子宮頚がん予防ワクチンについて
ヒトパピローマウイルスワクチンとして世界には2種類あります。目下のところグラクソスミスクライン社(略してGSK)が発売しているCervarixというワクチンだけが国内では使用可能ですが、今後、万有製薬が改称されたMSD社から発売されるGarasilの2種類になります。前者はヒトパピローマウイルスの16、18型の2価ワクチンですが、後者は16,18の他6、11型が入った4価ワクチンです。ヒトパピローマウイルスには沢山の型があります。有名なのは、むしろ、子宮頚がんよりも、所謂、いぼの原因のウイルスとしてであったと思います。いぼは出来ても長年の間に免疫ができて自然に治るものです。1980年代から、子宮頚がんとパピローマウイルスとの関係が深いことが提唱され、研究が進み、パピローマウイルスの持続感染が発ガンに関係することが明らかにされて、更にワクチンの開発に繋がったのです。パピローマウイルスは現在100以上の型があるとされています。
40以上の型が外陰部の病気と関係していると考えられています。ヒトとヒトの接触により感染するとされていますので、性交渉が感染の機会の大きな部分を占めることは理解できましょう。性器や外陰部のがんにしても、女性だけでなく、男性の陰茎、女性でも膣、陰唇、男女ともに肛門のがんにもこのウイルスは関係しています。型には番号が振られています。このがんに関係した型として、16,18、31、33,35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、82が知られています。この中で、16,18だけで子宮気がんの70%近くに関係しているとして
この2つの型の感染から発ガンまでの経路を絶つことができれば、現時点では子宮頚がんの70%近くを減ずることができるとするものです。このウイルスに感染すると直ぐにがんになるわけではなく、一部の人で子宮頚部の細胞の中で持続感染が続き、1~5年を経て細胞の中に変化がおき、その一部の人で更に変化が進み20年位を経てがんになるのです。抗体を自然感染以上に作らせてあげれば、早い時期のウイルスの持続感染を阻止できると考えられてワクチンが作られたのです。誰が持続感染になるのか、いつからなるのかは簡単にはわかりません。教科書的には危険因子として、若いこと、セックスパートナーの数が多いこと、コンドームを使用しないセックス、ワクチンを受けていないこと、外国では男性が割礼を受けていないこと が挙げられています。また、発ガンへと進行への危険因子として、経口避妊用のホルモン剤の長期使用、多産、クラミジア・ヘルペスなどの性交感染、喫煙、栄養失調、遺伝因子、細胞免疫の低下、がん検診を受けないこと が挙げられています。
危険因子を減らすことの一つがワクチンであること、ワクチンも予防は100%出来るわけではないこと、何の病気であっても早期発見、早期治療が大事であることを含めて教育をしないワクチン接種で、むしろ自分は安全だと思い込んだり、他の危険因子を顧みないことがあれば、折角のワクチンが逆効果にもなりかねないことを十分教育することが大事であり、それなしのワクチンは危険でさえもあるということをどのように社会に伝えるかが大事だと考えます。