新型コロナウイルス感染症ってどんな感染症なのでしょうか? | ワクチン広場

新型コロナウイルス感染症ってどんな感染症なのでしょうか?

 私は、小児科学と内科学の教科書は可及的に新しい本を購入するようにしてきました。日本語の教科書は改版スピードが遅くて内容が新しいとは言えません。特に英語が堪能なわけではなく、むしろ苦手だと思うのですが、ネルソンの小児科学、ルドルフの小児科学を購入してきました。ルドルフは暫く改版されなくてもう終わりかなと思っていたら先年、久しぶりに改版されました。内科学はハリソンとセシルの教科書を購入しています。もう、高齢者なのでいつまで臨床医でいるかわからないので迷いましたが、2019年からの改版の本を結局は臨床を行う以上は学ぶ責任があると考えて購入しました。また、プロトキンというワクチンでは大権威と目される人のワクチンという本を2版から購入してきて、今年、最新版を購入しました。このほかにアメリカ小児科学会が出版してる本がありまして、それも購入しています。私が一番多数拝見する患者さんは、いわゆる普通感冒、英語で言うCommon Cold,日本語で言う風邪の患者さんです。先年、出版社の依頼を受けて風邪について書くときに、改めて私が医師になった1960年時代のネルソンの8版から依頼を受けたときの20版までを読み直しましたが、並べてみると明らかに記載が各版で異なっていました。まず教科書を読み、教科書に引用されている文献をいくつか読むのを習慣にしています。普通感冒として原因ウイルスの一つにコロナウイルスがあり、その総説を読みました。ウイルスは核酸が中心にあり、その周りを構造物が囲んでいますが、細胞ではなくそれ自体では、増殖をすることもできませんしウイルスそのものでは生物とは言えないモノなのです。生きた細胞にくっつくと、細胞側が取り込みます。すると、ウイルスの核酸が持っている情報を活かして自分と同じものを複製するのです。そのときに入った細胞の代謝系を利用するのです。1個のウイルスが1個の細胞に感染した時にどれくらいの数のウイルスが出来上がるのか?生体内ではわかりませんが試験管の中に培養した細胞では、新型コロナでは1個が100万個になると報告されています。感染を受けた細胞はどうなるのか、細胞自身が生きていくのを邪魔されてひたすらウイルスを複製するので細胞としては死を迎えると考えられます。ほかのウイルスでは細胞も死なないでウイルスを複製し続けるのもあるようです。また、ウイルスが感染した細胞は通常の自分の細胞とは違った変化を起こしていると、免疫系の仕組みで排除されることが起こります。この場合も細胞は死にます。ウイルスの複製は常にうまくいくかとなると、途中でうまくいかなくなりウイルス複製が完遂できない場合もあり、ウイルスが完成しなくてとどまってしまう場合もあるようです。感染した細胞のRNA通りにウイルスが出来なくてアミノ酸レベルで他のアミノ酸に入れ替わったり、合成されるたんぱく質が少し変わることもあります。そのような小さな変化を起こしたウイルスはヒトが研究室でとらえるときに変化を起こしていると変異と呼ぼれますが、それはウイルスが何かの意思をもって起こすわけではありません。結果的にウイルス複製が容易であるウイルスが出るとそれは拡散しやすくなり、結果としてそのウイルスに感受性の高い人が多いとそのウイルスはより流行するということになります。ウイルス複製の仕組みがわかると、その仕組みのある段階でその代謝経路を止めれば、あるいは他のものを作らせてウイルス複製の流れを変えることができればウイルスは複製されないことになりますので、それが抗ウイルス製剤と呼ばれます。細胞内に容易に取り込まれること、そしてウイルス複製の仕組みにのみ働き、作用としても物としても、ヒトが生きるのに不利にならないことが製剤としての条件になります。ウイルス複製の仕組みの解明が抗ウイルス製剤の作成には必要ですし、ヒトに不利な条件にならない物質であることが重要な要因であることもわかりいただけるでしょうか・

