「猿を聞く人捨て子に秋の風いかに」という芭蕉の破調の一句があります。

 

伝統的な唐詩の天地においては、冬枯れの時候、猿のなく声が悲痛を極めているところに哀切を覚えるという想がよく使用されます。

 

芭蕉の云いたいことは、「猿のなく声などよりも、折節秋の風の吹く中、捨て子の泣き声はどう聞く?こちらのほうがもっと悲しいぞ。」と、伝統的詩人に問いかけているのです。

 

こういうのが芭蕉の云う「新しみ」ということです。

 

今人のような「へんてこ」な「新味」ではありませぬ。