受けます。GWの最中はなにかと人の往来が多くなりますが、自分を護る、他人を護るということからも、ワクチン接種をお薦めします。

相関と因果関係は別物

4月26日の日本経済新聞の夕刊の十字路という欄に野村マネージメントスクール主席研究員の野村幸彦さんが、脳研究者の池谷裕二氏の著書を引用して データの間に見かけ上相関があることと、それらが原因と結果の間にあることとは全く違うと戒めていると 書いておられます。これは、肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン接種とワクチン接種後の死亡例の関係でもそうであったのだと思いました。野村さんは、実験科学は絶対に因果関係を証明できない、相関関係が強いときに、脳が勝手に因果関係があると解釈してしまう とも書いておられます。


肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを接種したあとで、死亡した人が増えた、だからこの二つのワクチンは死因である、または死因である疑いが濃厚であると考えられた。これは、あくまでも仮の結論、推論でした。

ヒトは必ず死亡します。亡くなった人に共通の因子を一つあげて、死亡という結果と結びつけて並べてみます。誰もが死因になりそうでないと考える事象をあげて、並べたのでは相関関係があるとは思わないでしょう。ましてや、因果関係も考えないでしょう。ところが、ワクチンというのは、ヒトにとっては異物であり、身に危険を及ぼしそうなものでもあります。副反応があることはよく知られています。ましてや、国が接種を中止したとなると、因果関係があると強く思う人が多くなるのも当然でしょう。


ところが、肺炎球菌やヒブワクチンを導入するに際して、予め私どもは学習をしました。ワクチンの有効性だけでなく、安全性、副反応について学びました。私の場合には、本や論文を読んだり、講演を聴いたりしました。幸いにして日本は、ワクチンについては後進国であるので、世界で既に検討されたものを利用できます。ワクチンを接種したあと、必ず、一定時間を接種した場に留まっていただくのは、直後に起こるかもしれないアレルギー反応に備えるためです。全身に一挙におこるアレルギー反応をアナフィラキシーと言います。それは、過去にも起こった例は報告されています。7人の報告された例には、それは1例もありませんでした。外国の例でも、乳児急死症候群(SIDS)に属すると考えられる死亡例は報告されて検討されています。外国の検討では、SIDSはワクチン接種では増えないことが証明されていました。ワクチン接種後のSIDSについても検討されていました。既に外国で検討されているから日本では不要だとは思いません。今後、このワクチンによる福音を日本の子どもに享受させたいと思えば、一度、立ち止まって日本は日本のデータで検討してみることは必要だろうと思いました。


公費助成が国会を通過したのを契機にして1月から公費助成を始めた市町村が多く、被接種者が増えた。当然、接種後に死亡した人の数も増える、死亡した人にワクチン以外の死因が証明されればワクチンとの因果関係は否定されますが、肯定も否定も十分できたとは言えない、それならば、ワクチン接種者での頻度と非接種者での頻度を比較することを行ったりして、検討することになりましょう。そして、特にワクチンが危険とするに至らなかったので接種が再開された、つまり因果関係は証明できなかったというのが結論になったのだと思います。


病気のときに薬を呑んだ、病気が治った だから呑んだ薬は有効だというのはしばしば間違いであることを知っています。それが薬の乱用を招き、副作用に悩まされることにもなるのです。相関と因果関係は別物、これは今後も肝に銘じて科学的に対応したいと思います。

ワクチンの種類にはどのようなものがありますか

ワクチンの種類には、病原体を弱毒化した生ワクチンと病原体を殺した(不活化した)不活化ワクチンと毒素を無毒化して免疫源性を保ったトキソイドに別けられるというのが一応の正解です。生ワクチンとしては、日本で接種可能なのは、生ワクチンとしては、ポリオ、BCG、麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘、黄熱病があります。不活化ワクチンとしては、百日咳、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、狂犬病、肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチンがあります。トキソイドとしては、破傷風、ジフテリアがあります。生ワクチンの方は、確かに病原体を弱毒化したと言えますが、不活化ワクチンの場合には、病原体を殺した(不活性化した)だけとは、言えなくなりました。百日咳は、昔は菌を殺して、菌体全部を注射していましたが、副作用が強いことがわかったので、日本では世界に先駆けて、菌を分解してこの成分に抗体をつくらせれば発病を阻止できるという成分を集めたワクチンに切り替えています。コンポーネントワクチンといっています。日本脳炎ワクチンでは、やはりウイルスを分解して副反応に関わる成分を外してワクチンを使っています。B型肝炎ワクチンは、ウイルスそのものを使わないで、ウイルスの表面にあるS抗原を遺伝子操作で作らせたものを使っています。レコンビナントワクチンと呼ばれます。肺炎球菌ワクチンは型が93あり、その菌のポリサッカロイドに対する抗体を作らせれば菌の増殖を阻止できるのですが、子どもはそれをそのままワクチンにしたものには抗体を作りません。成人用のワクチンはそのようになっていますが、小児用は蛋白質をくっつけて抗体を作らせやすく工夫をしています。ヒブワクチンも同様です。ヒトパピローマウイルスワクチンもウイルスを材料にしたのではなく、、ウイルスのこの成分人対する抗体を作れば免疫が出来るという成分だけをウイルス用の粒子の表面に配したものです。生きた微生物ではないだけでなく、かなり人工的になっているものです。自然に感染した場合にも出来ない抗体、或いはもっと高度に抗体を作らせる工夫が凝らされていて、病原体を殺したワクチンとは単純にいえなくなっています。このようなことからも、自然に罹った方が免疫が好く出来るとはいえないのです。

