2008年07月31日 22時00分11秒

是枝裕和監督の「歩いても 歩いても」を観た!

テーマ:映画もいいかも

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新宿武蔵野館で、是枝裕和監督の「歩いても 歩いても」を観てきました。阿部寛、YOU、樹木希林、原田芳雄など、芸達者な俳優が数多く出ているので、普段はあまりこのような映画は観ないのですが、なぜか観てみたくなり、行ってきました。チラシに、「家族のことを想う時、何度でも見たくなる映画です」とあります。最近読んだ本(内田樹著:「こんな日本でよかったね 構造主義的日本論」)、この本については近いうちにこのブログで書きますが、「家族とは何か?」を論じた興味深い個所があったので、ここに載せておきます。


それは「親族が集まったとき、『ある人』がいないことに欠落感を覚える人と、その人がいないことを特に気にとめない人がいる。『その人がいない』ことを『欠落』と感じる人間、それがその人の『家族』である。家族とは誰かの不在を悲しみのうちに回想する人々を結びつける制度である」とあります。「なるほど」と、妙に納得した個所です。親族が集まるときとは、ほとんど「冠婚葬祭」の時だけだと言われ始めて、もうだいぶ経ちます。「冠婚葬祭」も近年では、極々身内だけで済ませて人を呼ばなくなりました。


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続けて、「家族というのは、起源的には『礼』を学ぶための集団であり、『そこにいない人』の『不在』を痛切に感知する訓練が『礼』の基礎となる。それは死者の弔いというかたちをとることもあるし、やがて家族のうちの誰かから産まれてくる子どもへの期待というかたちをとることもある」として、「『もういない人』の不在と『まだいない人』の不在とともに欠如として感知する人々が『家族』を構成する。それが解体しつつある」といいます。是枝裕和監督の「歩いても 歩いても」は、まさに「家族が解体しつつある」現状を、透徹した目で描いています。


夏の終わり、横山良多(阿部寛)は、再婚したばかりの妻・ゆかり(夏川結衣)と連れ子のあつしを連れて実家を訪れます。開業医だった父(原田芳雄)とはそりがあわず、失業中とあってひさびさの帰郷も気が重い良多。快活で明るい姉(YOU)の一家も訪れ、横山家に久々に笑い声が響きわたります。得意料理をこしらえる母(樹木希林)、家長としての威厳にこだわる父。今日は15年前に亡くなった兄の命日でした。


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「歩いても 歩いても」は、成人して家を離れた子供たちと老いた両親の夏の一日をたどる家庭劇(ホームドラマ)です。食卓を囲む会話のなかで、家族のいたわりと反目をユーモラスに温かく、ときに切なく描く。家族というものの愛しさ、疎ましさ、心の奥底に横たわる残酷さ・・・。これといった特徴があるわけではない、どこにでもある「平凡な家族」の姿が、逆に観る者に共感を呼び起こします。


YOUと樹木希林の丁々発止とやり合う絶妙な会話は適役です。こうしてみると、日本の家は女の人と台所が主役ですね。自分の仕事もままならない居心地の悪さを全身で表現している阿部寛、再婚相手の嫁もまた居心地が悪そうな夏川結衣、2人は阿部寛の仕事のことで口裏を合わせて誤魔化したりしています。過去には町医者として近所では信頼を得ていたであろう、しかし今は急病で電話がかかってきても、十分な対応ができないで右往左往する、いかにも頑固そうな原田芳雄。そして子役がいい。連れ子が、大人のすべてを知っていて、しかも黙っている、この物語の主役と言ってもいいくらい、表情が素晴らしく見事な演技でした。


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おじいさん、おばあさんの孫に対する接し方、よく見かけるごく当たり前な関係です。墓参りの風景は、わざわざ取り上げるほど特別なものではなく、よく見かける普通の風景です。そしてエンディングがまたいい。父も亡くなり、母も亡くなり、墓参りに家族で帰郷します。連れ子の息子も大きくなり、そして女の子がいます。幸せそうな家族です。事実、阿部寛の家族は上手く行ってるのでしょう。


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チラシの裏に、川上弘美のこの映画の感想が載っていました。

「いい映画はたくさんある。でも、この映画のように、その中にいる人たちのことを、今もずっと考えつづけている映画を、わたしは見たことがなかった。次男は、その後どこに就職したんだろう。長女のところの女の子はボーイフレンドができたかな。長女のつれあいの営業成績はどうなんだろう。あの家のお風呂のあのタイルは、どんなふうに修理したのだろうか。あの坂道は、今もあるのだろうか。あの夏の空気を、今もあの人たちは覚えているのだろうか。見終わって、やたらと涙がでたのだけれど、それは一つの『物語』に感じいったからではなかった。ただ生きていること、起承転結のみわけもつかず、ただわたしたちがひたすら生き続けていくこと、その不思議に打たれて、涙がは流れてきたのだった」。

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