村松友視の「淳之介流・やわらかい約束」を読んだ! | とんとん・にっき
2007年08月03日 00時11分13秒

村松友視の「淳之介流・やわらかい約束」を読んだ!

テーマ:本でも読んでみっか

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「今、なぜ吉行淳之介なのか?」。本の帯には以下のようにあります。性を通して人間の本質を追究し、文壇の第一線をた作家・吉行淳之介。ダンディズムの奥底にあるしたたかな色気と知られざる魅力。その作品と人物像の行間を炙り出す渾身の書き下ろし!


村松友視の「淳之介流・やわらかい約束」を読みました。村松友視と言えば、あの「時代屋の女房」で87年7月に、ほとんどデビュー作で第87回直木賞を受賞した人。夏目雅子主演の映画も何度観たことか!1940年生まれ、父は作家の村松梢風。慶応大学を卒業後、中央公論社に入社、文芸雑誌「海」の編集に携わりました。編集者としての仕事を通じて知り合ったのが吉行淳之介、中央公論社を辞めて作家になってからも、吉行淳之介が平成6年7月26日に亡くなるまで交流がありました。そうしたつき合いがあったこともあり、吉行淳之介の死後、「書き下ろし」をしないかと声をかけられていたそうですが、2006年「吉行淳之介13回忌」パーティの席上で、吉行淳之介に関する本を書いてみようと、突然思い立ったそうです。


村松友視の著作は、「時代屋の女房」「時代屋の女房2」、「アブサン物語」を、すべてブックオフで購入したものですが、読みました。実は「時代屋の女房」は、映画を観たあと、本屋さんに置いていなくて、やっとブックオフで探し当てて読んだ本です。「アブサン物語」は、猫嫌いの僕でも心が温まる本でした。他には「黄昏のダンディズム」、これは吉行淳之介を頭に置いて書かれたのではないかと思わせる著作でした。「俵屋の不思議」(1999年4月10日初版)は京都の老舗旅館の話、そのうちブログに書こうと思っていた本です。「じり貧の思想」(平成6年6月15日初版)、これはブックオフで買っておいただけの、そのうち読もうと思っていた本です。

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吉行淳之介の本で最後に買った本は、よく覚えています。2001年7月10日第1刷発行「やわらかい話 吉行淳之介対談集 丸谷才一編」講談社文芸文庫、です。新聞にこの本が出たことを知り勇んで本屋へ行ったのですが、どこの本屋にも置いていなくて、新宿の小田急デパートの上の旭屋書店でやっと見つけたという代物です。「対談集」なのですが、文庫本にもかかわらず定価が1400円もするもので、驚いた記憶があります。丸谷才一が編集したということと、巻末に「年譜」や「著書目録」が載っていることで、価値があるのでしょう。

逆に、最初に買った吉行淳之介の本は、というと、大江健三郎=江藤淳責任編集の「われらの文学 14 吉行淳之介」講談社、です。定価が430円で、時代を感じさせます。この本は吉行淳之介の作品、短編13作品が載っています。このころはまだ吉行淳之介といえども長編は、「暗室」や「夕暮れまで」を待たなければなりません。この「われらの文学」という全集本で僕は戦後文学を多く学びました。吉行と同世代のいわゆる「第三の新人」、庄野潤三、安岡章太郎、遠藤周作、三浦朱門、小島信夫、等々を知りました。

同時に吉行淳之介は「座談の名手」としてもよく知られています。手元にあるだけでも僕が最後に買った「やわらかい話」、そして「不作法対談」、「対談浮世草子」、あるいは座談ではありませんが「軽薄のすすめ」、「不作法のすすめ」等々、一見猥談風の語り口でありながら、汲めども尽きぬ味わいのある「対談集」が多くあります。金子光晴との対談、吉行:若い頃のマスターベーションは、まあ大々的ですね。天井まで飛んでバリッと音がした記憶があります。淋病やってからは飛ばなくなりましたけど。金子:おれのはなくなっちまうんだ。吉行:え?金子:どこへいったかわからなくなっちゃう。吉行:何がですか、それ?金子:ドーンと飛び出したやつが、みつからねえの。と、まあ、こんな調子です。

吉行淳之介といえばこれ、有名な話、もう古典になっていますが、横須賀線の1等車に乗って、「お嬢様、ぼくとオ×××していただけませんか」と言ってみたらどうだろう、という話。僕も機会があったら試してみたいとずっと思い続けれいるのですが、残念ながら横須賀線の1等車に乗る機会がいまだにありません。それとは別に、「私の文学放浪」は、野坂昭如の「文壇」と同様、文学修業時代が赤裸々に書いてありました。「吉行淳之介娼婦小説集成」については、このブログで書いたことがあります。初期の短編10作品が載っているものです。


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最近「宮城まり子が選ぶ吉行淳之介短編集」という本が出たようですが、とても買う気になれません。「淳之介さんのこと」という本を読んだら、ほとんど吉行淳之介の書いたものを引き写しだったので、興ざめした記憶があります。大塚英子という人が書いた「暗室のなかで-吉行淳之介と私が隠れた深い穴-」(1995年6月20日)という本があります。作家・吉行淳之介の陰の恋人として28年間を生きてきた、名作「暗室」のモデルが、重い沈黙を破り、知られざる二人の日々を克明に描いた衝撃の愛の記録!と、本の宣伝文句には書いてあります。まあ、言ってみれば暴露本であり、本人はもういないので、なんとでも書こうと思えば書けるわけで、やや都合のいい解釈が目立ちます。

村松友視は、吉行淳之介の対極に白州次郎をおいて説明をしています。白州次郎的プリンシプルは、まことに建設的なセンスにもとずいており、国家の品格や男の品格の復権に役立つ、分かり易い価値の世界だ。それに対して、吉行淳之介の価値はといえば、その正反対に位置する、としています。ビジネスマンの仕事の役に立つなどとはそりの合わぬ、非建設的で、分かりにくいセンスに満ちています。「やわらかい約束」とは、村松友視が文芸誌「海」の編集者だったときに、野坂昭如と吉行淳之介の対談を企画したが、体調が思わしくなかった吉行が、「じゃあその対談のはなし、やらわかい約束にしておこうか」と、村松に言ったことから来ています。「やわらかい約束」は「固い約束」ではなく、「守らなくてもよい」が「守られる可能性もある」・・・そんな「吉行淳之介流」の約束というわけです。



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「吉行淳之介娼婦小説集成」を読んだ!
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