人工呼吸器にはマスク型の人工呼吸器のほかにもうひとつ挿管して行う人工呼吸方法があります。
テレビドラマで手術をしているときにのどに管を入れられているのを見たことがあると思いますがそれと同じになります。
絵にかいてあるようにマッキントッシュと言われる道具を使用して舌をかき分けて気管を露出させて管を気管に挿入します。
マスク型の人工呼吸器から比較すると体に負担が多いことはご理解いただけると思います。
管を入れるときに歯を折ってしまったり、気管や食道に傷をつけてしまうこともしばしばあります。また、人差し指くらいの太さの管がのどに押し込まれるので大変です。
のどに自分の人差し指を押し込んだら嘔吐反射で苦しくなるのと一緒ですから、とても意識を保ったままこんな状態を続けられません。
この方法をする場合は嘔吐反射やのどの痛みを抑えるため鎮静と必要に応じ疼痛コントロールのための痛み止めを使用しながら人工呼吸管理をすることになります。
この人工呼吸方法は意識がなくても呼吸が止まっていても機械の力で強制的に呼吸管理ができる最終手段です。
その代わり以下の欠点があります。
①意識をなくしてしまうため、重大な合併症が起きても症状がないためわからない。
たとえば脳梗塞を寝ている間に起こしてもまひなどに気づくことがほとんどできず、治療が遅れてしまうことがあります。
また、高齢者の場合長期間の挿管管理によって認知症が進行していざ人工呼吸器を離脱したところ人格が変わってしまっていることもあります。
②のどに管を入れていることで声帯を傷つけたり、感染を起こしたりすることがある。
声帯が傷をつけられて声が出にくくなったり、管の周りにばい菌が入って炎症を起こしたり肺炎になったりすることがあります。また管が気管や口腔を圧迫することで潰瘍をつくることもあります。
③2週間以上この呼吸管理になると気管切開をしなくてはなりません。
②のような合併症があるため2週間以上のどに管を入れることは推奨されていません。
すると図のように気管切開が必要になります。
のどに穴をあけることは一見乱暴のようですが、この方法は口腔内を清潔に保ったり、感染予防やチューブの交換を行ったりするには口から挿管するよりも優れていますので長期間の人工呼吸管理には有用です。
意識が戻れば呼吸状態が悪くても人工呼吸器につながりながら食事をしたり、携帯型の人工呼吸器を用いてベッドから離れることも容易になります。