山種美術館で「生誕130年記念 奥村土牛」展を観た! | とんとん・にっき

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「奥村土牛」展、チラシ

 

山種美術館で「生誕130年記念 奥村土牛」展を観てきました。作品集を購入して、家へ帰って見てみたら、同じものがありました。なんと、10年前にも「奥村土牛」展を観て作品集を購入していました。

 

10年前と今回購入した2冊の「奥村土牛作品集」、凡例として以下のようにあります。

本書は、奥村土牛の生誕120年を記念し、2010年4月3日(土)から5月23日(日)に山種美術館で開催される、開館記念特別展Ⅳ「生誕120年 奥村土牛」に合わせて刊行された山種美術館蔵の奥村土牛作品集である。

山種美術館で「生誕120年 奥村土牛」展を観た!

 

「奥村土牛」展、案内板

 

もう一つ特筆しておきたいのは、「文藝春秋2019年3月号」で、朝吹真理子が奥村土牛の「吉野」を取り上げていることです。「ふれる―日本の美を訪ねて」の「第十一回寂しい山」です。その冒頭部分を、以下に載せておきます。

 

奥村土牛の「吉野」は、一日中ながめていたい。おおきな景色で、山桜がいっせいに開花して、白雲になっている。山桜は赤らんでみえる新葉とともに白い花が咲く。とおくからみると枝先が薄くピンクがかったようにもみえる。春の光に照らされた花々は白く光って、春霞といっしょになってあたり一面けぶっている。画面手前のみどりは鶯色をしているけれども、遠くの山々は青みがかっている。胡粉を何度も薄く塗り重ねたヴェールのむこうに、木々がうっすら隠れている。誰にも知られずに、咲いているころの吉野山かもしれない。しずかで、春が漲っているのに、どこか寂しい。

「ふれる―日本の美を訪ねて 第十一回◎寂しい山」 
(文藝春秋2019年3月号)

 

「吉野」tonton撮影(この作品だけ撮影可能です)

 

今回の「奥村土牛」展の構成は、以下の通りです。

 

第1章 土牛芸術の礎

第2章 土牛のまなざし

第3章 百寿を超えて

 

今回の「奥村土牛」展の見どころは、以下の通りです。

 

1.日本屈指の奥村土牛コレクションから名品を約60点厳選し、大公開!
土牛作品135点を所蔵し、質・量ともに最高レベルの土牛コレクションで知られる山種美術館。本展は、《醍醐》《鳴門》をはじめ土牛の優品を一堂にご覧いただける当館ならではの特別な機会です。
2.当館が所蔵する再興日本美術院展への出品作、全35点を一挙展示!
生涯にわたり再興院展で活躍した土牛。当館が所蔵する院展関連作品全35点[秋の院展(32点)、春の院展(2点)、同人展(1点)]を一挙展示します。
3.生誕130年の記念すべき年に、奥村土牛101年の生涯を振り返ります!!
土牛は長寿の画家としても知られ、100歳を超えても制作を続けました。本展では、初期から晩年にいたる作品や、自らの白寿記念にしたためた書などを通じ、尽きることのなかった土牛の制作意欲をご紹介いたします。

 

トップを飾るのは、もちろん「醍醐」です。

「醍醐」を描くききっかけは、古径が死んで6年後の命日の、奈良でおこなわれた七回忌の法要に、土牛は東京から駆けつけ、その帰りに、京都により、例年になく満開だという醍醐寺を訪れたことによります。その入口の三宝院の土塀前のしだれ桜の見事さに土牛は息をのんだが、しかし、このモチーフを描きあげるまでに、土牛は実に10年近い歳月をかけたという。

 

「醍醐」1972(昭和47)年
 

「京都・総本山醍醐寺『土牛の桜』」(撮影:中島佳彦

 

第1章 土牛芸術の礎

 

「雨趣」1928(昭和3)年

 

「軍鶏」1950(昭和25)年

 

「聖牛」1953(昭和28)年

 