私が読んだのは2019年の初秋でした。総説には300以上の論文が引用されていました。その引用された論文一覧をみると日本人が書いた論文は極めて少なく、日本には世界に通じるコロナウイルス研究者はいないか少ないのだと思いました。東大医科学研究所の獣医さん方の論文が数編引用されていただけだったのです。また、ウイルス複製のプロセスでunknownと書かれた場所が非常に多くて、コロナウイルスにつていは不明な部分が多いのだと思いました。文末に、動物のウイルスが人に感染を起こすと人にはそのウイルスに対して感受性が高いのでパンデミックが起こる。もし今後起こるとしたらコロナウイルスによるだろうと書かれていました。コロナウイルスの研究者は次のパンデミックはコロナウイルスだと予測していたのです。この論文を読んで2019年の10月に中国の武漢で変な肺炎の患者が出て40人ほど入院したというニュースをネットで見つけました。「あっ、コロナの流行だ!」とその時に思いました。瞬く間に数は増えました。すぐに、コロナだろうというニュースも出てきました。2019年の12月末に入院した、コロナの患者さんの気道分泌物を調べたらコロナウイルスと同じ核酸の配列をしていた。サーズの核酸配列と86%高が同じで他が違う、既知の約20000のウイルスと比較したが同一のものがない、肺がんで手術して摘出した臓器から正常の人の肺の細胞を利用してウイルスを培養増殖したらウイルスがとれて、それは分泌物から直接採取したウイルスの核酸配列と同じであったという報告が論文としてNewengland Journal of medichine(NEJM)に掲載されたのは2020年の2月です。中国の武漢の研究所からで、共同研究者が役30人名前を連ねていました。ウイルスが細胞の中に入るには細胞のどこかにくっつく必要があります。それをレセプター(受容体)と言いますが、ヒトの細胞にあるアンギオテンシン変換酵素ー2というたんぱく質を受容体として、コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク(Sタンパク)がくっ付くことで感染が成立していることもわかりました。ヒトでは受容体を持った細胞は気道だけでなく全身のいろいろな臓器にありますので、ウイルスが運ばれれば全身何処でも細胞に感染がおこることがわかりました。私共の体には自分を守るために、感染がおこると異物して認めてまず自然免疫の仕組みが茶道を開始します。樹状細胞などが情報を発信します。細胞が出す活性物質という意味でサイトカインというのですが、サイトカインは多数あることがわかっていますが、必ず一つのサイトカインは複数の機能を持っています。例えばIL-1(インターロイキンワン)というサイトカインは獲得免疫に関与する細胞の動員に働くとともに、脳の体温中枢に働き体温を一定に保つその温度を上げる働きをします。体温が高い方が感染したウイルス細菌などは増殖しがたいので体温を上げるのは防御反応の一つと考えられていますので、防御反応を起こしたと理解できます。いろいろなサイトカインは自分を守るために反応すると考えられるのですが、それが必要以上に反応してしまうことがあります。コロナの感染でも肺炎が起こったり、重症になるのはサイトカインの必要以上の反応 サイトカインストーム(サイトカインの嵐)が起こったと言われていますが、感染、発熱や気道の症状、さらに重症化の症状が出るのは、ウイルスのどの成分が悪さをしているというのではなく、ヒトの側が反応した結果症状が出ているのです。過剰の反応に対して副腎皮質ホルモンデキサメサゾンや抗炎症剤と呼ばれる薬がつかわれるのです。穏やかに完了するウイルス複製とサイトカインの反応との2段階で発病していて、なぜサイトカインストームが高齢者や高度肥満、糖尿病などの罹患者に起こりやすいのかは、十分解明されていません。風邪と同じような部分はあるものの風邪とは違うことが起こりますので、新型コロナは一筋縄ではいかない病気であるのです。