予防接種と体温(1)
ワクチンを接種して発熱をすることはあります。肺炎球菌ワクチンは他のワクチンよりも、その頻度が少し高いようです。接種の際に、発熱の可能性があること、「発熱があっても元気が良くて他に症状がなければ様子を見ても大丈夫ですよ、若し心配でしたら御連絡をください」と話しています。多くのママはそれでも、連絡をして来られることはなく、様子を見て下さっているようです。
でも、中に、受診をされたり、急患として時間外診療を受けたりされる方もあるようです。日頃から、受診される患者さんの訴えとしては、発熱は一番多いものです。患者さんも、医師も発熱に対しての対応は、必ずしも好くないように思います。
体温計がない時代、そう、ヒポクラテスの時代でも発熱という言葉はあったようです。そして発熱は体を護る反応だともヒポクラテスは語っていたそうです。声は現代も同じです。多くの医師が発熱は体を護る反応だと言い、パパやママも発熱は体を護る反応だとご存知です。
他方、発熱は心配な症状の一つでもあるのです。体温といっても、体の何処の部位で測定するかが、問題です。
本当の体温は深部体温、英語でcore temperaturです。それは37,5~37.8℃あります。
それを測定するのは、肛門から長い温度計を挿入して測定します。測定される側も刷る側もこの方法は一般的に行うには問題があります。次に安定して測定できるのは、口腔内です。外国映画を御覧になると体温計を口にくわえて測定していますね。実際には呼吸をしていて空気が動いているので肛門内よりも若干低く測定されます。しかし、安定して測定できる方法です。
日本は脇の下で測定します。この方法は体温を正確に測定しようとするには余り好い方法ではありません。脇の下の汗をよく拭いて、しっかり脇を固めても、温度が体温に近くあがってきて安定するには10~40分かかります。そうでないと皮膚の温度を測定していることになります。皮膚の温度は環境の条件でコロコロ変わります。
世界の国々の中で、体温測定を腋の下で測定することを金科玉条にしているのは日本くらいだそうです。体温を測定するのに昔は水銀体温計で10分はかけていましたが、現代はそんなに悠長なことをやるには多忙です。
そこで、電子体温計なるものを発明し、挟んでから温度が上るスピードで予測式なる方法を日本ではあみだしました。所詮、皮膚温を測定しているので、正しく測定できません。
学術論文で、子どもの低体温が多いなどとするものがありますが、全く科学的根拠に欠けるものですし、ママやパパが『うちの子の平熱は低い』などと仰るのも全く根拠にはなりません。
女性で、基礎体温を測定すると排卵があったかどうか、妊娠した可能性があるか、卵巣の機能の検査としても役に立ちます。それは脇の下の温度でなく、口腔温です。
どんなに上等の体温計で測定しても脇の下では真の体温の測定はできません。
耳で測定する体温計があります。赤外線センサーがついていて、温度はかなり正確に短時間に測定できます。何故、耳で測定するかと言いますと、鼓膜を流れる血液の温度は深部体温と同じなのです。
そこで、センサーの先端が鼓膜に向いていると鼓膜の温度、即ち真の体温が測定できるのです。
ところが、耳の穴から鼓膜までの外耳道はS字状にカーブしていて、必ずしも先端が鼓膜に向っているかどうかがわからないことです。多くの場合外耳道の温度をそくていしているか、場合によっては耳垢の温度を測定しています。本当に鼓膜の温度が測定されると37.5℃を超える可能性があるので、わざと低く表示されるようにしているメーカーもあり、こうなると何を測定しているのかわからないことになります。
世界の発熱の定義は38℃以上を言います。それより、0.5℃低い範囲は正常か異常のグレイゾーンです。それを微熱と言います。日本では、予防接種では、37.5℃以下であれば、接種を可能だとしています。特に測定部位や体温計の種類は指定していませんが、接種前の体温測定にもこのような事情があり、“ワクチン接種をして発熱の可能性があります”と言う場合には、“38℃以上になることがある”という意味です。
20年前、所沢市で集団予防接種のときに、市役所の方が被接種者を並ばせておいて、耳で測定されていたので、37.5℃以上の人を拾い出す方法としてはそれでも好いが、37.5℃以下の人を拾い出すには不適当だと話してやめてもらったことがあります。