夜の急患

4歳の女児、保育園に4月から通うようになって、病気ばかりしている、この数日、発熱・咳がありかかりつけ医で診てもらっているが、今日も40度になった、夜間診療に行ったが肺炎かもしれないと言われたとのこと、深夜帯に拝見した。打診で右の背部に濁音(打診をすると音が鈍い)呼吸音も弱い、熱は肺炎だけでも上るが菌血症も考えて、血液検査を行った、白血球18600/μℓ、好中球は幹状核球37%、分葉状核球48%、CRPは12.6mg/dl、血液培養も行った、肺炎球菌の肺炎及び菌血症を考えて、アモキシシリン60mg/kg/day投与した。

ママは、肺炎球菌ワクチンをやっておけばこのようなことはないのかと言われた。100%予防は無理だが、髄膜炎への進展や菌血症のリスクは低いので好くなったら肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンを接種されることをお薦めした。ワクチンの意義はこのように、発熱に際して、シリアスな病気を考えなくても済むということになりますし、

医療費の削減にもなるのではないでしょうか。

家族が水痘に罹患したときに、予防接種以外に予防法がある?

Q;家族が水痘に罹患したときに、予防接種以外に他の家族の発病を阻止する方法があるということを聞きましたが本当ですか?また、それは他のうつる病気でも利用可能の方法でしょうか?

A;水痘は人から人に感染して、比較的発病率の高い病気です。潜伏期間はおおよそ2週間です。水痘の発病は発疹がでて気がつかれます。潜伏期間の終り、つまり発病直前に感染源になりえます。接触が濃厚な間柄である家族間ではしばしば、家族への感染が起こります。よく、接触して2日以内であればワクチンを接種すると発病阻止、軽症化できるといわれて、保育園・幼稚園などでの感染予防に薦められています。ところが、必ずしも発病していることが発病直後に診断されるとはかぎりません。そのような場合にはワクチンを用いても必ずしも予防できるとは限りません。そのような場合に、実は薬剤を用いる方法があります。一昨年、藤田保健衛生大学小児科教授を定年退官された、浅野喜造先生が編み出された方法です。水痘ウイルスは、アシクロビル、パラシクロビルという薬物で増殖を抑えることができます。だから、水痘の治療に用いられています。浅野先生はアシクロビルを用いる方法を選ばれました。通常、治療にはアシクロビルを体重1kgあたり1日80mg使いますが、その半量を2週間の潜伏期間中で丁度中間に用います。4日間、投与するのですがうまくいくと、発病はしないで免疫はできるという方法なのです。免疫を調べる方法は、水痘ワクチンを先駆けて作成された故大阪大学微生物研究所教授の高橋理明先生が作られた皮内テスト用の抗原を使います。免疫の有無はこの抗原を皮内注射して翌日に注射部位の発赤の大きさを測定して判断できます。陰性の場合に、この方法を行います。うまくいけば発病をしないのですが、うまくいったのかそれとも感染しなかったのかの区別はつきません。そこで、4週くらい経過をしたあとで、もう一度皮内テストを行ってみれば、判断ができます。この方法は、今では世界でも認められていて、内科の教科書で有名な、セシルの内科学教科書にも記載されています。健康保険は予防には適応されないので、保険診療としておこなうことはできません。子どもが罹患した場合の、両親や同居の大人、同胞には使える方法です。水痘の免疫を測定する方法に皮内テストがあること、血液抗体が陽性でも皮内テストが陰性だと発病する可能性があることなども、よく知っている医師が意外と少ないのは事実です。ウイルス感染症で薬物が有効な病気は、この水痘に対する薬物、インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬、エイズに対する薬剤の組み合わせくらいしかないので、沢山あるウイルス性疾患に共通な方法ではありません。水痘でも予防は予めワクチンを用いるのが正攻法だと考えます。