第2章 土牛のまなざし

 

「舞妓」1954(昭和29)年

 

「城」1955(昭和30)年

 

「浄心」1957(昭和32)年

 

「鳴門」1959(昭和34)年

 

「茶室」1963(昭和38)年

 

第3章 百寿を超えて

 

「醍醐」1972(昭和47)年

 

「吉野」1977(昭和52)年

 

「僧」1978(昭和53)年

 

「山なみ」1987(昭和62)年
 
奥村土牛:略歴
1889(明治22)年2月18日、奥村金次郎とたまの長男として、東京に生まれる。本名義三。1905年、16歳で梶田半古塾に入門。半古や、塾頭の小林古径から指導を受ける。1920(大正9)年から2年間ほど古径の画室に住み込む、絵画の制作姿勢や精神性に影響を受ける。古径の指導により画集や研究会で触れた日本・中国の古画や、西洋絵画からも多くを学び、特にセザンヌの作品には深く傾倒した。1926年から古径の紹介で速水御舟の研究会に参加。翌年、再興第14回院展に38歳で初入選。1932(昭和7)年、日本美術院同人となる。1944年以降、東京美術学校、帝国美術学校(現・武蔵野美術大学)、女子美術大学、多摩美術大学などで指導にあたる。1947年、帝国芸術院会員。1962年、文化勲章受章。1978年、日本美術院理事長。院展を活躍の中心の場として、淡い色調における大らかで暖かみのある作風を確立し、世を去る直前まで意欲的に作品を発表し続けた。1990(平成2)年9月25日、101歳で死去。
 

「生誕130年記念 奥村土牛」

1966(昭和41)年、東京・日本橋兜町に開館した山種美術館は、2009(平成21)年10月、渋谷区広尾に移転して新美術館をオープンしました。2019年、広尾開館10周年を記念する特別展第一弾として、当館と縁が深く、同年に生誕130年を迎える日本画家・奥村土牛(おくむらとぎゅう)(1889-1990)に焦点をあてた展覧会を開催します。当館の創立者・山﨑種二は、「絵は人柄である」という信念のもと、画家と直接関わり合うなかで作品を蒐集しました。特に土牛とは親しく、まだ無名だった研鑽時期の支援から約半世紀にわたり交流を続けた結果、現在、当館は135点に及ぶ屈指の土牛コレクションで知られています。
土牛は、画家志望であった父親のもとで10代から絵画に親しみ、梶田半古(かじたはんこ)(1870-1917)の画塾で生涯の師と仰ぐ 小林古径(こばやしこけい)(1883-1957)に出会います。38歳で院展初入選と遅咲きでありながら、展覧会に出品を重ねて40代半ばから名声を高め、101歳におよぶ生涯において、晩年まで制作に取り組みました。土牛は、半古や古径から学んだ写生や画品を重視する姿勢を生涯貫き、「絵を通して伝わってくるのは作者の人間性」という自らの言葉を体現するような作品を数多く生み出しました。
本展では、瀬戸内海の鳴門の渦潮を描いた《鳴門》や、古径を偲んで制作した《浄心》《醍醐》などの代表作をはじめ、活躍の場であった院展の出品作を中心に約60点を展示し、土牛の画業をたどります。
土牛という雅号は、中国・唐の詩句「土牛石田を耕す」に由来します。その名を糧に、地道に画業へ専心した土牛。80歳を過ぎてなお「死ぬまで初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい」と語り、精進を重ね、100歳を超えても絵筆をとり続けました。山種美術館が広尾開館10周年を迎え、当館と縁の深い奥村土牛が生誕130年となるこの機会に、清らかで温かみ溢れる土牛芸術をご堪能ください。

 

「山種美術館」ホームページ

http://www.yamatane-museum.jp/

 

山種美術館所蔵

「奥村土牛 作品集」

編集:山種美術館学芸部

(山崎妙子/高橋美奈子/櫛淵豊子)

発行:山種美術館

 

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